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8-7 クライン家の家族

「お茶会でお茶やお菓子を楽しんで何が悪いの?王妃様だって、そのために私たちを招待してくれたんじゃない」


アリーシアはとげとげしくそう言うが、コーネリスはゆっくりと首を振る。背中に流れる深い茶色のストレート・ヘアが、艶やかに揺れた。


仄かな桃色を纏う髪色は、“ロードクロサイト・ブラウン”。控えめだが、気品を感じさせる精霊色だ。


「だからこそ、主催者への感謝と敬意を忘れてはならないの。王妃様は私たちをもてなすために、きっと様々なお心遣いをしてくださったはずよ。だから…」


「ああもう、分かったわよ!時間があったら読んでおくわ。今は忙しいから、もう出てってくれる?」


アリーシアが声を荒らげると、コーネリスは小さく肩を竦め。


「…分かったわ。お邪魔してごめんなさい」


コーネリスが静かに出て行くと、アリーシアはふんと鼻を鳴らし。


(…何よ、公爵令嬢だか何だか知らないけど、偉そうに。歳だって変わらないし、精霊色は私の方が上じゃない)


それからアリーシアは気を取り直して、再び鏡を覗き込んだ。


(さぁ、新しいメイクの続き!チークはどの色がいいかしら…?)


中庭でレアンドルと会ったあの日以来、アリーシアは相変わらず講義には出ないまま、自室で日々メイクの研究に勤しんでいる。


(またいつ殿下とお会いしてもいいように、もっともっと美しくならなくちゃ!)


プログラム期間中ドレスやアクセサリーは禁止されているが、メイクはその限りではない。アリーシアが家に手紙を送ると、それを読んだロイズ伯爵はすぐに、たくさんの化粧品を侍従に届けさせた。


普段なら週に1回は王都に繰り出して、流行のメイクやファッションをチェックするアリーシアである。本当はコスメも自分で店を回って選びたかったが、プログラム期間中の外出は原則禁止されているので仕方がない。


最も『受講者の心得』には、「メイクは時と場を弁えた自然なもので」と、注意書きが記されているのだが。


(最近はマーメイドドレスが流行ってるのね。…わぁ、この『リアナ・テラッセ』の新作、超可愛い!)


ロイズ家からの荷物の中には、コスメの他にアリーシアお気に入りの服飾店のファッション・プレートが数枚入っていた。きっと、母エレノアが気を利かせて入れてくれたのだろう。


(純白で、まるでウェディング・ドレスね。このドレスを着た私を見たら――殿下は、何て言って褒めてくださるかしら?)


まだチークは塗っていないが、鏡に映るアリーシアの顔は、うっすらと薄紅を帯びるのであった。



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