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1-3 ロイズ伯爵の葛藤

愛娘が、その可憐な顔を怒りで真っ赤にしているのを見て、ロイズ伯爵は慌てて言う。


「アリー、それは私たちも分かっているよ。この世界に、お前ほど特別な娘はいない。だがクライン辺境伯は、貴族の中でも隋一の権力者だぞ?結婚相手としても、この上ない家柄だ」


「でも、王家には敵わないでしょう?私はレアンドル殿下の婚約者候補として、リリー・プログラムへの参加が決まっているのよ!」


“リリー・プログラム”とは、コルベンヌ国が王侯貴族の令嬢を対象に実施している、特別な教育プログラムだ。


受講するには、王宮から課される様々な課題を提出し、厳正な審査を突破しなければならず、その難易度は国内最高レベル。


そうして選び抜かれた将来有望な女生徒たちを、コルベンヌの発展を担う優秀な女性へと育て上げることが、リリー・プログラムの目的だ。


だが、実はその裏にもう一つ、重要な目的が隠されているとの噂があった。


それが、次期王位継承者――王子の婚約者選定、である。


王宮側が公言しているわけではないが、近年の王位継承権者たちの結婚相手をみると、そのほとんどがリリー・プログラムの修了者なのだ。


講義を担当する教師陣は勿論、王宮付きの中でも最高レベルの教育係たち。彼らが厳しい目で令嬢たちを事細かに見定め、国王に王子の正妃候補を進言しているらしい、というが、本当の所は謎に包まれたままだ。


兎にも角にもアリーシアは、その超難関な審査を突破し、見事リリー・プログラムの受講者に選ばれたのであった。


「お父様は、私がレアンドル殿下の妃になれなくてもいいの?」


「いやいや、そんなわけがないだろう!だが、まだアリーが婚約者に選ばれると決まったわけではないし…」


「まあ、あなた、アリーが信じられないのですか?こんなに美しくて聡明なアリーを!」


アリーシアとエレノア双方から責められて、ロイズ伯爵は益々頭を抱えてしまう。


伯爵としても勿論、アリーシアならレアンドル王子の婚約者となることも夢ではないと思っている。


レアンドルはコルベンヌ国の第一王子であり、立太子も近いと噂の、次期国王筆頭候補だ。


そんな王子の婚約者の座を狙う名家は当然多い。万が一、アリーシアではなく別な令嬢が選ばれてしまったら――その時には、クライン辺境伯家ほど条件のいい嫁ぎ先は他に無いだろう。辺境伯家からは経済的な援助を受けている手前、無下に断るわけにもいかない。


それにしても全く、何故このタイミングなのか。せめてリリー・プログラムの受講期間が終わるまで、返答を先延ばしにできないものか…


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