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7-2 6年前の真実



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帰路を辿る馬車に揺られながら、小窓の外には暮れゆく風景が通り過ぎて行く。


そんな景色を眺めながら一息吐くセレスティンに、ティーは。


「…やっぱり、セレン様はお優しい方ですね」


その言葉に、セレスティンは弾かれた様に顔を上げると。


「…何だ、藪から棒に」


そう言ってすぐ、不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。


その仕草が、セレスティンが照れている時に見せる癖だと、ティーはもう気付いている。


くすりと笑いを零してから、ティーは。


「領主様の多くが、領民に税金を納めさせることに躍起になります。セレン様のように、領民の生活を考慮することなく…」


ロイズ伯爵家がまさにそうだった。ティーがあちらで税務に関わっていた時、伯爵は納税が滞っている家があれば、侍従をけしかけて厳しく取り立てさせていた。


領民側にどんな事情があろうと、延滞金も容赦なく加算する。時には家財道具を取り上げてまで、税金を支払わせることもあったようだ。


「別に特別なことはしていないさ。そもそも税金は、領地の管理のために収集しているものだ。この地と、そこに住まう領民を守るために。その税金が領民を苦しめるなら本末転倒だろう」


「領民を、守るため…」


当たり前のようにセレスティンは言うが、ティーの口からは驚きのこもった呟きが漏れる。


ロイズ伯爵家にとって税金とは、自らの権力を誇示するためのものだった。


元から贅沢で派手好きな伯爵だったが、エレノアと結婚してからはそれに拍車がかかり、領民への課税は年々増していった。


特にここ数年、伯爵はアリーシアをリリー・プログラムに合格させるべく、教育費にも惜しみなく金をつぎ込むようになる。アリーシアを国一番の令嬢にするため、一流のドレスや装飾品を揃え、付き人を増やし、必要なものは何でも買い与えた。


その結果、領地内の増税だけでは資金が回らなくなり、クライン辺境伯家を始め、あちこちの有力貴族に援助を求めるようになったのだ。


負債は膨らむばかりだが、ロイズ伯爵としては、アリーシアがレアンドル王子の婚約者に選ばれれば王家の力で帳消しにできる、今はアリーシアへの投資が最優先だと、贅沢を改める気は更々無いようだった。


目の前のティーが目を丸くしているのを見て、セレスティンは可笑しそうに小さく笑うと。


「『守る』なんて言うと大袈裟か。それに、俺たちだけじゃない。領民だって、農業や商業でこの地を支えてくれている。俺たちクライン家にとっては、ここに住む領民全員が、この地を守る大きな家族みたいなものだよ」


「大きな、家族…」


クライン家の人々の大らかさの根源が、今、分かった気がした。


クライン家にとって、使用人も領民も、皆それぞれに大事な役目を担う、家族なのだ。


その、家族の中に。


私も、入ることが出来たなら――


そんな思いが、心の奥を霞めた。


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