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5-6 アリーシアの誤算

既にほとんどの少女が、料理を前にテーブルに着いていた。アリーシアも席に着いて、料理が運ばれてくるのを待っていたのだが。


「…ねぇ、あなた、何してるの?早く料理を取ってこないと」


隣に座る少女にそう言われて、アリーシアはきょとんと瞬きする。


「と、取って来るって?そんなの、侍女がやることでしょ?」


「ここでは、給仕は自分でやるのよ。学問だけでなく、王宮で様々な経験を積むことがリリー・プログラムの目的だもの。だからここには、侍女も執事もいないの」


「それに、そのアクセサリーも明日から外した方がいいわ。プログラム期間中、装飾品を身に着けることは禁止よ」


「何、それ…」


アリーシアは、俄かに青ざめた顔をして。


「そんなこと、全然聞いてないんだけど…!」


言葉を失うアリーシアに、今度は周りの少女たちが、瞬きしながら顔を見合わせた。


「聞いてないも何も…全部、『受講者の心得』に書いてあったわよ?」


と、そこに。


ダイニングルームの扉から、マクレインが颯爽と姿を現した。


「皆さん、食事の支度は出来ましたか?明日からはいよいよ、講義が開始されます。これから3か月間、気を緩めることなく教養を深めてください。それでは、いただきましょう」


マクレインの言葉を合図に、少女たちもフォークを手に取り、楽し気に団欒を始める。


そんな中、ただ一人アリーシアだけは、呆然として現実を受け入れられないまま。


(何なの、これ…リリー・プログラムって、特別な令嬢だけが選ばれるんでしょう!?私は、レアンドル殿下の婚約者候補なのよ…!?)


王宮でたくさんの使用人たちに敬われ、朝から晩まで優雅な暮らし。毎日のように開催される華やかなパーティー。出立前、アリーシアが思い描いていた光景とは、あまりにかけ離れていた。


(…私、これから3か月間も、こんな窮屈で不便な思いをしなきゃならないの…!?)


急に目の前が暗くなり、気が遠くなってきた。


頭を抱えていると、再び、腹の虫がきゅうと鳴く。アリーシアは大きく溜息を吐きながらも、よろよろとした足取りで配膳台に向かうと、四苦八苦しながら料理を取り分けるのであった。



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