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3-4 クライン辺境伯の戸惑い

ティーがそう言うと、3人は揃って、目をぱちくりさせてから。


一瞬遅れて、アンヌが可笑しそうに笑い始めた。


「まあまあ、そんなこと!今日はもう時間も遅いし、仕事は明日からで大丈夫よ!いやだわ、ルーったらまた先走ったこと言ったんでしょう!」


「い、いえ、私は何も言っていませんよ、…多分」


アンヌが相変わらず笑いながらルーをつつき、ルーは口髭を擦りながら若干目を白黒させている。


「ティーって言ったな。やる気があって結構じゃないか。さ、まずはこいつを早く食べてやってくれ。せっかくの料理も冷めたらまずくなっちまう」


「は、はい、それでは…遠慮なく、いただきます」


ジョゼフも微笑みながら、ティーの背を押して席に着かせる。ティーはまだ戸惑いながらも、スプーンを手に取った。


香り立つリゾットを一口、口に含むと。


「…美味しい」


目を見開き、思わずそう呟いていた。


濃厚なチーズの旨みと野菜や肉の出汁が溶け合い、噛むほどに染み出してくる。あまりの美味しさにぱくぱくと食べ進め――あっという間に皿が半分ほど空いたところで、ティーはハッと我に返った。


「ご、ごめんなさい、私…夢中で食べ続けてしまって」


「謝ることはないさ。そうやって美味そうに食べてくれる顔を見るのが、俺の生きがいってもんよ」


嬉しそうに笑うジョゼフに、ティーは大きく頷いてみせ。


「本当に、美味しいです…!こんなに美味しいリゾット、初めて食べました!」


「はっは、何か、照れるなぁ!ほら、こっちのトマト煮も食べてみてくれよ」


「はい!…わ、これも美味しい!」


「だろう?」


そんな様子を見ていたアンヌは、ルーと顔を見合わせると。


「やっぱり、ティーちゃんは笑った顔の方が可愛いわ」


「…え?」


トマト煮の椀を手にしたまま、ティーが振り返る。


するとアンヌは、いたずらっぽくウィンクをしてみせた。


「笑顔は、自分自身も見ている人も幸せにできるのよ。せっかく可愛いお顔をしてるんだもの、ずっとそういう顔してた方がいいわ。ねぇ?」


アンヌの傍らで、ルーとジョゼフも微笑みながら頷く。


そんな中、ティーはぽかんとした顔をして――3人の顔を、まじまじと見回した。


「…あら、どうかしたの?」


「何か質問ごとでも?」


アンヌとルーが不思議そうな顔をするのを見て、ティーは慌てて首を横に振った。


「い、いいえ、何でも!…その」


ティーは手にしたフォークと椀を置き、徐に立ち上がる。


「あ、あの…明日から、よろしくお願いいたします」


そう言って頭を下げるティーに、3人は温かな笑みを浮かべるのだった。


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