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16-13 灰色少女の真実

「ロイズ伯爵。この男に見覚えは?」


「い、いえ!全く存じ上げません」


伯爵はぷるぷると首を振って否定する。するとレアンドルが、横から。


「それはおかしいな。うちの家臣が、貴方とその男が会っているところを見ているのですが。何でも、人目に付かない裏路地で、その男とこそこそ何かをやり取りしていたとか…」


「そんなはずはありません!きっと人違いでしょう。私は、こんな男は知りません!」


が、ここで、拘束されている男が。


「旦那ぁ、もう白状しちまいましょうぜ。逃げられやしないですよ」


「お、お前…!一体何を言い出すんだ!」


目に見えて慌てふためくロイズ伯爵に、レアンドルはゆっくりと歩み寄ると。


「あの男は、精霊石の採掘現場を荒らしていた、盗掘犯です。そしてロイズ伯爵、この男を雇って盗掘をさせたのは、貴方ですね?」


「ま、まさか、そんな!知らない、私は何も知らない!!」


目の前に迫るレアンドルの顔には、これまでにない怒りが滲んでいる。ロイズ伯爵は、青くなりながら必死に否定した。


「白を切っても無駄だ。昨日、貴方はこの男から精霊石を受け取った。だがそれは、貴方の犯罪の証拠を押さえるために、我々が仕掛けた罠だったんです」


「…!!」


精霊石を盗掘しようとしていた男を取り押さえたレアンドル達は、取り調べにより男がロイズ伯爵に雇われたこと、そしてこれまでにも数度盗掘に入ったことを聞き出した。


そこで男にはガラスで作った偽物の石を渡し、ロイズ伯爵が指定してきた時間と場所に男を向かわせた。


王宮の衛兵たちが監視しているとも知らず、ロイズ伯爵はまんまと偽物の石を受け取り、男に報酬を手渡した。それがつい、昨晩のことだ。


「今、王宮の調査団がロイズ家に家宅捜索に入っています。そろそろ、我々が作った偽の精霊石が発見されている頃でしょう。これまでの盗掘品を売りさばいた裏帳簿も、見つかっているかもしれませんね」


レアンドルの言葉に、大粒の脂汗が浮き出るロイズ伯爵。そんな伯爵に、セレスティンは。


「貴方は気付いていなかったでしょうが、ロイズ家はずっと、王宮の調査対象になっていました。最初は、リリー・プログラムにおけるアリーシア嬢の身辺調査だったが――調査の過程で俺は、貴方方ロイズ家に、違和感を覚えた」


アリーシアの調査を通して見えてきたのは、ロイズ家の異様なまでの浪費振りだった。領地の規模にはとても釣り合わないほどの、豪勢な食事、服飾品、そしてアリーシアのための多額の教育費。いくら税金や他の家からの借入金をかき集めても、到底補える額ではない。


そしてセレスティンは調査結果の報告と合わせて、その違和感をレアンドルに伝えたのであった。


「セレスティンの報告に、僕はロイズ家がさらに大きな犯罪に関わっているのではないかと疑った。そこで今度は王宮の調査団が、本格的にロイズ家を監視することにしたのです」


ロイズ家がクライン家で事件を起こしたのは、そんな渦中のことだ。そしてセレスティンは、この機を利用しようと考えた。


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