脱出作戦
俺リーン・ルノエスは教会の地下に囚われていたベディといろんな話をし、真犯人が神父ではなく修道女のキートであることを知った。
俺は真犯人を知り驚いていた。
「修道女の方が犯人だったんだ…」
「そう、あいつは元々ヴァンパイアロードの手下だった女よ!」
「そうなんだ…でも、よくあの人がヴァンパイアロードの手下だってわかったね」
俺はあの修道女を見たとき特に違和感を感じなかった。
特別オーラがあるわけでもなく、魔族特有の何かがあるとも思えなかった。
それに、魔力が多いような気配もなかった。
「それはね、あいつがヴァンパイアロードが村にきた時、あの女は捉えた私たちを見張る役をやってたの…」
「よく覚えてたね…」
「あいつは私の親友が逃げようとしたのを見て、見せしめに首を刎ねて私達に言ったの…」
『あんた達は私達の血となり肉となり金になるの、逃げるのだったら私が食べてあげるから安心してね』
「あいつがそう言った瞬間、私の脳裏にあいつの顔が離れなくなっていたわ」
「そうか‥友達までも…」
俺はべディの壮絶な過去を聞き言葉がまた出なくなっていた。
「そして、この首輪を用意したのもあの女よ。あいつは自分の上司の魔法を上書きすることができなかった、ただのポンコツよ」
「そうか。ならそのポンコツを君は倒したいのかい?」
「もちろんよ、でも私にはその力がない…」
ベディは俺よりも年上とはいえまだ子供だ、当然ヴァンパイアの手下とはいえ倒すことなどできない。
「なら、あいつは俺たちがどうにかするよ…」
「どうにかってあんた戦えるの?」
「どうにかできるかはわからないけど、ヴェルがいればなんとかなるよ!」
「チュウ!」
「そう…それならいいんだけどね…」
「何か引っかかることでもあるのかい?」
ベディはどこか不安そうな顔をしていた。
自分より年下の子供が言っているのだ。
その気持ちがわからないわけではない…
「あんた達が強そうなのはなんとなくわかってるんだけど…」
「任せてよ!こう見えて俺結構強いから!」
「そうじゃないの…」
ベディは何か気掛かりがあるのか、どこか歯切れの悪い返事を続けていた。
「この教会には他にも悪魔が出ると言われてるの…」
「なんだよそれ!お化けか何か?!」
ベディはしっかりしているようだが、お化けなんかを信じるタイプの女の子らしい。
ちゃんと可愛い部分があるじゃないか!
「違うの。この教会には本当に悪魔を出せる部屋があるの!」
「なにそれ…」
ベディの話を聞くと、ここには普通の人では気が付かない隠し部屋が存在するらしく、そこから悪魔が出てきているのを見たことがあるらしい。
その部屋について、確かに俺もこの教会の間取りを見たときに違和感を感じていた。
それは、どう見ても1箇所だけ部屋があるべき部分なのに、影の世界から全く見ることができず、しかも他の部屋から見る限りどう見ても外扉が存在しなかった場所だ。
俺はその全く見えない部分についてシャドーダイブでは見えない部分があるのではないかと疑問に思い、ヴェルに質問をした。
「ヴェル、影の世界から見ることができない場所ってのは存在するのか?」
「はい。存在します」
ヴェルが言うには光が一切ない密閉空間や影が一切存在しない光に包まれているような場所には影の世界からは入ることができないし、影の世界から見ることもできないらしい。
「ただの暗闇では入らないと言うことなのか…」
「あくまで影というのは光があって成り立つと言うことですね」
「そこの微妙な違いが俺には少し難しいな…」
この世界のルールというのは俺には難しいようだ。
「その場所はどちらかと言うと真っ暗な部屋だと思うの」
「だから見ることができなかったんだな…」
「そうだと思う。そこから出てきた悪魔が、もしかしたらリーン達を襲って来る可能性もあるの」
「それは確かに厄介だな….」
キートだけじゃなく、悪魔なんかが本当に参加しようものなら俺は勝てる自信がない。
「その場所教えてくれないかい?!」
俺は脱出の前にその場所をどうにかすることを決意した。




