悔しさと虚しさ
俺リーン ・ルノエスはベディが奴隷になった理由を聞き、衝撃を受けていた。
なんと、ベディの村を壊滅させたのはヴァンパイアロードという魔族であった。
しかし、そのヴァンパイアロードは俺の母クララ・ルノエスの手によって倒されていたのであった。
ベディは俺の母ヘアラがヴァンパイアロードを倒したことを聞き驚いていた。
「本当に倒したの?」
「冒険者ギルドの人も一緒に見ていたみたいだし、間違いないと思う」
「そっか…」
ベディはどこか寂しそうな目をしていた。
「倒してるのはベディにとって、悪い知らせだったのかい?」
「そんなことない…そんなことないんだけどね…」
ベディはどこか悲しいような、虚しいような表情を浮かべていた。
「私決めてたんだ。あのヴァンパイアロードを絶対にこの手で殺すって…」
「…」
「あいつは私の母親だけじゃなく村の人達のことも遊んでいるかのように殺していったの。だから、復讐は絶対私がするって…」
「そうだったんだね…」
俺はベディが喜んでくれると思っていたが、逆に落ち込ませてしまう形となってしまい困惑していた。
「でも、正直嬉しいかな!」
「そうなのか?」
「だって私まだ7歳だし。ヴァンパイアロードを殺すなんて夢のまた夢っていうか…正直無理なことはわかってたし…」
ベディは涙を流していた。
確かにベディが言うように復讐したい気持ちはあったかもしれない。
その中で、実際にそれは難しいといくことをベディ自身が一番わかっていた。
ヴァンパイアロードは簡単に倒せる相手なはずもなく、まだ幼いベディには当然仇を取るために倒すなど夢物語でしかないのだ。
ベディはそれを本当はすごく理解して、そして、自分にはできないと思っていた。
それが突然。
もう倒されていた。
そんな言葉1つで終わらせられたのだ。
きっといろんな感情が行き交う中、彼女の緊張の糸が緩んだのだろう。
当然のことだとなのかもしれない。
ベディはその後ある程度泣いた後、すっかりと別人のような顔をしていた。
「あとは、この首輪をとって自由に生きてやる!」
ベディは強い意志を持った目でそう言っていた。
「俺も君の力になれるように頑張るよ!」
「チュウ!」
その後、俺達はここから脱出する方法とベディに首輪をつけたやつを倒すための作戦を立てるための話し合いを始めた。
「ベディって奴隷の首輪つけてるけど、急に俺とかを裏切って来たりする可能性はあるのか?」
「たぶんないと思う。この首輪は命令を強制的に聞かせる力は備わってないんだ」
「じゃあ、その首輪ってなんのために使われてるんだ?」
「この首輪は契約してる主人に対して攻撃の意思を持った時や、ご主人の魔法詠唱により首から全身に電気のようなものが流れるよつになってるの」
「かなり恐ろしい力だね…」
「さっきも町で気絶するまで詠唱された時は漏らしちゃうかと思ったよ」
「あれはかなり酷い絵面だったからね…」
「ともかく、契約してるあの神父に攻撃さえしなきゃ基本問題はないはずだから!あの神父はムカつくけどリーンに任せるよ!」
「いいのか?!ベディに奴隷の首輪をつけたやつなんだろ?」
俺はあんなに復讐を誓っていた子が俺に譲ると言い出したことにとても違和感を覚えた。
「リーンこの首輪をつけたやつはあの神父じゃないぞ?」
「じゃあ、さっきまで話に出てきていたヴァンパイアロードの手下って誰なんだ?」
「神父の面倒を色々見てる修道女“キート”よ」
俺はずっと勘違いしていた。
ずっと犯人は神父だと思っていたのだが…
どうやら勘違いをしていたようだ。




