壊滅した村
俺リーン・ルノエスはアン・クルトというおばさんのお手伝いの合間に町で白い服の男に教会へ連れて行かれた獣人族の少女を追いかけていた。
なんとか少女と話をするまで持って行った俺はヴェルが聖獣だということを知ってもらいその子から話を聞かせてもらえることになった。
俺はベティに自分の今の状況を教えてあげた。
元々アザゼルという魔物に拐われたこと。
命からがら生き延びたこと。
逃げ延びたもののお金がなくて今はおばさんにお世話になっていること。
「俺は今こんな感じなんだ。もしよかったら俺は君の力になりたいんだ」
「あんたも大変だったのね…」
「私も誘拐されるまでは元々ビーストハイドという村で生まれ、育っていたの…」
ベディはここにくるまでの話をしてくれた。
ベディは獣人族の村ビーストハイドという村で育っていたそうだ。
しかし2年前、突如魔王軍と名乗る魔族が村の人々を殺戮し、女、子供を奴隷とするために攫って行ったそうだ。
当時、村で一番強かったジャン・ウェールというベディのお父さんが食料調達のため、遠くへ出ていたこともあり、村は一瞬で壊滅してしまった。
ベディは目の前で母親を殺され、逃げ回っているところに魔王軍の1人に捕まり、奴隷魔法によって自由を奪われてしまったのだ。
その後、色んな魔族や貴族に売買される中、契約を結び直す直前でなんとか逃げ出すことができたようだ。
奴隷の契約には直接変更というのはないらしく、一度奴隷から解放した後に書類を使い再契約によって新たな主人を決めることができる。
ベディは何度も売買されるなかでそれに気づき、奇跡的に抜け出すことができたようだ。
しかし、その後この町はたどり着いたベディは食べ物を求め教会へ来たところ、村を襲った魔王軍の1人に遭遇してしまい、ここの神父の奴隷として契約を結ばれてしまったらしい。
「でも、なんで奴隷契約をしているのにそんな首輪させられてるんだい?」
奴隷は元々首にタトゥーのようなものを書き込まれるが、ベディはそれとは別に首輪をつけられていた。
「この首輪も奴隷にさせられる魔道具よ。でも、これをつけれるのは一度奴隷になったことのあるものだけらしいわ」
「だから、君だけ付けられているのか…」
「そう、魔王軍の生き残りと言っても私を奴隷にした奴の手下らしいし、私を奴隷にした奴が相当ややこしい術式の書き方をしているらしくて、契約書とかがないと上書きをするのも難しいらしいわ」
ティア先生から一度でも奴隷に落ちると奴隷に簡単にされてしまうと聞いていたが、なかなかややこしいルールがあるようだ。
「それで、魔王軍ってやつの名前とかは分かってないの?」
そんな強力な魔法をかけられるやつがいるなら知っておく必要があるだろう。
俺はそう思いベディにきいた。
「当時指揮をしていたのがヴァンパイアロードって言われてたわ!」
「ヴァンパイアロード!?」
俺はそれを聞いて、驚きを隠さなかった。
「リーンはそいつを知ってるの?」
「まぁ、うん。知ってると言うか…」
「何よ!はっきり言って!」
「俺の母親が倒したらしいんだよ」
「何をよ…」
「そのヴァンパイアロードを…」
「?!?!」
ベディは驚いた顔で静止していた。




