父の過去
俺【リーン・ルノエス】は1歳の誕生日にもらった絵本を読んだ。
それは父クーラスの英雄譚だった。
さすがに大袈裟に描いてる気がしたので、今日はクーラスに聞いてみよう。
絵本を読み終えて、眠ってしまっていた。
今日こそクーラスに聞いてみる。
最近クーラスは仕事と言って国王様に会いに行っている。
畑の仕事が無くなったからと国王様に仕事をもらったらしい。
「パパおかえり〜」
「おぉ!わざわざドアの前で待ってくれてたのか」
「うん!」
「お前はいい子だなぁ〜」
「へへへ」
クーラスはわかりやすい親バカだ。
俺のことを溺愛してくれている。
「パパにききたいことがありゅの〜」
「なんでも聞いてごらん」
「このほんにでてくりゅ〜このくりょいけんって、いまはどこにありゅの〜?」
クーラスは首を傾げている。
「あぁ〜どうしたっけなぁ〜」
「いえにありゅ?」
「...」
「あ!」
「そうだそうだ思い出した」
「どこどこー!」
「あれね」
「うん!」
「錆がひどくて捨ててきた!」
「は?」
まじか、この父親!不法投棄じゃねぇか!そんな法律あるか知らないけど。
話を聞くとあの黒い大きな剣は手に入れた時すでに錆が目立っていたが、気にせず使っていたところ錆がどんどん広がっていき、真っ黒になってしまったらしい。
ドラゴンと戦うとき、既に刃物としての役割を果たすことができなくなっていた。
そのため鈍器として殴って戦ったことが判明した。
「でもパパ、それでどりゃごんたおせたの?」
「あれな...息の根を止めたわけじゃないんだよ」
「へ?」
「あのあとドラゴンが....」
するとクーラスはあの物語には描かれていない部分を教えてくれた。
「ドン!ドン!ドン!」
「痛い!」
「痛い!」
「痛い!」
「ドン!ドン!ドン!」
「痛い!」
「痛い!」
「痛い!」
「もーーーーやめましょーーよーーーー」
ドラゴンはどこぞの若い海兵のように泣き叫んでいた。
なんと情けないドラゴン
「もーギブギブ!!きついって!まじで!」
「お前が村の人を食べたのが悪いんだろうが。バン!」
「痛い!もうやめてください!」
「お前のことは信用ならん!ドン!」
「痛いですってマジで!わかったわかりました!そんなに信用できないなら契約結びましょ!」
「なら、いっか...」
「はぁはぁ...ありがとうございます。」
「それじゃあお前を従魔として契約する」
こうして火のドラゴンを従魔にし、もう人を抑えないようにしたらしい。
「村の宴が終わった後、もう一回ドラゴンの元に戻り人の目につかないよう ひっそりと生活するように言っておいた。」
...
「あ、その時だよ!」
...
「おいドラゴン」
「はい!クーラス様」
「この剣いらないから溶岩にでも突っ込んどいてくれ」
「か、かしこまりました...重!」
「お前でも持てないのか、仕方ないここにブッ刺しておくよ...」
なんとなく嫌なフラグを感じたが、クーラスの謎の黒い剣についてはわかった。
「ありがとう!おとうしゃん!」
「もちろんだよ〜リーン」
クーラスはあの剣を置いてきたから今までバレなかったのか。
そりゃドラゴンでも持ち上がらないような剣を片手で振り回してるんだから、剣の印象も強かったんだろうな...
クーラスが大袈裟に描かれるどころか本物の方がバケモノのようであることがわかったリーンであった。
父クーラスの秘密はまだまだたくさんありそうだが、こんな男と結婚した母ヘアラはなぜ平気そうなのか。
この家族には謎が多い...