ビーストハイド
俺リーン・ルノエスはアンおばさんの手伝いが終わり、あの首輪を付けた獣人族の少女についてヴェルにいろいろ聞くことにした。
ヴェルから獣人族について聞いてみた。
聞いてみるとボルスが話してくれた部分と重なるところもあるが、少しだけ情報を手に入れることができた。
「獣人族は見た目が魔族ということで、よく人間達から勘違いされているんですが、元々は人間の血が多く入ってるんですよ」
「そうなのか?」
「獣人族の祖先は二本足で歩く動物の見た目をした魔族達の繁殖行為の被害者なんです」
「それは…」
「ある村が襲われた時、丁度繁殖期ということもあり、メスだけでは物足りず、村の娘達を片っ端から孕ませたんです」
「獣人族はその事件をきっかけに生まれてしまった被害者ということです」
「つまり、人間と魔族のハーフってことか…」
「はい、そーゆーことになります」
俺はファンタジーでよくある“獣人族はそもそも存在している”という設定をイメージしていたが、現実はもっと酷い内容であることを知り、少し悲しい気持ちになっていた。
「まぁ、そんな半端な存在ということもあり魔王軍には奴隷実験に使われたり、人間にも受け入れてもらえなかったりと大変なようですが、どこかの山奥で“ビーストハイド”と言う村を作ってひっそりと暮らしているとは聞いたことがあります」
「それはどこにあるか知ってるか?!」
「すみません。僕はあまり関わってこなかった種族だったので…」
「そうか、少し残念だけど気にしないでくれ」
「はい。僕も興味がないわけではないですし、獣人族は動物と心を交わせるらしいですし、僕も話とかしてみたいですね!」
「もし会うことができたらな!」
そんなことを話しながら、俺たちは町の中心へまた来ていた。
「さすがに今日は来ないんじゃないですか?」
「いや、物を盗む奴ってのはまた同じ場所にきたりするもんなんだ」
俺は前世のコンビニ経験からそう感じていたが、この世界でも来てくれるのか少し不安ではあった。
1時間が過ぎた。
「来ないですね…」
「来ないな…」
俺達は諦めて他のところを探そうとしたその時、昨日と同じようにフード付きマントを羽織っている子供が現れた。
「あれは!」
「来ましたね…」
今回のターゲットは動物の干物らしく、お店の前に並べてあるトカゲを串に刺して焼いただけの商品をマントの中に隠した。
あれって美味しいのか…?
まぁいい、今回もしっかり止めようと思いその子に近づいた。
「おいきみ…」
しかし、俺が声をかけようとした時、別の男が声をかけていた。
それは全身白い服を身に纏い、顔にはメガネをつけて、若干頬が欠けている男性だった。
「また抜け出していたのかい。これは少しお仕置きです」
そう言うと、その男性は指を2本立てて魔法を唱えていた。
すると、その魔法がマントを羽織っている子供を苦しめるかのようにキーキーなり始めた。
「うぁ、ぐ…ぁ…」
その子供はもがき苦しみながら暴れていた。
暴れる中でフードが外れ顔を見ることができた。
やはり、昨日の獣人族の少女だった。
しかし、今昨日とは違い首の黒い首輪には赤い紋様が浮かんでいた。
キーキーなってるのはあの首輪のようだ…
「もう、この辺りでいいでしょうか…」
そう言うとその男性は魔法を使うのをやめていた。
魔法を唱え終えると先ほどまで光っていた首輪の赤い文字が消えていた。
「早く帰りますよ!本当に手のかかる子で困ったものだ」
その男性は獣人族の少女の足を捕み、引きずりながら立ち去ろうとした。
しかし、俺はその少女のことが気になりこっそりとついていくことにした。
「なぁヴェル、少し聞きたい方があるんだが…」
「なんでしょうご主人様」
「あの白い服を着ている男は魔族とか魔王軍的な存在か?」
「私も詳しいわけではないので絶対とは言い切れませんが、あいつはただの人間だと思います」
「そうか…」
あの男はあの少女の主人的な位置だと感じていたが、首輪を付けたのはもしかしたら別の人かもしれない…
俺がそんなことを考えていると、ある場所についていた。
「ここは…」
町の中心から20分ほど歩き、男が入って行った場所は
アンおばさんが気をつけろと言っていた…
教会であった。




