強く生きる
俺リーン・ルノエスは女神のタマちゃんから魔王が復活することと、それに伴い勇者となる者にアーサーが選ばれていることを聞いた。
俺はアーサーをサポートするべくこれから頑張っていくつもりだ。
その後、帰りのルートを聞いた俺は2人を励まし街に帰ることを決意した。
俺がタマちゃんと話を終えた頃、パールとボルスが水と少量の木ノ実を持って帰ってきてくれた。
「飲める水があったんだね!」
「ヴェルくんがいろいろ見つけてくれたんだ!この水を汲んでる木の実もヴェルくんが作ってくれたの!」
「チュウ!」
「そうだったのかヴェル!よくやってくれたね」
パールはあんなことがあった後だが、気丈に振る舞ってくれている。
「ボルスも木の実を運んでくれてありがとう」
「うん…」
逆にボルスはまだ顔が暗いままだ。
目の前であんなことが起きたのだ。
仕方がない…
だが、これから街に帰る為にはボルスにも頑張ってもらわなくてはならない。
「ボルス!」
「なに…」
「今から俺たちは自分の街へと向かっていく」
「うん…」
「その為には俺とボルスがしっかりとパールを守らないといけないんだ。協力をしてくれ」
「…」
ボルスは少し弱気になっているのか返事がない。
お父さんのことがまだトラウマなのかもしれない。はたまた今の自分に自信がないのかもしれない。
しかし、それでは前には進めない!
「ボルス!君はお父さんのことを尊敬していたかい?」
「うん…」
「きっとボルスのお父さんも君のことを信じていると思うんだ!」
「…」
「ポルスさんは最後にボルスに向かって言ってた。“強く生きろ”って」
「…」
「あれは君に死なないで欲しいって意味だけじゃない。強く生きるっていうのは誰かの為に精一杯頑張ったり、嫌なことがあっても立ち向かう勇気を持つことだと思うんだ!」
「…」
「ボルスはその力を持ってるんだよ!」
「僕には…そんな力…」
「あるよ!ボルスにはその力が!」
「そんなことないよ…僕はお父さん助けれなかったし…何にもできなかったんだ…見ているだけで何もできなかったんだよ!」
ボルスは涙を流しながら、ずっと溜めていたものを吐き出すかのように大きな声をあげていた。
「俺は知ってるよ。
君がどんな時もパールの手を握ってくれていたこと。
そして、いつも少しだけパールの前に立ってくれていたこと」
「そうだったの?」
パールはどうやら気がついていなかったようだ。
「ボルスは弱くなんかない!
君はお父さんのように勇敢に戦える強い心の持ち主だ!」
「う…うわぁぁ」
ボルスは大きな声をあげ泣いていた。
こんな強引に立ち直らせる方法は本当なら愚策だ。
しかし、彼が立ち直るには今しかないんだ。
俺はボルスが心優しい少年だと知っている。
あんなに追い込まれた状況でも、パールを守ろうとしていたこと。
アザゼルの攻撃も身を挺してパールを守ろうとしていたこと。
本当にボルスはお父さんにそっくりだ。
だから、俺にはわかる。
今立ち直れなかったら、ボルスはこの先ずっとお父さんのことをトラウマに抱えてしまう。
彼は俺と同い年くらいのまだ幼い少年だ。
今頑張ればきっと、ポルスさんの願っていたような強い少年に成長すると…
ボルスは思いっきり泣いたあと力強い目に変わっていた。
「もう大丈夫?」
「うん!ありがとうリーン!僕頑張ってみるよ!」
こちらこそだよ。
俺は少しだけ涙が出てしまった。
あんなことがあった直後なのに、こんなにも力強い目をしたボルスを見て感動してしまったのかもな。
こんなやり方で立ち直らせてごめんね。
そして、ありがとう。
「じゃあ、俺たちの街に帰ろう!」
「うん!」
その後、俺たちはタマちゃんから教えてもらった2つのルートから安全だが時間のかかる道を選び、帰ることにした。




