逃げ切った
俺リーン・ルノエスはアザゼルを前にして、何もできなかった。
ボルスの父ポルスがアザゼルにより殺されてしまう中、暴れるアザゼルをアラスが食い止めてくれた。
俺はその隙にボルフとパールを抱えて走り出していた。
俺は必死に逃げていた。
残された力を使い、身体強化で最大限まで自分の力を強化し、ひたすら走った。
そして、太陽が真上に登る頃、俺は森の中に逃げ込めていた。
「も、もう無理…」
「ご主人様…はぁ、はぁ、お疲れ様です」
俺とヴェルは交代しながら風魔法を高い俺の背中をおしていた。
その甲斐もありかなりの距離を移動していた。
とにかく離れなきゃいけない!
その一心で行動した結果かなりの距離を移動していた。
「もう、魔力も…残ってないよ!」
全力で魔力を使いすぎた影響なのか俺は体に力が入らなくなっていた。
「と、とにかく…パールとボルスは怪我とかしてない?」
「うん…」
「うん…」
2人が怪我をしていないのであれば、まだなんとかなりそうだ。
「ごめん、俺ちょっと魔力の使いすぎで動けないみたい…ちょっと水とか探してもらえないかい?」
「もちろんだよ!
今度は私達がリーンを守るから!
ね!
ボルス!」
「お、おぅ…」
「ちょっと、水と食べ物探してくるね!」
パールがボルスをちょっとだけ強引に連れて行き、水を探しに行ってくれるようだ。
「ヴェル…あの2人について行ってやってくれ…」
「…は、はい…」
ヴェルもヘトヘトになりながらついていってくれた。
「本当に、何なんだよ。俺の幸運どうなってんだよ!」
俺は幸運レベルが高いはずなのにこんなことになってしまったことにイライラしていた。
「ってかタマちゃん!しっかり守ってくれよ!」
「そうか!」
俺は急いでいい感じの小石を拾い、手を合わせた。
「タマちゃんタマちゃん…」
俺が願うと女神のタマちゃんがいた。
「タマちゃん!なんであんなこと起きたの?!俺幸運値高いって言ってなかった?!もう少しで死ぬとこだったよ!」
俺は若干心の紐が解けたのか、タマちゃんにさっしまで起きていたことを当たり散らしてしまった。
「ごめんなさい。でも、もしかしたらもう直ぐなの…」
「何がですか?」
「魔王の復活よ!」
「え…」
俺は言葉を失っていた。
「あなたは本当ならあそこで死んでいる可能性だってあったの」
「シャドーダイブをそもそも知らなければ…」
「聖獣のヴェルがアラスたちのいる影の窓を見つけなければ…」
「一つ違うだけであなたは生きていなかったわ」
「そ…そうだったのか…」
「それにこれから魔王の復活が成功したら、もっと沢山の人が犠牲になるわ」
俺は魔王が復活することも、ラッキーで今生きていることも、全てフワフワしてしまい信じきれていなかった。
「でも、運がいいって…」
俺は運がいいことでなんとでもなると思っていたことを少し恥ずかしく思った。
また、それと同時にこれ以上沢山の人が死ぬのがよく無いことはわかった。
「ごめん!なんでもない!」
俺は自分の頬を叩き気合いを入れた。
「俺はこれから何ができますか」
「私からのお願いは一つだけ、それは…」
俺は薄々気づいていた。
この世界に転生して、ただ魔力がでかいだけのチートキャラを女神様がそう簡単に生み出してくれるはずがないと。
そして、優遇されているからといって、こんなに色んなことをサービスを受けされているのはきっとこの日のためだったんだな…
そう俺がこうなることは女神タマちゃんによる定めなのだと。
俺は全てを受け入れるよ。
そう心に決めるとタマちゃんが口を開けた。
「あなたに魔王を倒す勇者をサポートして欲しいの」
「はい!もちろん。俺は勇者としてこれから…」
え?
今なんて言った?




