最悪な一日
俺リーン・ルノエスの目の前では、異次元な戦いが行われている。
エザルア・サンタという俺らを誘拐したやつが、王国騎士のアラスとポルスの2人と戦っているのだ。
俺たちの戦いはかなり優勢のように見えていた。
アラスとポルスの攻撃は確実にエザルアに届いていた。
しかし、切り裂いた腕は皮が剥がれたように中から別の腕が見えてる。
「お前‥やはり魔族だな」
アラスがそういうと、エザルアは静かに笑い出した。
「ふふふ…ふはははは!」
「そんなの最初からわかるだろ!だからお前らは仲間を殺されても気が付かないんだろ!?」
「やはりお前がアトが死ぬように仕向けたのか…」
「違う違う、殺したのは、お・れ!」
「なんだと!?」
「それにこの体のやつ何年も前に殺してるよ」
エザルアはそう言うと自分の体をちぎり取るように皮を剥がしていく。
「俺は変身魔法が苦手でよ。仕方なくこのスーツ着てたんだけど、破けちゃったからな」
エザルアは先ほどまでよりも2倍以上の身長になり、額には2本のツノが生えている。
身体は人間のような見た目だが、その歪なツノは魔力を放っているように思えた。
「俺はアザゼルだ!」
「じゃあ、俺は…俺の親友を殺したやつを可愛がっていたってことかよ!」
アラスはそう言うと、すごい速さでアザゼルに切りかかった!
「この姿に戻ったのだ、もうチャンバラごっこはおしまいだ」
そう言うとアザゼルは手を前に出しシャボン玉のような透明な丸い膜を作り出した。
「アラス!よけろ!」
俺も見てすぐにわかった。
あれは異常なまでの魔力が詰まっている。
アラスはなんとか避けようとしたが、勢いが強過ぎたのもあり避けきれないと判断し左手でそれを受け流そうとした。
アラスの左腕に当たったその透明の膜はアラスの腕の中へと吸収された。
「アラス!すまん!」
ポルスさんが一瞬でアラスのもとへ行き、左腕を肩のあたりから切り落とした。
「うぉ!!!」
「ぐぅ…ポルス…すまねぇ」
アラスの切り落とした腕は体から離れると光を放ち爆発をした!
「よく気が付いたなポルスさん!」
アザゼルは嘲笑うかのようにポルスに語りかけた。
「お前が自らアザゼルと名乗ってくれてよかったよ!お前の部隊の1人からこの魔法について聞いていたからね…」
「そうか、やはり全滅させるべきだったか…」
「まぁいいよ…お前達さえ殺せば問題無さそうだし」
「させねぇよ!」
アスラが片腕を無くしながらもアザゼルに切りつけていた。
「お前は絶対にここで殺す!」
「できるもんならやってみなよ!」
そう言うとアザゼルは先ほどの透明なシャボン玉を何個も作り出した。
「全部避けれるかな?!」
アラスは全てのシャボン玉をよけつつ、どんどんと距離を詰めていった。
「さすが、早いね!」
「でも、君の子供はどうだろうね?」
「なに?!」
アラスは一瞬動揺したもののすぐに気持ちを立て直した。
「あっちはポルスにまかせているから大丈夫だ」
アスラがそう言うと後ろから娘パールの叫び声が聞こえた。
アスラは気にせずアザゼルを切りつけた。
するとアザゼルは白い影となって消えていった。
「なんだと…」
アスラは驚き、急いで振り返った。
「ポルスーー!」
そこには子供達を後ろにしつつ戦っているポルスがいた。
「すぐ行く!持ち堪えろ!」
ポルスは先程のシャボン玉の魔法を上手く魔法で弾き飛ばしつつ、剣を勢いよく振り回してくるアザゼルをなんとか抑えていた。
「お前ほんとに三銃士の1人なのか?弱過ぎだろ!」
「私は別に剣の腕は大したことないんでね…魔法はそれなりにできますよ?!」
ポルスさんは無詠唱で風魔法を使いシャボン玉を抑えつつなんとか戦っていた。
「でも、もう終わりだよ〜」
アザゼルがそう言うと、小さいシャボン玉がゆっくりと子供達に向かっているのを見た。
「ボルス!危ない!」
ポルスさんはそのシャボン玉を自分の右腕に吸収させ息子を助けた。
「甘いって…」
しかし、アザゼルはその隙を見逃さなかった。
「あああーーーお父さーーーん!!!」
ボルスは目の前で父であるポルスが切り裂かれるのを見た。
「クソーー!アザゼルーーー!!!」
その時、こちらに向かっているアラスがようやく到着し、アザゼルと剣のぶつけ合いをした。
「リーン!そいつら引き連れてにげろ!」
アラスに言われ俺は2人を抱えて走り出した。
「お父さんお父さん!!!」
ポルスは叫び続けていた。
「あぁ、ボルス…強く…生きてくれ…」
ポルスさんは残りの力を振り絞りそう言い残し。
俺たちが少し距離を取れた後。
ポルスさんは先ほどのアラスの腕のように光を放ち弾け飛んだ。
「あぁぁーーー!!お父さーーん!」
俺は泣き叫ぶボルスを強く握りしめ、走り続けた。




