影の世界
俺リーン・ルノエスは動物と話すことができる魔法“テンプレーション”を習得した。
そのおかげでペットである聖獣ヴェルから魔法を教えてもらうことが、できるようになったのだった。
俺はヴェルから黒魔法を教えてもらっていた。
「こんな感じです!」
「なるほど、影から影に移動するというよりは影の世界に入っていくような感覚なのか」
俺は今、黒魔法の“シャドーダイブ”を教わっていた。
シャドーダイブは影から影へ瞬間移動できる魔法だと思っていたが、実際は少し違うようだ。
影の中に入ると周りが真っ黒な世界が現れた。
そこにはたくさんの窓のようなものがある。
これは外の影となっている部分が、窓のように見ることができ、どこから出ればいいのかすぐにわかることができる。
この空間はいわばもう一つの世界である。
また、入る時に魔力を使うが、中にいる時や外に出る時には魔力を消費しないようだ。
「なかなか面白いね!」
「喜んでいただけてよかったです!」
「少し気になることがあるんだが聞いてもいいか?」
「はい!なんでもお聞きください!」
「この中でもし死んだらどうなるんだ?」
「それはですね…」
俺はこのシャドーダイブについていくつか質問をした。
もし人がこの中で死んだ場合、そいつは誰かの手によって外に出されない限り、影の世界に存在し続けてしまうらしい。
また、影の世界はそれぞれ繋がっており、たまに他の者と遭遇することもあるらしい。
しかし、この魔法は発動するために必要な魔力が大きい為使える者は、そう多くなく、黒魔法ということもあり人間で使える者はほとんどいないようだ。
「ってな感じですね!」
「なるほど、なんとなくわかったよ!ありがとう!」
「あとちょっと話は変わるんだけど…」
ヴェルはかなりの年数生きていたということもあり、いろんなことを知っていそうだ。
このチャンスに色々聞いてみよう。
「この世界では魔力が多くないと使うことができない魔法が多い気がしてるんだけど、その理由とかヴェル知ってたりする?」
「僕もそんなに詳しいわけではないんですが、魔力を多く消費する魔法は誰かがギフトで作った魔法の場合が多いです。作成者自身は魔力をそんなに消費しないんですが、他の人が使うときには大量の魔力を消費する傾向にあります」
「ギフトで魔法って作れるのか?」
俺はギフトで魔法を作ることができるということを知らなかった。
タマちゃんもおすすめしてこなかったところを見ると、もしかしたら微妙なのかもしれない。
「ギフトで魔法を作ることはできます。でも、大体1人1つしか作れません。また、ギフトを作れる人の多くはこの世界とはまた別の魂だった人が多いと聞きました」
「なるほど、転生ボーナスとしてギフトを作る権利をもらってるのかな…」
「神様が言うには他の世界からこちらの世界に来る時に勇者なんかになりそうな人に授けているらしいです」
俺は勇者候補ではなかったからな。
ギフトを作る能力というのも魅力的だが、1つしか作れないのであればやはり微妙だな…
ってかその神様は前にヴェルを小さくした動物の神様だよな?
人間の転生にやけに詳しいな…
もしかしたら、あの神様じゃなくて女神のタマちゃんから聞いたのか?
だとすると、ヴェルはタマちゃんとも面識があるのか?
疑問に思った俺はヴェルに質問をしていた。
「ヴェル、その神様ってのはタマちゃんのことか?」
「タマちゃん?ちょっとその名前は知らないですが、私に色々教えてくれたのはノア様です。」
「ノア!!あの小説のノアか?!」
「チュウ!」
「まじか…」
ノアの夜明けで描かれていたノアって人は神にまで上り詰めていたとは…
なんでもありだな。
「そのノア様は元々人間なんじゃなかったっけ?」
「はい。元々は人間の体を持っていたのですが、動物達を戦争から救い出し、多くの命を救ってくれたノア様は動物たちから神として崇められてました。
ノア様は生前に動物の神が存在しないということを知り、お亡くなりになったあと、自ら神になると仰られたんです」
この世界は神にすらなることができるということに俺は驚きを隠さなかった。
だからといって自分がなりたいわけではないがな。
「そっか。ノア様ってのはすごい人だったんだね」
「まぁなんとも言えないですよ…」
「何か悪いとこでもあるのか?」
「あの人、そもそもが勇者候補だったんですけど、動物と遊んでるのが楽しいからって勇者への道進まなかったんですよ…」
俺はノアという人物について詳しく聞くことにした。




