やっとの思い
俺リーン・ルノエスは街で変な男に絡まれたのをアラス、パルス、エザルアの3人に助けてもらった。
3人は騎士団として俺のことをしっかりと守ってくれた。
とは言っても、ほとんどがエザルアのおかげだったがな。
その後、母ヘアラが迎えに来てくれた。
ヘアラが俺のことを紹介し、クーラスの息子ということを知った3人は驚きつつも俺と少しだけ仲良くなった。
そして、俺は遂に手に入れたい“ノアの夜明け”を握りしめ家に帰って行った。
俺はついに動物と話すための魔法が記載されている本を手にしていた。
「よし!やっと落ち着いて読むことができる!」
街では変なやつに取られたり、危険なこともあったが、ここでは邪魔してくるような奴もいない。
俺は自分の部屋で1ページずつ丁寧に本を読んでいった。
このノアという人物は動物だけではなく、実は魔族とも会話をしていたかのような描写があった。
もしかしたら、動物達をどこかに隠していたのは黒魔法の可能性もある。
それこそヴェルが使っている影の中に入る魔法を、自分ではない何かに使うことができるのであれば不可能ではないのかもしれない…
俺はそんなことを考えながら本を読み進めて行った。
「あ!あった!」
俺は動物と話せるようになる話の部分にやっと辿り着いた。
[ノアは動物たちと話すために新たなスキルを生み出した
それは…
『トランスレーション』
という名前の魔法だった]
これだーーー!
俺が探していた動物と会話ができるようになる魔法は“トランスレーション”という魔法らしい。
俺はさっそく魔法を使ってみることにした。
「トランスレーション…」
俺は静かに魔法を唱えた。
どうか…
話せるようになっててくれ。
「ヴェル!出てきてくれ!」
「チュウ!」
「あれ、今“チュウ”って言ったか…」
俺は魔法を使えなかったのかと落胆していた。
「ご主人!そんな落ち込まないで!他の方法があるよ!」
「あれ?」
今どこからともなく声が聞こえた気がした。
「どうかしましたか?」
やはり誰かが喋っている
「誰が喋ってる!?」
「誰か敵ですか!?」
俺はヴェルの方を勢いよく見た!
「今ヴェルが喋ったか?!」
「チュウ?」
…
「やっぱ違うか…」
「僕の言葉わかりませんか?」
…
「やっぱ!ヴェルが喋ってるじゃん!」
「チュウ!」
「その合間合間に挟むチュウってなに!?」
「あ、これは癖です!相槌打ってるだけですよ!」
「紛らわしいわ!」
俺はヴェルが相槌に“チュウチュウ”言っていたことで魔法に失敗したと勘違いしていたが、どうやら魔法は成功していたようだ。
「よかった。でもこれでヴェルから魔法を教えてもらうことができるね!」
「言葉の壁を突破するなんてさすがです!ご主人!」
ヴェルに褒められるれる…俺は不思議な感覚だ。
こんな小さいハムスターと会話ができることなど、俺にとっては前世含め初めてのことだからな。
「早速で申し訳ないんだが、この前見せてくれた魔法なんだけど」
「チュウ!ポイズンとかのことですよね!」
「そうそう!あれってやっぱ黒魔法で間違いないんだよな!?」
「はい!あれは今の僕が出せる黒魔法になってます!」
「そうかそうか、早速で悪いんだがあの魔法をもう一度教えてもらうことはできるか!?」
俺は黒魔法をヴェルに教えてもらうことになった。




