信頼と約束
今日も俺リーン・ルナエスはいつもと変わらない朝を迎えていた。
朝6時に起きると、友人のアーサー・カリバーと剣の稽古を父クーラスに教わり
7時30分には家族で朝食
10時になるとティア先生に魔法を中心としたいろんなことを教わるのだが、今日は日曜日ということで俺がクララの魔法の先生としていろいろ教えてあげるのだ!
俺はクララが来るのをワクワクして待っていた!
「今日は何を話そっかなぁ〜」
いつも日曜日はクララに魔法を教えている。
教えると言っても魔法は回復魔法のことしか興味がないらしく、魔法の歴史やどんなモンスターがこの世界にいるのかを会話の中で教えてあげているだけだ。
つまり雑談をしてるだけ。
クララはいつもそれを面白そうに聞いてくれている。
クララなりに話を聞くことで勉強になってあればいいのだが…
そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「待ってたよクララ〜!」
俺は笑顔で扉を開けた。
しかし、そこには見慣れた別の顔があった。
「どうした?リーン。そんな笑顔で」
「あれ?」
クララだと思っていたら、まさかのアーサーだった。
「どうしたというより…アーサーこそどうしたの!?」
「今日は家にお偉いさんが来るから、どっかで遊んでこいと母さんに言われたんだ…それでリーンと遊ぼうと思ってな!」
「そうか、でも俺これから魔法の勉強会が…」
「魔法?!ならちょうどいい!俺も混ぜてくれ!」
確か、アーサーは洗礼の儀式の時魔法を使えるようになっていたな。
しかし、魔法を教えるとなると俺が魔法を使えることがバレる可能性がある…
「ん〜、全然参加してくれていいんだけど…」
「何か問題でもあったか?俺もリーンのように火の魔法を使ってみたいし、教えてくれるならなんでもいいぞ!」
あ、バレてるのね!
先日のでかい熊と戦っている最中、俺はアーサーを守る為にファイアーボールを使っていた。
しかし、いろいろあってその時に使っていた魔法はバレていないものだと俺は勝手に思い込んでいた。
「あ、見られちゃってた?」
「あぁ!あれは土壇場で出たものではなく、元々魔法が使えている者じゃないとできないレベルだと一目でわかったよ」
「なんか恥ずかしいな…」
「恥ずかしいことなどない!むしろ誇るべきだ!あのレベルになるまで相当努力をしてきたんだろ!」
「そ、それなりに…」
「リーンは才能があるが毎日勉強もしているすごいやつだ!きっと教えるのも上手いはず!」
「そ、そんなことないよ〜」
俺はアーサーに褒められて、少しテンションが上がっていた。
「だから、俺にも魔法を教えてくれて!俺、魔法の才能が開花したと言われてからまだ一回も魔法を使ったことがないんだ!」
「え!そうなの?!」
アーサーはあんだけ洗礼の儀式で威張り散らしていたからてっきりもう魔法は使えているものだと思っていた。
せっかく魔法が使えるのに、教えてくれる人が周りにいないというのは才能の無駄遣いだ…
もう俺が魔法を使えることもバレてるみたいだし、アーサーなら信頼できる。
俺はそう思い、アーサーに提案をした。
「アーサー、守って欲しいことがあるんだ!」
「なんだリーン?」
「俺が魔法を使えることはまだ誰にも言ってないかい?」
「うん、別に言う友達もいないしな!」
なんかごめん。
そんな悲しい返事がくるとは思っていなかったのだ、許せ…
「なら、これからも俺が魔法を使えることを誰にも言わないでくれ」
「わかった!」
アーサーは理由も何も聞かずあっさりと了承してくれた。
「あと、今から来るクララって子のこともあまり周りには言わないで欲しいんだ」
「わかった!しっかり守るよ!」
「なら!問題ないね!一緒に魔法の勉強をしよ!」
「ありがとうリーン!」
アーサーは約束を守る代わりに俺に勉強を教わることになった。
話が終わった頃、またドアがノックされた。
「こんにちは〜」
今度こそ、クララのようだ!
俺はドアを開け、また笑顔になっていた。
「ごめんねリーン。朝からお手伝いを頼まれちゃって、少し遅れてしまったの…」
「大丈夫!そんなに待ってないから!」
「その子ってこの前の…」
「そうそう、この前誘拐されてた!…」
俺はクララにアーサーのことを紹介しようと振り返った。
すると、いつもならあんなに元気で無神経なアーサーが
フリーズしていた!
「アーサー…大丈夫?」
「か…か…」
「か?」
「可愛い…」
アーサーはクララに一目惚れしていた。




