アーサーの憧れ
俺リーン・ルナエスは友人アーサー・カリバーと共に稽古に使う木刀の材料を探しに森へ来ていた。
すると森で1匹のデカい鎌のついた熊に遭遇した。
俺たちはペットの聖獣ハムスターヴェルのバリアで守ってもらいつつ、なんとか逃げようとしたがアーサーが囮になると熊の方へ向かってしまった。
囮になったアーサーが熊に殺されそうになったその瞬間…
1人の仮面を被った騎士が現れた。
今俺の目の前にはすごい光景が見えている。
1匹のでかい熊を細い剣一本で止めている騎士がいる。
騎士は動きが早すぎるのか、俺たちの目の前に一瞬で現れて。
「危ないから後ろにいる少年と安全な場所まで、下がってな」
「は、はい!」
黒い仮面の騎士にそう言われたアーサーは急いで俺の方に走ってきた。
「リーン!さっきはすまなかった!」
「俺は大丈夫!むしろアーサーは怪我とかしてない?」
「あぁ、リーンのネズミが助けてくれたからな!」
アーサーはそう言うと、手の中に包み込んでいたヴェルを渡してくれた。
「よく守ってくれたな!ヴェル!」
「チュ…チュウ…」
「あとはあの人に任せよう」
アーサーはそう言うと、真剣な眼差しで黒い仮面の騎士を見ていた。
「さぁ、デスオーソ俺が相手をしてやろう!」
「グォォォーー!」
あのデカい熊の雄叫びがゴングとなり黒い仮面の騎士との戦いが始まった。
しかし、それは戦いとは思えぬ一方的なものだった…
熊が先程、俺達に放っていた斬撃を騎士に向かって放つ!
それを剣についた水を振り落とすが如く、華麗に受け流していく。
「す、すごい」
あの騎士は決して俺たちのいる方向に攻撃が行かないように気を遣っているようだ。
「グォー!」
熊は斬撃が効かないのを見ると、騎士に向かって一気に距離を詰めてきた。
騎士はそれを避けるのではなく、むしろ熊に向かって飛び出して行った!
ブオン!
熊の凄い勢いの右腕が飛んできた!
スッ…
騎士はその攻撃を瞬時に避け、熊の懐に入った。
「これで終わりだ!」
本当に一瞬の出来事だった。
俺は懐に入った瞬間まではみることができていた。
しかし、次の瞬間
騎士は熊からだいぶ離れたところに立っており
熊は本当に動かなくなっていた…
騎士が俺たちの方へゆっくりと歩き出した瞬間
熊は血飛沫をあげていた…
腕と頭が綺麗に切り裂かれていたのだ!
「すげぇ…」
アーサーはヒーローを見ているようなキラキラした目で騎士を見ていた。
「危なかったな君たち。怪我はしてないかい?」
「は!はい!」
アーサーは騎士に声をかけられたのが嬉しかったのか、とても緊張をしている。
「た!た…助けていただき!あ!ありがとつございばびゅ」
緊張しすぎてもはや何を言っているのかわからないレベルだ。
「そっちの君も問題ないかい?」
「はい!ありがとうございます」
俺は軽くお礼をし、騎士を見てみて思った。
こいつどこかで見たことがあるぞ!?
綺麗な甲冑。
王国騎士のマーク。
そして、胸には後から付け足したような王国の国旗の小さいワッペンが12個…
そして腕には謎の旗。
これって…
「あ、騎士団長か」
俺は心の中で出た答えを口に出していた。
「え!王国の騎士団長様ですか?!?!」
「いや、あの、そうなんだが…えっと…」
さっきまでクールにしていた黒い仮面の騎士が慌て始めた。
まぁそれは仕方がない。
この国の王国騎士は俺の父
クーラスだからな。
しかし、アーサーにはその事を言ってないし、たぶんバレないだろう。
「王国の騎士団長様ってあの英雄クーラス様と並ぶくらい腕が立つと聞います!俺…ずっと憧れてたんです!」
「どうしたもんか…」
画面の奥のクーラスの顔が手にとって見えるよだ。
クーラスは国王から名前を伏せるように言われているし、だからといって嘘がうまいわけではない。
一体どうやって誤魔化すのだろうか…




