ケガの犯人
俺リーン・ルノエスは元毒のドラゴン『ヴィーヴェン』を眷属にしていた。
とは言っても今は可愛い真っ白なハムスターだ。
俺は女神のタマちゃんにこのハムスターをサービス感覚で眷属にしてもらい、正式に俺の家族として受け入れることとなった。
俺は眷属にしてもらった後、このハムスターにヴェルという名前をつけてあげたのだった。
俺は無事に聖獣ハムスター『ヴェル』を眷属にしてもらい、正式な家族として受け入れることになった。
午後になり、いつものようにアーサーが来た。
しかし、いつもより真剣な目をしている。
「どうしたの?アーサー」
「俺はまだまだだってことがわかったんだ」
「そんなことないと思うけど…」
午前中に俺が身体強化を使いズルをしてしまったことで、アーサーのプライドを傷つけてしまったようだ。
「いや、俺はまだまだだよ。リーンに剣を教えれるにはまだ早かった。これからはもっと稽古に精進するよ」
「そ、そう?」
俺は思わぬところで剣の稽古が無くなることが少しだけ嬉しかった。
いや、でもさすがに可哀想か。
そう思った俺は一つ提案をした。
「アーサーが良ければ朝だけ父さんと3人で稽古しようよ!それならお互いのためにもなると思うよ!」
「いいのか?」
ダメなわけなどない。
むしろ俺の分までクーラスから稽古してもらってくれ!
「俺はアーサーが一緒に稽古してくれると嬉しいな!」
「そうか、リーンが嬉しいのであれば来るとしよう!」
やっぱりアーサーは真っ直ぐな心を持ったいいやつだ。
「それじゃあ午後は剣の稽古以外にしよっか!」
「そうだな!リーンは山菜取りが好きなのだろ?今日も行くか?」
「いや、今日はいいかな!」
「では何か別のことでもするか!」
「うん!」
俺たちはいつの間にかちゃんと仲良しになっていた。
話し合いの結果、稽古で使う用の木刀を新しく作るため、森にいい感じの木を探しに行くことになった。
森と言ってもただの家の裏なんだけどね!
アーサーは小さいナイフ一本と木刀を待ち、俺は肩にヴェルを乗せて出発した。
「リーン、ナイフとか持ってこなくてよかったのか?」
「4歳の子供にナイフなんて普通持たせてくれないだろ」
「そうなのか。リーンの家は厳しいのだな」
俺は元の世界の価値観からナイフを借りれないと思っていたが、この世界では4歳の子供がそんな危ない物を持っててもおかしくないのか?
それとも、アーサーの家が特殊なのか…
俺は若干の疑問を持ちつつ木を探していた。
「あ!あれなんかいいんじゃない?!」
俺は一本の倒れている木を見つけた。
「良さそうだな!これを削って木刀にするか!」
「あっちにも大きな木が倒れているな!」
「…ちょっとおかしくない?」
「何がだ?」
「木が倒れすぎだよ!」
明らかにおかしい本数の木が倒されていた。
しかも、全て何者かに切り倒されているような…
「何か、探していたのか…?」
「ヴォォォ!!」
俺が不安に思っていると近くから何かの鳴き声が響き渡った。
「なんだ!?今の鳴き声は?」
「わからないけど、アーサー…すぐ逃げよう!」
「ウゥゥー!チュウ!チュウチュウ!」
ヴェルが何かに威嚇している!
ヴェルが向いている方向を見ると何かが飛んで来るような気配がした!
「アーサー!伏せて!」
俺は咄嗟にアーサーに覆い被さり、倒れ込んだ!
「どうした?!リーン!」
「何かに攻撃されてる!」
メキメキ…
バターン!
俺たちの後ろにあった大きな木が突然倒れた。
「間違いない。ここら辺に倒れてる木はあの攻撃をしてきたやつの仕業だ!」
俺がそういうと何か大きなものが、太陽を隠した。
「なんだあれ…」
そこには真っ黒な手に大きな鎌を付けている熊がいた!
「うわーーー!!」
「うわーーー!!」
俺とアーサーはビビり散らかし叫んでいた。
ドカーン!
ものすごい音がした。
きっと俺たちはあのでかい熊に押しつぶされてしまったのだ…
ヘアラ、クーラス、さようなら…
「あれ?」
死んだと思ったが、俺は全く痛みなど感じていない。
それどころちょっと暖かいぞ?
俺は不思議に思い目を開けた
すると
ハムスターのヴェルが小さな両手から透明なバリアで俺たちを丸く包んでいた!
「チュウ!」
なぜかちょっとダンディに聞こえたヴェルの鳴き声に俺は興奮していた!
「うぉーーー!ヴェルーーー!」
「な!なんだ!リーン!これは?!」
アーサーもこの状況がよくわかっていないが、適当に誤魔化しておくか…
「ごめん!よくわからない!」
「そうか!わからないか!」
わからないでどうにかなるアーサーで助かった!
上に乗っていた熊はすぐさま飛び離れ、俺たちを一定の距離から睨んでいる。
「そうか!こいつがヴェルを怪我させていたのか!」
「チュウ!」
どうやらヴァルの反応からしてもヴェルに怪我をさせた犯人はこいつらしい。
おれは無詠唱で自分の身体強化をこっそりおこなった。
ヴェルを怪我させたやつなら絶対許さないが、アーサーがいる。
魔法を使って戦うこともできるかもしれないが、アーサーを守りつつ戦うのは難しすぎる。
それに、魔法が使えることがバレるとややこしくなってしまう。
「どうしよう…」
俺が悩んでいるとアーサーが肩を掴んできた。
「リーン。俺が囮になるから逃げろ!」
そう言うとアーサーは俺を後ろに投げつつ熊の方に走り出した!
「俺の親友に手を出すんじゃねーぞー」
「アーサーー!」
やばい!
死亡フラグが立っている!
「ヴォォォーー!!」
ブーン!
ブーン!!
熊は両手を大きく振り回した。
すると熊の手の甲に付いている鎌から風魔法のような斬撃が2つ飛んできた。
「うぉーーー!」
アーサーは止まることができない!
やばい!!これ死ぬやつ!
「チュウ!」
「は!」
俺は後ろに飛ばされつつ、肩に乗っていたヴェルを力一杯アーサーに向かって投げた。
「ヴェル!アーサーを守れーー!」
「チューーー!!」
ヴェルはアーサーの肩に向かって風魔法を使いつつ飛んで行った。
そして、すぐさま先程使っていたバリアの魔法を使い、アーサーをバリアで包んだ!
バチーン!
一発目の斬撃をなんとか守り抜いた。
バチーン!!
パリン!
しかし、二発目の斬撃でバリアが割れてしまった!
「危ない!」
俺はアーサーがバリアが割れた反動で倒れているのを見ると同時に地面に足をつき、勢いよく前に飛んだ!
今出せる最大火力のファイアーボールを作りだし、勢いよく飛ばした。
「くそ!間に合わない!」
「アーサーーー!!」
熊がアーサーの首を手の鎌で切り落とそうとした!
その瞬間だった。
熊の動きが急に止まり、俺のファイアーボールも消えていた。
よく見ると熊の鎌は一本の剣によって止められいる。
そして俺の視線の先には…
真っ黒な仮面を被った1人騎士がいた。




