これって優遇?
俺リーン・ルノエスは剣の稽古を無事終えることができ、すっかり忘れていたハムスターの飼育について、父クーラス・ルノエスと母ヘアラ・ルノエスにしっかりと許可を得た。
2人は簡単が簡単に許してくれたのは驚きだが、これで無事に1匹の家族が加わることになった。
なんとかハムスターを家族にした俺は一つ悩んでいた。
「ん〜どんなのがいいかな?」
「チュウ〜」
このハムスターの名前を全く決めていなかったのだ!
一応聖獣らしく、相当な力を持っているらしい。
「なんて名前がいいかな?」
「チュウ!」
もしかしたら聖獣というくらいだ、特別な呼び名があるかもしれない。
ってか、聖獣って一個人が育てていいものなのか…?
俺は色々悩んでいた。
聖獣というすごそうなものが急に降って出てきたのだ。
神のイタズラのようなものか…
「これって、もしかして…」
俺はすぐさま本棚から適当に一冊の本を取り出し
床に置いた。
「タマちゃん…」
俺は手を合わせてタマちゃん(女神様)のことを想像していた。
「あら?!どうしたの?源さん!」
俺はその声を聞くとゆっくりと目を開けた。
「お久しぶりです。タマちゃん」
「あら?お久しぶりかしら?」
俺は一年ぶりにタマちゃんとの再会を果たしていた。
ギフト幸運のおかげで基本的には困ることなどなかったのだが、今回の聖獸がタマちゃんによって仕向けていたのかどうかの確認をしに来た。
「一年お会いしませんでしたね!」
「そうよね!全然会いに来てくれないからプレゼントとして聖獣の子供フェンリル送ってあげたんだけど、ちゃんと飼育してる?」
俺が聞こうとしていたことの答えがすぐ出てしまった。
どうやらあのハムスターはタマちゃんが送り込んでくれていたらしい。
ってか犬じゃなくて、フェンリルだったのか。
「今はハムスターの姿になってますが飼ってますよ」
「え?ハムスター?なんで?!」
俺は執事のセンさんが犬アレルギーであったことと、夢の中で、犬の姿からハムスターに変えてもらっていたことを説明した。
「あら…」
「ごめんね!テヘッ!」
タマちゃんはおっちょこちょいな部分があるらしくアレルギーの執事がいるなんて考えに至らなかったらしい。
「いいんですけど、気をつけてくださいね」
「はーい」
「でも、個人的にこんな贈り物してもらってよかったんですか?」
俺は残りの3億円分の願いを使ってもらったわけではないのにこんなプレゼントをしてもらって大丈夫なのか、心配になっていた。
「いーのいーの!気にしないで!どーせバレないし!」
俺の考えとは違い結構軽いノリで送ってないか?タマちゃん…
「てかあと3億円分どうする?なんか使う?!」
「いや、特に今は必要ないですね…」
「そっか〜、ならまぁ楽しんで!」
かなりノリが軽い。
さすがと言うべきなのかどうか…
「あ!そういえば気になっていたんですが…」
「何を?」
「あのハムスターって何か聖獣と言われてるくらいだし、特別な名前とかありますか?」
「なんかあった気がするけど…」
「覚えてないですか?」
「いや、確かヴイー…ヴィー…あ!ヴィーヴェン」
「ヴィーヴェン?!」
ティア先生に教わったことがある。昔、毒を持つ蛇のように細長いドラゴンがいたと。
確かその名前がヴィーヴェンだったはず…
「あの毒のドラゴンですか?」
「ん〜どうだったっけ?」
「一番重要なことをじゃないですか!忘れないでください!」
「まぁまぁ落ち着いて」
「あの子は今じゃただの大人しいハムスターなんだし、気にすることないよ!」
「まぁ、そうですが…」
俺は何か大切なことを誤魔化されてしまった。
しかし、あのハムスターが悪いことをするとは思えないし大丈夫だろう。
「そんなに気になるなら眷属にしておけばいいよ!今やっとくね!」
「え!?いいんですか?」
「気にしない気にしない!なんかめんどくさい事にさせちゃったみたいだし」
そう言うと、タマちゃんはあのハムスターを眷属の契約を結んでくれた。
眷属になると俺の言うことに反した行動ができなくなるらしい。
「聖獣を眷属って…」
だんだんと自分がヤバい存在になっているのではないかと不安になる。
俺はあのハムスターを眷属にしてもらった。
サービス感覚で…
「あとは何か聞きたいこととかあった?」
「そうですね、聞きたいことというよりはお願いのようなものなんですが…」
「なになに?!」
「これからはあの聖獣みたいに怪我させてから、何かを俺に会わせるのはやめてください。いくら仲良くさせたいからって怪我をさせるのは可哀想です」
「…?」
俺の発言に違和感を覚えているのか、女神はキョトンとした顔をしていた。
「それ私は知らないやつね。もしかしたら何かにぶつかって怪我をしたのかもね」
「それならいいんですが…」
「あと、あの子は子供フェンリルにされてから以前の姿より魔力が抑えられてるから、何か強い魔物に襲われたのかもしれないわね!」
「気をつけておきます」
元ドラゴンの力がどれほど下がっているのか、俺にはわからないが一応気をつけておくことにしよう。
「それじゃあ後は問題ないかしら?」
「はい!もう大丈夫です」
「一応あのハムスターは眷属になるわけだし、名前をつけてあげてね!ポチでも太郎でもなんでもいいから」
「はい!わかりました!」
「じゃ!またね!」
タマちゃんがそういうと俺は元の部屋に戻っていた。
「ただいま」
「チュウ!」
「お前の名前か…」
「そうだ!今日からお前はヴェルだ!」
そういうとハムスターのヴェルは白い光を放っていた。
「チュウ!」
心なしか元気な気がする!
「これからよろしくね!ヴェル!」
「チュウチュウ!」
こうして俺は正式にこのハムスター『ヴェル』の飼い主になれた。




