生きる意味
私クララ・ナーポは1匹の猫を助けるため、回復魔法に挑戦していた。
この魔法を使おうとした時、私は何故回復魔法を使いたいと思ったのかを思い出していた。
私は過去の記憶を思い出していた。
リーンから女神の前髪をもらったことで彼に興味を持ったからなのか、はたまた母以外の優しさを感じたのが初めて感じたからなのか…
私はそんなことを考えているとまたリーンと出会ったあの広場に向かっていた。
しかし、リーンが来るかどうかもわからないことに気づいた私は魚釣りをすることにした。
食料がないときはこの広場でミミズを捕まえて釣りの餌として魚を釣っていた。
「今日はリーンに会いに来たんじゃなく、魚釣りのためにこの広場に来たのだ」
そう自分に言い聞かせてミミズを探した。
すると
知らない子供から声をかけられた。
「なにしてるの?」
見ればわかるだろと思っていたが、今日は気分がいいため返事をした。
するとその子供は続いて話しかけてくる。
「覚えてないかな?この前あったリーンだよ」
その子供はリーンだった。
びっくりして振り返ると本当にリーンがいた!
昨日会ったぶりなのに何日も会っていなかったのかと思うくらい私は嬉しかった。
そして、リーンは魚釣りを手伝ってくれ、3匹の魚を釣っていた。
私はというと1匹も釣れていない。
釣れない恥ずかしい気持ちと、リーンの釣った魚が羨ましい気持ちが心を交差していた。
「取っちゃおっかな…」
私は一瞬悪いことを考えた。
しかし、リーンから人のものを奪ってはいけないと怒られてから私は人の物を奪ってやろうという気持ちを抑えるようにしていた。
そんなことを考えるとリーンが自分の釣った3匹の魚。私にくれたのだ。
その時私はとても不思議な気持ちになっていた。
ホワホワしたような暖かい気持ち…
今までお母さんからしか感じなかったこの気持ち…
私はそんな浮かれた状態で父が住んでいる家の外で魚を焼いてしまっていた。
いつもなら別の場所でバレないように食べていたが、今日は浮かれていて、そんなことは忘れていた。
「なんだお前、魚焼いてんのか」
そう言うと父に3匹とも魚を取りあげられてしまった。
「やめて…それはリーンが私にくれた」
「なんだテメェ!独り占めしようってのか!」
父は私を殺そうとしたのかボコボコになるまで殴ってきた。
そして、ボロ雑巾のようになった私を見て満足したのか、父は私を外に投げ捨てた。
「このまま死ぬのかな…」
私は死を覚悟していた。
「どうしようもない」
「きっとこのまま死ぬんだ…」
そこにヒーローが現れた。
目はよく見えてないがリーンの声だ。
「嘘だと…クラ…」
途切れ途切れだが、リーンは私に話しかけてくれていた。
とても嬉しかった。
「ヒール」
リーンが何かしてくれた。
とても暖かく体が少し楽になるような感覚だ。
しかし、私の意識は段々と遠くなっていった。
目を覚ますと、教会の中にいた。
そこには白い帽子をかぶっている神父のアボットさんがいた。
どうやら私を助けてくれたらしい。
でも、私はリーンに助けられたという気持ちが強かった。
「リーンはどこ!?」
「リーンくんは今意識が戻らず、ご自宅で安静にしていらっしゃるよ」
私はリーンの家に連れて行ってもらい初めて知った。
リーンは金持ちの貴族だった。
「こんな大きな家の一人息子。
そんな人が私を助けようとしてくれた」
私はリーンに助けられてるのに自分は助けることができない悔しさでいっぱいだった。
リーンが目覚めた時私はほっとすると同時に決意した、
「リーンをいつでも守ってあげれる人間になりたい」
…
私は生まれて初めて誰かのために何かをしたいと思ったのだ。
私は何故魔法を使いたいのかしっかり思い出し、回復魔法を唱えていた。
「ヒール」
すると
猫ちゃんを抱えた手が白く光り輝いていた。
「お願い!元気になって!」
白い光に包まれた猫ちゃんの傷はどんどん治っていった。
「ニャア!」
「猫ちゃん!」
私は使えないはずの回復魔法を使えるようになっていた。




