優しさ
俺リーン・ルノエスは友人クララ・ナーポに回復魔法を教えていた。
しかし、半年ほど回復魔法を教えたものの一向に使えるようにならないクララを見て、息抜きのために釣りをしにきていた。
そんな矢先、猫と虎が現れた。
猫は怪我をしており、クララが抱えて逃げた。
俺は虎を倒しクララを探していた。
この街はこんな虎が出るような危険があるとは知らなかった…
「てか、なんで虎…」
魔物がいる世界に虎が出てることに驚きを隠せていなかった。
無事に倒した俺はクララを探していた。
「クララー!クララー!」
...
クララ視点
私は今大きな魔物から逃げていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「リーンが危ない。誰か助けを呼ばないと…」
私は川沿いを走り続けた。
「ニャア…」
抱えていた猫ちゃんが吐血した。
「大丈夫?!」
「は!猫ちゃん」
猫ちゃんは私の手の中でだんだんと冷たくなろうとしていた。
「だめ!死んじゃダメ!」
私の心が熱くなっていくのを感じる。
お願い、死なないで。
リーンにヒールをかけてもらいたいが、たぶん戻っていては間に合わない。
「どうしよう!どうしよう!」
…
「私がやるしかない」
私は女神様に願った。
「どうか、どうかこの猫を助ける力を私にください」
すると私の心がさらに熱くなっていくのを感じた。
「ヒール」
クララはこの魔法を使いたいと思った理由を思い出していた。
私は元々は普通の家庭に生まれていた。
お母さんはマリー・ナーポという名前で、いつも優しく笑顔で私を育ててくれていた。
父は堅物というか、あまり喋らない人だがお母さんのことをとても愛していたというのは覚えている。
お母さんは私を産んだあたりからずっと体調が悪そうだった。
産後の弱っている身体に悪いものができていたらしい。
お父さんはその病気を色んな人に調べてもらい、借金までしてお母さんの病気を診てもらったり、回復魔法を色々かけてもらっていた。
しかし、お母さんの病気は治ることはやかった。
お母さんは私の洗礼の儀式が終わった1ヶ月後になくなってしまった。
父には借金と母が体調を悪くしたきっかけの私という悪魔だけ残っていた。
私たちが住んでいた家は借金の返済の一部として取り上げられてしまった。
住む場所をなくした私たちはスラム街で生活に逃げるように住み着いた。
父は借金の取り立てが職場まできたことをきっかけに元々働いていた大工の仕事をクビになっていた。
収入のない父はどこからか毎日お酒を手に入れ、私のことなど忘れているかのような生活をしていた。
3歳の私は必死に生きようといろんなことをしていた。
川の水でお腹を壊したこともあった。
他人の食べ物をとってボコボコにされた時もあった。
「私に優しくしてくれる人は誰もいない」
「世界で唯一優しくしてくれたのはお母さんだけだった」
そんな時、私はリーン・ルノエスという少年に出会った。
彼はバカ兄弟から晩御飯のカエルを手にしていたことを注意してきた。
「私の晩御飯なのに…」
でも、彼の声はどこか母に似ている優しさを持っていた。
いつもだったら殴って終わりだが、何故かそのカエルを返してしまい、彼がどんな反応をするのか気になってしまった。
カエルを返した私にリーンは'女神の前髪'をくれた。
女神の前髪は私が母と出かけた最後の記憶、洗礼の儀式でもらったお菓子だ!
私はこのお菓子が大好きだった。
お母さんが体調の悪い中、一緒に出かけてくれて、2人で食べながら帰った記憶。
この記憶は私にとって一番嬉しくて忘れられない思い出だった。
私はリーンからもらった女神の前髪を舐めながら、帰り道で涙を流していた。
それは母以外からの初めて感じる優しさからくるものだった。
クララの母マリー・ナーポは地球でいうところのガンにかかっていた。
この世界では医療技術はそんなに進んでおらず魔法で治すことが一般となってい。
一般的な回復魔法は傷などを元に戻すことや外部から入ってきた毒や風邪の菌を取り除くことはできるものの、ガンのような自分の体から発生する悪性腫瘍などはヒールや、ハイ・ヒールでも治すことができなかったのだ。
*全てを治す魔法もこの世界には存在するらしいがそれはまた別のお話で描かせていただきます。




