齟齬
俺リーン・ルノエスはずっと会えていなかった女神のタマちゃんとの再会を果たした。
ずっと気になっていたギフトについて質問をし、実はめちゃくちゃ魔力があることがわかった。
俺は無事に洗礼の儀式を終えて、ご褒美の飴を舐めていた。
「この飴美味しいね」
「教会の人達が毎朝作ってるらしいわよ」
俺が舐めているこの細長い棒状の白い飴はどうみても七五三の千歳飴にしか見えない。
「この飴はなんて名前なの?」
「これは"女神の前髪"という名前なのよ、ギフトをくれる時に女神様の綺麗な髪を一本授けられたという伝説からきているの」
「へ...へぇ〜」
なんかちょっと嫌だな。
日本でも'爪の垢を煎じる'ってあったけど、それに見立てた垢をお菓子として配っているとようなものだ。
そう思うとちょっと舐めるのが嫌になったリーンはそっと飴をしまっていた。
「ママ、ちょっと遊んでていい?」
「いいわよ、でも遠くへは行かないでね」
「わかった!」
俺はとなり大きな木のある広場に行き
遊んでいる同年代の子供3人を見つけた。
しかし、どうも様子がおかしい。
1人の女の子と男の子2人が喧嘩をしているようだ。
「いじめか...?」
俺はすかさず女の子の隣に走って行き、女の子に加勢した。
「女の子をいじめるなんて最低だぞ!」
カッコいいヒーローの登場だ。
きっとこの子は俺のことを好きになってしまうだろう。
「君も大丈夫かい?」
この少女に優しくしている俺かっこいい状態だ。
「あんた誰」
少女からの予想外の返答だ。
「お前誰だよ!」
「あっち行けよ!」
少年2人からも言われてしまった。
今俺には敵しかいない状態だ。
「でも、いじめは良くないぞ」
俺も言い返してやった。どうみても2対1で女の子と喧嘩をしてるんだ、こいつらに問題はある。
「いじめられてんのは俺らの方だぞ!?」
...
「え?!」
振り向くと俺はグーパンをくらっていた。
何故だ!
おかしいだろ!
助けてるんだぞ!
「そいつさっき俺らが捕まえたカエルを奪ったんだ!」
「まさかそんな」
そう思って少女の左手を見ると、かなり強い力でカエルを握りしめていた。
「ゲゴ」
鳴いたなぁ、今絶対鳴いたよ。
確かにでかい生きたカエルを握りつぶすような力強さで持っていた。
「まじか...」
ドン
俺は腹パンをされていた。
「ちょっとちょっと落ち着いて、別に俺は怒ってないから」
「あっそ!」
腹立つやつだな...
「なんでカエルなんか奪ったの?」
「お腹が空いてたからよ!わるい!?」
「人から物を取るのは良くないよ、それは返してあげて」
「ふん!わかったわよ」
そういうと少女はカエルを2人に返してくれた。
「お...おう」
「次からは取るんじゃねーぞー」
2人の少年はそう言って走り去っていった...
隣を見ると沸々と怒りが込み上げている少女がいた。
さすがにやばいか...
そう思った俺は先ほどもらった千歳飴...ではなくて女神の前髪を少女にあげた。
「これさっきもらったんだけど、2本あるから一本あげるよ」
「欲しかったら舐めかけのもう一本もあげるよ」
「あ...ありがとう」
そういうと少女は2本とも受け取ってくれた。
「わ、わたし...クララ」
「クララ・ナーポって言うの」
「そうなんだ!教えてくれてありがとう。僕はリーン・ルノエスよろしくね!」
僕の最初の友達は暴力的な少女クララであった...




