ベンおじさん 10
俺リーン・ルノエスはアンおばさんの家を出発し、ビート・ウッド王国へ向かっていた。
道中でベンおじさんの話を聞けることになった。
水神様はずっと探していたドラゴンハートを見つけることができ、嬉しそうに喜んでいたが、どこか寂しげな表情を浮かべてもいた。
「水神様おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう」
「そのドラゴンハートは水龍に返してあげるんですか?」
「あぁ、こいつも長年大人しくしていたしもう問題ないだろうからな…」
そういうと水神様はドラゴンハートを両手で包み魔力を手のひらに集めていた。
「さぁ、水龍。元の姿へと戻ることを許そう…」
ピカーン!
水神様の寂しげな声と共に、手の中から青い光が飛び出してきた。
シュン…
光はしばらくすると収まり、空気中の水分を吸収し出した。
それを見た水神様はドラゴンハートを右手の平に乗せ、高い位置にした。
すると、ドラゴンハートの石だった部分がどんどんと崩れていき、中から水色の透き通った水の塊がでてきた。
こぼれ落ちた石の破片は灰となり、水の塊はどんどんと大きくなっていった。
「久しぶりだな…水龍よ…」
水の塊は空気中の水分を吸収して最終的にはとてつもなくでかい龍となっていた。
「ちゃんと話すのは久しぶりだなポンちゃん」
「ポンちゃん…」
ゆっくりと喋る水龍が水神様をポンちゃん呼びをされたことに驚いたベンさんは少しコケてしまった。
「そういえばポン・セイドって名前でしたね」
「あぁ…」
「水龍よ!お前はちゃんと反省してるのか?」
「もちろんだ…あの時ワシが国を水没させたのはやはりよくなかった。もう女を追いかけるのはやめる…」
「そうか、わかってくれたらそれでいいんだ。それで、これからお前はどうする?」
「水龍としていろんな場所に雨を降らせに行こうかとも思ったが、ポンちゃんと一緒に旅するのもワシは楽しかった…」
「じゃあ、一緒に来るか!?」
水神様は先ほどまでの悲しげな表情を吹き飛ばすくらい嬉しそうな表情をしていた。
「あぁ。ポンちゃんがまだ旅をするというならな」
「こんな老耄に旅を強いるとはなかなかの龍じゃな」
「行きたくないなら俺は1人で旅するだけだ」
水龍はそう言いながら、行ってくれると信じた顔をしていた。
「冗談だよ。一緒に旅をしてくれ」
水神様は水龍と旅ができるのが嬉しくて仕方がなかったのだろう。わかりやすく嬉しさが表情に出てしまっていた。
「でも水龍。そんな体では一緒に旅はできぬぞ?」
「確かにな…」
水龍はそう言われると体をどんどん小さくし、人間の体へと姿を変えた。
「水龍よ。お主男じゃなかったのか?」
水龍はとても綺麗な女性へと姿を変えていた。
「これはワシの趣味じゃ。可愛い娘を好きにならないように自分が可愛い女子になったまでじゃ」
「そうか。まぁ好きにせい」
「ポンちゃんよ、ワシを好きになってもいいんじゃぞ?」
「バカ言え!中身が男だとわかってて手を出すわけないただろ」
水神様と水龍の2人がなかなか盛り上がっていたが、ベンさんは驚きが勝ってしまったのか、会話に参加することができていなかった。
「ベン、ぼーっとするな」
「す、すみません」
「とりあえずここを出るとするか」
「はい」
水神様に言われ、3人はモンスターの体から魔石を取り出しダンジョンを出てギルドへと戻った。
…
「今回の報酬は大銀貨38枚。小銀貨6枚となります」
「結構行きましたね水神様!」
「あれだけ倒したからな、こんなもんだろ」
3人はモンスターの魔石とダンジョンの秘密ルートの報告をしていた。
「細かい内容といたしましてはゴブリンが1匹銅貨5枚で112匹。新エリア発見報告が一件で大銀貨3枚。アイスバード1匹が大銀貨の30枚となります。お疲れ様でした」
「ありがとう」
ギルドの女性が笑顔で見送りをしてくれた。
「流石にこれだけの報告となるとギルドの人も優しくなりますね」
「あのアイスバード1匹でかなりの額になるからな。ギルドとしても利益につながる相手には優しくしておきたいものだ」
「なるほど…」
「そういえば、ベンへの謝礼がまだだったな」
水神様はそう言うと先ほどの報酬が入った袋を渡してくれた。
「え?!いやいや!もらえないですよ!」
「気にするな!ワシは金には困っておらぬ」
「いや、しかし…」
「そうそう!ポンちゃん金持ちだし!もし金に困ってもどうにかできるから貰っときな!」
「そうですか…」
若干の申し訳なさを感じていたが、水龍の後押しもありベンさんは報酬を受け取るとこととなった。
「ワシたちはこれから色んなところを旅してくるからな!ベンも達者でな!」
「はい…」
「ポンちゃん。こいつも旅について来たい顔をしてるぞ?」
「そうなのか?ベン」
ベンさんは水神様から色んなことを教わったこともあり、正直なところついて行きたい気持ちが強かった。
「いえ、大丈夫です」
しかし、水神様について行くのは迷惑になると感じたベンさんはあえて断ることにした。
「いいのか?ポンちゃんは頼めばついて行かせてくれるぞ?」
「いえ!教えてもらいたいことは大体教わったので大丈夫です。それに、一緒にいたら甘えてしまい何も成長できない気がするので…」
「そうか、ベンがそう言うならもう大丈夫だな」
水神様は優しい笑顔をしていた。
「はい。色々と魔法を教えていただきありがとうございました」
こうしてベンさんは水神様とはお別れし、魔法もそれなりに使えるようになったベンさんはギルドで段々と活躍するようになり、稼いだお金でギルドを設立することとなったそうだ。
…
「俺の面白い話と言えばこんなところだな!」
「お話ありがとうございました!」
俺たちがベンさんの冒険話を書き終えた頃、一つの町が見えてきていた。
「あれがビート・ウッド王国?」
「あれはまだ違うよ。でもだいぶ近くなってきたし、今日はもう暗いからあそこに泊まるとしよう」
べディの質問にベンさんが答えてくれた。
そして、俺たちはレッドライトタウンに着いたのだった。




