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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇2章◇

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第91話 交渉



「お掛けになってお待ち下さいませ」

 そう言って、案内人は部屋を出た。


 バッジャキラ王宮の貴賓室に通されたのは、アンジュ、レイフォナー、ショールにチェザライ、キュリバトだ。外の明かりがよく入る大きな窓、金や赤を基調としたゴージャスな内装と調度品にアンジュは落ち着かなかった。


 中央にある大きな細長いテーブルには何脚もの椅子が配置されているが、レイフォナーは迷うことなく上座とは反対側の椅子に腰を下ろした。アンジュたちはその後ろで起立したまま国王を待ったが、張り詰めた空気に誰も口を開くことはなかった。




 ここに来る前、一行はロネミーチェの森に立ち寄っていた。


 アンジュは長であるオラゴネルにレイフォナーを紹介すると、一瞬驚いていたが快く招き入れてくれた。このあと光剣譲受のための交渉に、王宮へ向かうことを伝えると神妙な面持ちを見せたが。アンジュはそんな彼が気になっているであろう話を切り出した。


『二か月ほど前、クランツと接触しました。オラゴネルさんの考え、正しかったです』


 以前アンジュがこの地を訪れたときに、オラゴネルはクランツについて見解を述べていた。レイフォナーの弟・第二王子クランツが、二百年前の第二王子であるクランツの魂に乗っ取られているというものだ。クランツ本人から聞いた話を伝えると、納得したように頷いていた。


 レイフォナーはオラゴネルに、長きに渡り光剣を守り続けたことへ感謝の意を伝え、当時の王家がマウべライド一族を守ってやれなかったことを謝罪した。そしてメアソーグに戻らないかと打診し、名誉回復にも尽力すると約束したのだが、マウべライドは丁重に断った。


『我々は今の生活に不自由を感じておらず、この地が気に入っているのです。そのお気持ちだけ、ありがたく頂戴します』


 オラゴネルの表情は清々しく、レイフォナーは無理強いをしなかった。




 アンジュがそんなことを思い出していると、部屋のドアが開く音が聞こえた。先頭を歩く人物とその後ろには若い男性、さらには側近や護衛が続き、メイドたちも部屋に入ってきた。


 椅子に座っていたレイフォナーは立ち上がって会釈程度に頭を下げ、アンジュも慌てて真似をした。


 先頭の人物は上座に腰を下ろし、若い男性はその傍に控え、側近と護衛たちはドア付近に待機している。


「そう(かしこ)まらんでもよい。(おもて)を上げよ」


 傍にいるショールたちがその言葉に従ったのを横目で確認したアンジュは、頭を上げると目に映った人物に気圧されそうになった。黒い瞳に艷やかな黒い長髪、褐色の肌、赤や橙の糸を使ったこの国の伝統織物を纏い、椅子の肘掛けに両腕を乗せている姿はまさに威風堂々。この人物こそがバッジャキラ国王で、妙な色気を備えた美男だ。


 アンジュは思わず比べてしまった。


 メアソーグ国王も美形で切れ者であるが穏やかな性格で、身分の低い者にも気さくだ。年はそう変わらない二人だろうが、バッジャキラ国王には恐怖とまではいかないがトゲトゲしい雰囲気を感じた。


「久しいな、レイフォナー殿」

「アンヘラウム国王陛下、ご無沙汰しております。お変わりなくお過ごしでしょうか?」

「この通り、息災だ。なかなか時間をつくれず待たせてしまったな」

「ご多忙の中、このような場を設けていただき感謝申し上げます」


 椅子に掛けるよう言われたレイフォナーは着席し、国王といくつか言葉を交わした。その間に、メイドはテキパキとお茶を用意して部屋を後にした。



「見かけない顔がいるな」

 アンヘラウムはそう言って、アンジュとキュリバトに目を向けた。


 ショールとチェザライとは夜会などで何度か顔を合わせており、レイフォナーは簡単に二人をアンヘラウムに紹介した。


「なぜ村の娘がこの場に?しかも護衛まで従えている。いつぞや押しかけてきた三人組の二人と見受けるが」

「アンジュは本日の会談の関係者です」

「ほう。では、本題に入ろうか」

「はい」


 レイフォナーはメアソーグで闇魔法が復活したこと、アンジュが光魔法使いであること、光剣の在処を知った経緯などを説明し始めた。




「光剣がどれほど効力のある代物かは定かではありませんが、アンジュが闇魔法使いを倒すために必要であると考えています。光剣をお譲りいただけないでしょうか?」

「ふむ。闇魔法使いは世界を(おびや)かす存在であるからな・・・倒さねばならんなぁ」

「相応な代価をご用意させていただきます」

「・・・よかろう、光剣はメアソーグに譲ろうではないか。金はいらん」


 緊張していたアンジュたちの表情は明るくなり、レイフォナーがお礼を言おうとしたとき。


「ただし、条件が二つある」

 アンヘラウムはそう言って、ニヤリと笑みを浮かべた。


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