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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇1章◇
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第5話 対抗心?



 アンジュとイルは王都に行くため、乗合馬車に揺られている。

 時々こうして、二人で王都に行っているのだ。


 今回の目的は薬草を売りに行くだけではなく、村人たちからの依頼もこなさなければいけない。若い者が王都に行くときには、遠い所まで通うのが厳しい高齢者に声をかけている。

 

 アンジュはみんなからの依頼を書いたメモを見た。

「今回は七人ね」

「少ないほうじゃん。まあ、みんな旅費と小遣いくれたし、のんびり行こうぜ」


 村人たちからは売ってきてほしい物を渡され大荷物になるため、一人では持てないのでイルを連れて行くのだ。

 アンジュ一人なら風魔法を使って行くのだが、残念ながら二人一緒に飛ぶことは難しい。以前試してみたのだが、地面から一メートルほどしか浮かず、馬車くらいの速さしか出ず、魔力消費量も激しいため断念した。自分とある程度の荷物しか運べないのだとわかった。




 夜は野宿したり宿に泊まったりして、乗合馬車と徒歩で数日かけて王都に到着した。


「王都はいつ来ても華やかだよなー」

「そうね。でも私は村のほうが好きだな」

「俺も。じゃあさっそく、みんなからの依頼を片付けていこうぜ」


 いくつか店を回り、村人たちから渡された品を売っていく。売れた際には、店主に金額とサインを書いてもらう。誰の品がいくらで売れたのか、ごちゃ混ぜにならないためだ。




 そして全員の品を売ることができた。


 王都をブラブラ歩いていると、イルが宿を見つけた。建物の雰囲気が気に入ったのか、壁の看板に書いてある食事のメニューが気に入ったのか、ここに泊まろう、と言い出した。


 しかしアンジュは即座に却下した。

「駄目よ、宿代高いんだから。中心部から離れた安い所に泊まりましょ」


 アンジュはしっかり者だ。決してケチではない。旅費にはまだ余裕があるが、余ったお金は村人たちに返すため、できるだけ節約したいのだ。


「お前、いい嫁になるよ」

「お嫁にいく予定は、今のところないけどね」

 イルは照れくさそうに言う。

「・・・俺がもらってやってもいいけど?」


 アンジュは、何を言い出すんだ?という顔をした。

 イルは弟のような存在で一人の男性として見たことがなく、イルもまた然り、と思っている。きっとからかわれているのだろう、と考えた。

 

「何で上から目線なのよ!年下のくせに生意気なんだから」

 そう言って、イルの肩をバチンと叩いた。

「いてっ!お前がずっと一人だったら可哀想だと思ったんだよ」

「もう!余計なお世話よ!」


 二人がじゃれ合っていると声をかけられた。


「アンジュ?」

 振り向くと、白毛の馬に乗った金髪の男性と、栗毛の馬に乗ったオレンジ髪の男性、青毛の馬に乗った銀髪の男性が二人を見下ろしていた。

「レ、レイフォナー殿下!?」


 イルは驚いている。橋の工事で視察に来ていたレイフォナーのことを覚えていたが、まさか第一王子だとは思っていなかったようだ。


「やっぱりアンジュだ」

 そう言いながら、馬から降りた。

「久しぶりですね」

「はい・・・」


 真っ白な軍服姿は以前村でも見たが、今日のレイフォナーはさらに白馬に乗ってきた。なんて美しく白が似合うのだろう、と惚れ惚れするが、イルとじゃれ合っている姿を見られたことを思い出し、恥ずかしくて思わず俯いた。

 それだけでなく、胸がドキドキと鳴り始めた。

 レイフォナーはソワソワしているアンジュを楽しそうに見たあと、驚いているイルに目を向ける。


「君は?」

「俺は将来アンジュと結婚するイルです」

「ちょっと、何言ってるのよ!違います、ただの幼馴染です!」


 アンジュは慌てて訂正した。

 若干声を荒げ、早口になったのは自分でもわかり、なぜだか誤解されたくないと思った。


「へえ、弟さんかと思った」


 そう言われたイルはレイフォナーを睨むような目で見た。レイフォナーはそれを不敵な笑みで返したあと、アンジュに視線を移して笑顔で話し始める。


「アンジュ、いつとは言えませんがまた村に行きますから。そのときたくさん話をしましょう。では」

 優雅に馬に跨ると、三人は去って行った。


「あいつ、なんかムカつくっ!」

「こら!あいつなんて言っちゃダメでしょ」


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