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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇1章◇
23/116

第23話 再会



 レイフォナーは、ショール、チェザライと共に龍に乗っている。

 

 龍から飛び降りたレイフォナーは、アンジュを力強く抱きしめた。

「アンジュ、無事でよかった!!遅くなってすまない!」


 自分を抱きしめる温もりは幻覚ではなく、本物だ。レイフォナーが助けに来てくれた。島に来てから弱音を吐かず頑張っていたが、独りは心細かった。会いたいと思っていたところに現れてくれた。願いが叶い、滝のように涙が流れる。


 声を上げて泣いているアンジュの頭を、レイフォナーは優しく撫でた。

「よく頑張ったな。もう大丈夫だ」


 無事に再会を果たした二人を微笑んで見ていたショールとチェザライが口を開く。

「そのー、お二人さん。邪魔をして悪いんだけど・・・」

「アンジュちゃん、とりあえず服を着ようね」

「え、あ・・・ひゃああーーー!!」

 全裸であることを忘れていたアンジュは真っ赤になって、森中に響く声で叫んでしまった。




 水魔法で作った鳥を放ち、アンジュが無人島にいると突き止めたレイフォナーたちは、食料や毛布などを持ってきていた。アンジュは久しぶりのパンや肉を、一口ずつ噛みしめて食べた。


 レイフォナーは、アンジュの魔力を突き止めてから今日まで、なぜ彼女が無人島に留まっているのか不思議に思っていた。

「魔力が半分しか回復していないのです」

 それを聞いて納得した。だが・・・。

「回復しない理由・・・気になるな」


 四人は小屋の近くで火を囲み、今回のことについて情報を共有し始めた。



 アンジュが行方不明になってから、二週間以上が経っていた。

 この島は数十年ほど前に無人島になり、メアソーグがある中央大陸の先、東に位置する。メアソーグは大陸の西寄りにあり、気が遠くなるほどの距離がある。


 アンジュはワッグラ村でユアーミラとカラスに会ったこと、彼女の異様な姿、足元に現れた影に体を飲まれてこの島に着いたこと、島での生活を話した。

 



 ここでの生活を聞いた三人は、苦い顔をしている。

「本当によく頑張ったな」

「アンジュちゃん、すげーわ」

「鋼の精神力・・・」

「村の女はたくましいのです」

 先ほど、わんわん泣きじゃくっていたくせに強がってみせた。


 ワッグラ村に派遣した魔法士の調査結果によると、森に残っていたもう一つの魔力は、火・水・風以外のものだった。

 アンジュが影に飲まれ無人島に着いたということは、それは転移魔法を使われたに他ならない。転移魔法は闇魔法だ。約二百年前に途絶えた闇魔法だが、それを使える者が現れたのだ。


「ユアーミラ皇女は、カラスの指示に従っていたように見えました」

「操られていたのかもな」

「皇女自身、闇の魔力をもってるかもしれねえぞ」

「どっちにしても、これから大変なことになるよ」


 魔法を勉強したことがないアンジュは、疑問に思う。

「操る?」

「闇魔法は生物を意のままに操って動かす、呪いをかける、転移魔法の発動など、忌み嫌われていた魔法だったんだよ」


 なんて恐ろしい魔法なのだろう。そんな魔法を向けられ、生き延びた自分は運が良かったのだろうか。

  

「転移魔法で飛ばされる直前に、風魔法で抵抗したのは正解だったな。そのおかげで転移先が狂ったのだろう」

「何もしなかったら、この世界から消えてただろうな」

「追跡不可能、救出不可能だよ」

「ひえぇぇ!」


(あのとき咄嗟に魔法を出した私、えらいわ!)


 アンジュは心の中で、自分を褒めてあげた。そして、魔法を使えることに感謝した。

 魔法は無人島に来てから何度も役に立ったが、もし魔法学校に入学して訓練を積んでいたら、もっと楽なサバイバル生活だったのだろうか。




 レイフォナーはアンジュの魔力追跡のため、魔法で作った鳥をひたすら飛ばし続けた。魔力が空に近づいては、ショールや魔法学校の水魔法士たちから魔力を分けてもらい、休むことなく捜索。そして六日目に、無人島でアンジュの魔力を感知した。レイフォナーとショールは酷使した魔力の全回復に二日を要し、その後チェザライも加わってメアソーグから無人島まで三日で到着した。

 本来は三日でやって来れる距離ではく、相当無理をしたのだ。そのため三人とも魔力がかなり減っており、一晩島に泊まり、明日四人で中央大陸に向かうことになった。


 食事を済ませ、小屋の床に毛布をひき、四人はその上に寝そべった。

 レイフォナーはアンジュを抱き寄せる。

「君が行方不明と聞いて、生きた心地がしなかった。無事でいてくれてありがとう」

「・・・はい」

 毎日一人ぼっちで、堅くて冷たい床で寝ていたアンジュは、レイフォナーの温かさに身を委ねて眠った。


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