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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇1章◇

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第22話 サバイバル



 目を覚ましたアンジュは、ぼーっとしている。

 どのくらい寝ていたのだろうか。夢の中に知り合いがたくさん出てきて、楽しい夢を見た気がする。


(村のみんな、心配してるかな・・・レイフォナー殿下は、私がこんなことになってるなんて知らないだろうな)


 立ち上がると、堅い床の上で寝ていたせいかもしれないが今日も体が痛い。眠気はスッキリ解消されているが、一晩寝れば全回復する魔力は半分ほどしか回復していないようだ。


(回復が遅いわ・・・こんなこと初めて。木の実しか食べてないから?)



 小屋の外に出ると快晴で、過ごしやすい気温だ。


 川の水を飲んでいると、魚の姿があった。なんとしてでも捕まえたいところだ。釣りはワッグラ村の川でやったことがあるが、ここには釣り竿がない。

「手掴み?槍で刺す?魔法を使う?」

 どの方法で捕まえようか悩んだが、おそらく魔法が確実だ。できるだけ魔力は使いたくないが、そんなこと言ってられない。


 だが魚を捕まえる前に、準備をしなければならない。

 ワッグラ村で採った木の実を食べて軽くお腹を満たし、バスケットを肘にかけ、小屋にあった槍を持って周辺の探索に出た。


 枝を拾いながら、食べられそうなものを探す。だが野草もキノコも見たことのないものばかりだ。さらに探していると、赤い実がなっている木を見つけた。これも初めて見るが、美味しそうな見た目をしている。一つもぎ取ってかじってみると、皮は苦いが中は甘くて美味しい。


「これは多分、食べても大丈夫な気がする」

 いくつか収穫して小屋に戻る途中、自分と同じくらいの背丈の植物を見つけた。黄色い花を咲かせている。


「もしかして・・・」

 地面を掘ると、予想通りイモが出てきた。しかも大量だ。

「やった!」

 必要な分だけ収穫し、残りはそのまま地中に埋めておくことにした。




 小屋に戻り、ナイフで数本の枝を削って串を作った。


 次にスカートを捲り上げて、太ももあたりで縛る。

 川に入ると、さほど深くない。深いところでも、膝が浸かるくらいだ。

 

 ゆっくり動きながら魚を探す。すると、数匹の魚を見つけた。見つけたはいいが、魔法をどう使って捕まえればいいのだろうか。魔法釣りなんてやったことがない。

 とりあえず手のひらから風を出し、それを魚目がけて放ってみた。すると、大きな水しぶきが上がった。

「きゃあ!」

 それと同時に二匹の魚が宙を舞って、川の横に落ちた。

 どうやら、魔力を込めすぎたようだ。全身ずぶ濡れになってしまったが、程よい大きさの魚を二匹を捕ることができた。

「次はもう少し加減しよう・・・」


 髪や服を風魔法で乾かし、小屋の近くで火を起こした。


 先ほど削った枝に、洗ったイモと、ナイフを使って内臓を取り除いた魚を刺す。

「よし!」

 火のそばに置いた大きめの石にそれを立てかけて焼いていくが、なかなか時間がかかりそうだ。火が消えないよう枝を追加しつつ、時々ひっくり返しながら満遍なく火を通していく。



 そろそろ焼けただろうか。恐る恐る食べてみる。

「あ、熱っ!でもおいひい〜!」

 魚の身はフワフワで、イモはホクホクだ。

 調味料を一切使っていない自然な味だが、久しぶりのまともな食事に涙が止まらない。魚二匹とイモ一つをあっという間に食べ、デザートには赤い果実。もっと食べられそうだが、ひとまず満足だ。

 あとは魔力が全回復してくれれば完璧なのだが。






 そんな生活を数日送っていたが、魔力が全回復しない。小屋で充分に睡眠をとり、それなりに食事をしているのに。

 上空から島を見渡したとき、遠くに大陸が見えた。

 とにかくこの島から脱出して大陸に行きたいところだが、今の魔力量で空を飛んだとしても途中で魔力が切れ、海に落ちてしまうだろう。



 アンジュは気分転換も兼ねて、川で髪や体を洗うことにした。

 川の水は冷たいが、我慢だ。ここで何度か水浴びをしたが、屋外で裸になることにはやはり抵抗がある。誰にも会うことはないのだが。森の中で、石鹸に使われる殺菌や消臭に効果がある薬草を見つけており、それを使って洗っていく。


 島に来てからは生き延びることに精一杯で、レイフォナーのことを考える余裕がなかった。だがこの生活に慣れてきたのか、ふとしたときに彼のことを考えてしまう。

 レイフォナーのことは忘れると決めたはずなのに。

 あの温かい手で頰を撫でてもらいたい。今すぐ抱きしめてほしい。頑張ったな、と慰めてほしい。


「私、レイフォナー殿下が好き・・・やっぱり会いたいよ」

 そう口にすると、涙が溢れてきた。

 

 そのとき。


「アンジュ!!」

 上空から声が降り注いだ。会いたいと願いすぎて、幻聴が聞こえるようになってしまったのだろうか。

 見上げると、幻覚まで見えるようになってしまったようだ。

「・・・レイフォナー殿下?」


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