表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇1章◇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/130

第21話 ここはどこ!?



 四日前。


「うー・・・ん」

 目を覚ましたアンジュは、地面に横たわっている。

「ここは・・・・?」


 体を起こそうとしてみたが、体中に筋肉痛のような痛みが走る。痛みを堪えつつ、なんとか上半身を起こして辺りを見渡した。森の中のようだが見慣れない草木が生い茂っており、ワッグラ村の森とは匂いも違っている。


(どこの森なのかな・・・確かユアーミラ皇女に会って、足元に現れた影の中に吸い込まれたんだっけ。あれは一体なんだったの?)


 肌寒い上に、辺りは薄暗い。昼間でもこんなに薄暗いのか、それとももう夜になるのだろうか。

 ここがどこなのか確認したいが、影に全力で抵抗したため魔力を使い切ってしまった。空を飛んで上から見渡すことは不可能だ。


(今日はここで野宿決定ね)


 イルと王都に行くとき何度も野宿を経験しているため、この状況にあまり焦りを感じていない。だが、知らない場所で一人でいることには心細さを感じている。幸い自分の横にはバスケットが転がっており、中にはワッグラ森で摘んだ薬草や木の実、ナイフが入っている。


 凶暴な野生動物が現れないよう願いながら、休めそうな場所を探す。月が出ていないのか、月明かりが森の中までは届かないのか、すぐに真っ暗になって身動きがとれなくなってしまった。

 その場で腰を下ろし、バスケットから木の実を取り出して食べた。


「こういうとき、火魔法が使えたらなぁ」

 火を出せれば、暗さと肌寒さを解消できる。

 火魔法を羨ましく思っていると、木で火を起こせるという話を思い出した。


 暗闇に目が慣れてきたため、近くにあった木の枝二本を使って火起こしを試すことにした。詳しいやり方は知らないが、見様見真似でやってみる。

 一本を地面に置いて両足で抑え、もう一本を両手のひらに挟んで地面に置いた枝に垂直に当てる。そして両手を擦るようにして、枝を勢いよく動かしていく。


 根気よくやっているが、火がでる気配はない。

 

 そろそろやめようとしたとき、焦げたような匂いと煙が漂ってきた。諦めずに手を動かしているとついに、削りカスに小さな火がついた。そこに小枝や落ち葉を追加すると火は大きくなり、一気に周囲が明るくなった。


「ついたー!」

 急いで周辺の枝や落ち葉を拾い集め、焚き火を作った。


 

 焚き火を見ていると不思議な気持ちになる。自分が不安に思っていることを忘れさせてくれるようだ。無心でずっと眺めていられる。炎の色、パチパチと木が放つ音は心地よい。よすぎてついウトウトするが、火が消えないよう注意しながら枝を追加していく。






 ゆっくりと周囲が明るくなってきた。


 夜が明け、アンジュは立ち上がって体を思い切り伸ばす。筋肉痛のような痛みはほとんど治っていない。

「いたた・・・」

 それに全然眠れていないせいか、魔力が少ししか回復していない。


 ここがどこなのか確認するため、風を体に纏わせて空中に向かった。空から森を見下ろしてみると、近くに街や村は見当たらないどころか、どうやらここは島のようだ。

 できるだけ魔力の消費を抑えたいので、すぐに地面に降りた。


「どういうこと?ワッグラ村の森にいたのに、なんで島にいるの?」

 

 ワッグラ村があるメアソーグは大陸の内陸部にあるため、周囲には海がない。だがここは島だ。

 何が起こったのか理解できなかったが、とにかく魔力を全回復させるしかないという考えに至った。だが、見知らぬ森の中ではゆっくり休むことができない。


 もしかしたら、森の中に集落があるかもしれない。それを願って歩き始めた。


 途中で、川のせせらぎのような音が聞こえた。気のせいかもしれないが、聞こえたほうに向かうと見事に川があった。水は透明で、川底がはっきりと見える美しさだ。


 アンジュは両手で水を掬ってゴクゴクと飲んだ。

「美味しい!」


 無色透明、無味無臭の水は体に染み渡り、そのことに幸せを感じるほど喉が乾いていたことに気付いた。何度か水を飲んで体を存分に潤し、せせらぎに耳を傾けて一休みすることにした。

 だが、心地よい音はやはり眠気を誘う。このままでは眠ってしまいそうで、集落探しを再開することにした。

 下流に向かって歩いていると、小屋らしき建物を見つけた。



 小屋のドアをノックしてみるが反応はない。

 ドアノブに手を伸ばすと鍵はかかっておらず、中を見渡すと物がほとんどない。壁に備え付けられた棚に、布が何枚か置かれており、その横に二本の槍が目に入った。壁にはいくつか蜘蛛の巣が張っていて、どうやら今は使われていないようだ。


「どなたの小屋かわかりませんが、少し休ませていただきます」

 そう言って棚から布を取り出した。

 眠気に抗えないアンジュはそれを枕にして小屋の床に寝そべると、一瞬で眠りに就いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ