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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇3章◇

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第129話 帰国準備



「ん・・・」


 レイフォナーが唇を離すと、アンジュはゆっくりと目を開けた。


「本当に起きた!!」

 と、全員が叫んだ。

「おい・・・やれと言ったお前たちがなぜ驚くんだ?」

 レイフォナーはチェザライたちを冷ややかな目で見た。


 眠りから覚めない女性が愛する男性のキスで目を覚ます、という物語はどの国にも存在する。だがあくまでフィクションであり、レイフォナーをからかって楽しんでいたチェザライたちは、まさか本当に目を覚ますとは思っていなかった。 


「あれ・・・?レイフォナー殿下?」

 アンジュは寝ぼけているのか、ぼうっとしている。

「おはよう、アンジュ」

「・・・おはようございます」

「ここはツィアンの宿だよ。私たちは現実空間に戻ってきたんだ」

「そうですか・・・」


 と他人事のように言ったアンジュは、次第に意識がはっきりしてきたようだ。あたりを見渡し、一人ひとりの顔を確認し、驚いた顔をしている。


「ショール様、チェザライ様、バラック先生!それと、えっと・・・?」


 レイフォナーは、体を起こそうとするアンジュを手伝いながらフィーを紹介した。


「そうでしたか!フィーさん、ありがとうございます!」

「いえいえ」

 



 アンジュは体調がすこぶる良かった。


 腹の子は元気に動いているし、フィーが用意してくれたパンも完食できた。ショールとチェザライからレイフォナー救出の感謝を述べられ、バラックからも「よく頑張った」と褒めてもらえた。

 姿が見当たらない白い球体については、バラックから話を聞くことができた。クランツがまだ目を覚ましていないため憶測ではあるが。


「じゃあ、メアソーグに帰ろうぜ!」

「はやくフリアと子どもたちに会いたいよぉ・・・」


 ショールとチェザライは、レイフォナーが転移させられてからずっとシュノワに滞在していたのだ。バラックはそんな二人に刺すような視線を送った。


「わしは転移でレイフォナーとアンジュを連れて王城に戻る。ショール、チェザライ。お前たちは自力で戻ってこい」

「はあ?」

「なんで!?」

「レイフォナーを守れなかった罰じゃ。よいか、必ずフィーを連れて今日中に戻ってこい」

「今日中!?」

 ショールとチェザライは声を揃えて叫んだ。

「俺、やっぱり連行されちゃうのね」


 当たり前だという顔をしているバラックは、フィーに「宿代じゃ」と言って巾着のような袋を渡した。だがフィーは、ズシリと重みがあることを不思議に思った。


 袋を開けると、中身はツィアンの通貨だった。宿はレイフォナーとアンジュの二人部屋、自分用の一人部屋をとり、たった一泊しただけだ。それなのに、それら一か月分くらいの支払いができそうな額が入っている。


「レイフォナーとアンジュが世話になった礼じゃ」

 とバラックは付け加えた。

「・・・口止め料の間違いでは?」

「ふん。まあ、それでよい。今回の件は他言無用」


 ツィアンの硬貨を多めに持ってきたのは、ただ単に不測の事態に備えてのことだ。口止め料などでは毛頭ない。それに口止め料ならばもっと大金を用意するものだ。


「へいへい、わかってますよ」


 フィーはとりあえず受け取り、今後について考えた。 


 これからメアソーグに連れて行かれ、しばらく自由はないだろう。面倒ではあるが、自ら関わってしまったのだから仕方ない。だが数年ぶりに訪れるメアソーグと、復活した光と闇の魔法をこの目で見られるかもしれず、楽しみにも思えてきた。



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