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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇3章◇

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第128話 昔馴染み



 ショールとチェザライ、フィーも互いを覚えていた。レイフォナーはフィーが持ってきた平民の料理を堪能しながら、そんな三人の会話に耳を傾けていた。


「お前ら、あんなにちっこかったのになぁ」

「あんたは老けたな」

「当たり前だろうが!十五年も経ってんだぞ」

「長い髪似合ってたのに〜」

「旅してると短いほうが楽なんだよ」


 などと、再会を喜んでいる。レイフォナーたちとフィーには、深い付き合いはなかった。何度か魔法学校で顔を合わせ、そのときに話をした程度だ。それでもこの短時間ですっかり打ち解けるほどに、互いに印象深かったようだ。


「いまではレイフォナー殿下の護衛かぁ」


 と言ったフィーは二人を交互に見つめた。


 ショールは自分の背を追い越していないものの高身長で、鍛え上げられた肉体の持ち主だ。チェザライは小柄ではあるが、魔法士のなかでもトップクラスの魔力量と実力だろう。二人ともレイフォナーの護衛たるべく、血の滲むような努力を重ねたに違いない。


 そしてレイフォナーに目を向けた。


 この十五年の間に、何度かメアソーグに足を運んだことがある。またこの国に住みたい、と思うほどに居心地のよさを感じた。民想いの国王はもちろんのこと、レイフォナーの評判も耳に届いてきた。その度に、立派に成長したなぁ、と親戚のおじさん気分になったものだ。


「またこうして会えるとは・・・運命ってやつかね」

 と、フィーは呟いた。


 レイフォナーも三人の会話に加わり、他愛のない話からフィーの旅話で盛り上がりながら食事を終えた。



 コンコン。


 ほどなくして部屋のドアをノックする音が響いた。誰が来たのか四人ともわかっている。率先してドアに向かったのはフィーだ。少しためらいながらドアノブに手をかけ、ゆっくりと開けた。


「・・・お久しぶりです。先生」

 フィーは緊張の面持ちで会釈した。

「お前、老けたのう」

 と言われ、緊張は吹き飛んだようだ。

「どいつもこいつもっ・・・こっちのセリフだわ!おじいちゃんじゃん!髪、真っ白じゃん!」

「うるさいのう。じじいになってもお前には負けん」


 部屋に入ってきたのはバラックだ。転移を使って、アンジュとレイフォナーの様子を見に来たのである。

 二人の無事を直接確認し、安堵したところでレイフォナーたちに保護したクランツの現状を伝えた。さらにはフィーに光魔法と闇魔法が復活したことや、今回の出来事を簡単に説明した。


 フィーははじめ懐疑的に聞いていた。長年途絶えていた光魔法や闇魔法が復活し、闇空間や異空間と言われてもピンとこなかったからだ。だが食堂を出たときに感じた不思議な魔力は、それくらいの理由がないと説明がつかないと納得した。それにレイフォナーとアンジュの関係性や、二人は魔法が絡んだ事件に巻き込まれたのだろうとある程度予想もしていた。




「レイフォナーよ、アンジュを起こすのじゃ」


 バラックがアンジュの魔力を調べたところ、以前より魔力量が増えていること、ほぼ回復していることがわかった。いつもなら自然に目を覚ますまで待つが、今回バラックとしてはいますぐにでも二人をメアソーグに連れて帰りたい。


 アンジュとレイフォナーが現実空間到着時に発生した不思議な魔力は、ツィアンの魔法士たちも当然感知しているはずだ。すでに調査は始まっていると思われ、申請もなくメアソーグの王子がツィアンに滞在していることや、その不思議な魔力と関係があると知られたら面倒極まりない。

 それに、眠ったままのアンジュを連れ帰ることも可能だが、二人にはやく会いたくてソワソワしている国王と王妃に、目を覚ました元気な姿を見せてあげたいのだ。


 レイフォナーは、アンジュが眠っているベッドに腰掛けた。


「アンジュ、起きて」


 そう声をかけ、肩を揺すってみたがアンジュは起きない。


「口の中に水でも流し込むか?」

 と言ったショールに、チェザライは呆れ顔だ。

「あのさぁ、もっと色っぽい起こし方あるでしょ〜」

「姫を目覚めさせる方法と言えば・・・」

 フィーはチェザライと目を合わせ、声を揃えた。 

「キス」


 肩を揺らしても起きなかったのだ。レイフォナーは、そんなことで目を覚ますわけがないと思っている。


「さあ、レイくん!想いを込めて、ぶちゅ〜っと!」

「どの国にもそういった物語がありますし」

「ほれ、はよせんか」


 レイフォナーはもう一度、「アンジュ、起きて」と声をかけて肩を揺すってみた。だがやはり目を覚まさない。


 みんなにからかわれている気がしてならないが、アンジュと唇を重ねてみた。はやく目を覚ましてほしい、はやく声を聴かせてほしい。キスにはそんな願いを込めた。久しぶりに重ねるアンジュの唇はやわらかく、胸のあたりにふわりと温かくなるような幸福感が広がった。


 すると、アンジュの唇が小さく動いた。



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