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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇1章◇
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第11話 二人きりの時間



 ある日の午後、アンジュは森の中で切り株に腰を下ろして一休みしている。食べられる野草や木の実を採りにきたのだ。

 生い茂る木の葉を眺めながら、レイフォナーのことを考えている。


 まだ数回しか会っていないが、彼は村の問題にも尽力してくれ、田舎者を見下すこともない。王族らしからぬ気さくさ、目を奪われるほどの美貌に惚れない女性なんていないはずだ。

 それに、自分を気にかけてくれている感じがして嬉しい。レイフォナーと過ごす時間は、他者からは得られない幸福感に満ちている。


(これが恋なのかな・・・?また来ると言ってたけど、あれから二か月経ったわ。本当に来るのかな?この前王都の祭に行ったときには会えなかった・・・)


 レイフォナーのことを考えるだけで、胸がじわっと温かくなる。

 だが、なかなか会えないことが寂しい。寂しいと思うと、温かいはずの胸がズキンと嫌な音を鳴らし、現実を思い知らされる。

 雲の上の存在であるレイフォナーに恋をしても、報われるわけがなく無意味な感情にすぎない。どうすればこの恋心を捨てられるのだろうか。 


 アンジュはため息をついて、首を左右に振る。

「あの方のことは考えないようにしよう!会いたいなんて思っちゃダメ!」 

 そう自分に言い聞かせて、両頬をペチペチと叩いた。


 すると、横から声をかけられた。

「誰に会いたいの?」

 顔を上げると、レイフォナーが笑顔で立っていた。

「きゃーーー!!!」


 足音や気配に全く気付かず、驚きのあまり叫んでしまった。レイフォナーに会うといつも胸がドキドキするが、今はドクンドクンと驚きの音を鳴らしている。


「ひどいなぁ。化け物を見るような顔をしないでよ」


 レイフォナーは初めて会ったときのような平民の格好をしている。今日は完全プライベートで、ショールやチェザライにも内緒でお忍びでやって来たのだ。

 城に帰ったら一人で行動したことを怒られるだろうが、アンジュとの時間を誰にも邪魔されたくない。


 独り言を聞かれてしまったアンジュは、恥ずかしくてたまらない。

「叫んでしまって、すみません。あと、さっきの独り言は忘れてください」

「ふふ、どうしようかな」

 からかうような笑みを向けてくる。


 いたたまれないアンジュは話題を変えようと、疑問に思ったことを尋ねる。

「ここにいるって、よくわかりましたね?」


 現在、それなりの広さがある森の中にいる。彼の様子から、探し回ってやっと見つけた、という感じは見受けられない。

 

 レイフォナーはアンジュの横に腰を下ろすと、両手を頭の後ろに当てて、ゴロンと寝そべった。

 そんなことをしたら服が汚れてしまうのに、彼は気にもとめていないようだ。

 水魔法で作った龍に乗ってきたレイフォナーは、村に着いてからはアンジュの魔力を追って、森のこの場所を特定したという。


「魔力を追う!?そんなことが出来るのですか!?」

「うん。君の魔力と魔法は一度見て覚えてるからね」

 レイフォナーが初めてこの村に来たとき、アンジュは風魔法で彼のマントを乾かしたことがあった。


「ここは・・・いい所だな」


 そう話すレイフォナーの顔はとても穏やかだ。普段の生活では寝そべることのない硬い土、木々の隙間から差す陽の光、鳥の囀り、木や草花の香りに癒やされているように見える。

 

 すると、味覚も堪能したくなったのか「アンジュが淹れたお茶が飲みたい」と、ねだってきた。今日は毒見役がいないのに、いいのだろうか。そう思っていると、「アンジュのこと信用してるから」と言ってくれた。


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