表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

婚姻破棄をするなら私を追放してください!

こちらは短編版を加筆修正した中編です。(計三万字ほどの予定。既に完結まで執筆済み。)

短編では未登場のキャラクターが追加されております。

後書きには毎回登場するキャラクターのモデルとなった宝石の解説を掲載しております。

 

燦爛(さんらん)の魔女、カレン! 今この場で、貴様との婚()を破棄させてもらおう!!」

「な、なんですって……!?」


 荘厳な雰囲気が漂う、白亜の大聖堂。

 今日の婚姻の儀(結婚式)を見るために、多くの民衆が駆け付けていた。


 だが今の状況は祝福ムードとは程遠い。

 汚れひとつ無かった美しい大理石の床には真っ赤な血の海が広がり、その中央には人間だったナニカが無残にも転がされている。


 この惨劇を引き起こした犯人も凶器も、ここに居る全員が知っている。

 何故ならば花婿が右手に持っているのは、血に塗れた宝剣。

 それもたった今使われたばかりだと分かるような、生温かい液体が(したた)っていたからである。


 突然の凶行に(ざわ)めいている中、この物語の主人公であるカレンは果敢にもその犯人に立ち向かっていた。

 何を隠そう、この犯人こそカレンの婚姻者、ジェイドだったのだ。

 この国で最も権威のある深緑の軍服姿で、堂々と婚姻破棄を言い放った。


 対するカレンが着ているのは、町娘が着るようなみすぼらしいワンピース。

 大陸の覇者とも言えるリグド皇国の次期皇帝の伴侶となるには、確かに彼女は釣り合わないかもしれない。

 だがそれとこれとは話が別だ。

 突然こんな場所で、婚姻を解消なんてされても困る。


「色んな理不尽に耐えて耐えて、ここまでやって来たのに……!」


(そもそも夫婦になるつもりが無かったのなら、婚約の時点で破棄しなさいよ……!!)


 この国にやってきてから受けた仕打ちが、一気にフラッシュバックする。

 来て早々に形だけの妻にされ、新人のメイドにすら邪魔者にされた。

 城を追い出された後は、農民としてボロ家でひもじい生活を送る毎日。

 今日だって、農作業をしてからここへ来た。


「残念ながら、貴様よりも我が(きさき)に相応しい魔女がいるのでな」

「悪いわねぇ~、薄汚れたドブネズミちゃん。アンタは田舎にでも帰って、芋でも(かじ)っていなさい」


 ジェイドの隣りには深紅のドレスを身に纏った妖艶な美女。

 たしかに、女としての魅力は彼女に軍配が上がるだろう。

 カレンとは違って、胸もお尻も大きい。

 だけどそんな事で引き下がるわけにはいかない……!!


「貴方たちは、魔女の名前が目当てで嫁に引き入れたというのですか!!」

「当然だろうが。我が最強のリグドに、弱者は要らん。まさか魔女協定でやって来たのが、貴様のようなカス魔力しか持たない女だったとはな。まぁ心配するな。貴様の国も直ぐに、我がリグド皇国の領土としてやる。クハハハッ!!」



 魔女協定。

 戦争を繰り返すこの国と和平をするために、王族の魔導士である魔女を交換する協定。

 この男はカレンが人生を懸けてやってきたことを、笑いながら無かったことにすると言った。



「分かりました。そこまで言うのなら、私のことをこの国から追放してください!!」





 ――この日より皇国は、燦爛の魔女と呼ばれる本当の所以(ゆえん)を身をもって知ることとなる。


シトリン(太陽石):シトラス(柑橘)に名前を由来する宝石。明るさと元気をもたらしてくれる効果があるとされている。ちなみに日光には弱いので長時間晒さないことをオススメする。石言葉「親愛、希望」 ※別の宝石、サンストーンも太陽石と呼ばれている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ