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鬼餅 (ムーチー)  作者: 仲本秀謙
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兄と妹の哀しい物語

プロローグ


これは、沖縄にあった鬼の話。哀しい、兄と妹の話し。


を、現代風にアレンジを加えた少しオーバーな物語である。


登場人物


(はる) この物語の主人公の女の子。正義感が強く、家族思い。


(あき) 春の兄。働き者で村1番の力持ち。亡くなった父の代わりに働いている。




1 平和だった日常


「お母さんー!山に行って、山菜取ってくるね」今日もいい天気。空は青く晴れて、セミがうるさく鳴く昼下がり。

「気をつけて行ってくるのよー」と、家の中で編み物をしているお母さんが私に言った。私の住んでいるのは琉球という島国のとある山奥にある村。みんなで助け合って畑やサトウキビ、狩りなどをして暮らしている。山にはフーチーバー(よもぎ)や、オオタニワタリなどの山菜があり、ちょっと苦くて実を言うと私はけっこう苦手…笑 でも、この山で採れた山菜と村の人たちが育てた野菜などを交換したりして家に持って帰る。山にはハブもいるので気をつけないといけないが、ハブは基本夜行性であり、昼間にみるのは滅多にない。山に入ってすぐに川がある。そこに見覚えのある人がいた。兄の秋だった。

「あきにーにー!!山に山菜取ってくるねー!」と手を振り私は合図をした。すると秋はすぅーと振り向くと、

「おう!気をつけて行ってこいよー。それと今日は鮎が沢山いるから頑張って取るから、楽しみにしとけ〜」兄は笑顔で私に手を振ってくれて「また後でな〜」と言った。3つ離れた兄は村1番の力持ちで、自慢のお兄ちゃん。2年前に亡くなった父の代わりに働いてくれて私の家族を支えてくれている。

「さっ、私も頑張らなくちゃ!!」日が暮れる前にたくさんとっちゃおーーっと。


「えへへ、今日は大量大量。まさか、あんなにフーチーバーがある穴場があるなんて。」カゴいっぱいのフーチーバーを抱え、山を下りていく。兄とあった川沿いにはすでに兄の姿はなく、恐らくもう山を下りているだろう。

「もうすぐ日が暮れちゃう。私も少し急ご。」少し駆け足で山を下りていくと、

「うわぁーーー、お、鬼だーー!!」と大きな叫び声が聞こえた。その声に私はびっくりし、持っていたカゴを落とした。

「え、なに、鬼??ど、どうゆうこと。」村まではまだ少し距離はある。それでもここまで叫び声が聞こえるという事は事態は深刻なのだろうか。今、村は鬼に襲われている。

「お母さんに、あきにーにー。大丈夫かなぁ。。」震える身体を私はグッと堪え、私は、

「行かなきゃ。」

固まった足を動かすように1歩、また1歩とゆっくり進んで行った。山も村に近づくにつれ、静かになっていく。しばらく歩いて私は村の入口にあたる神社の方まで来た。そこから私の家までは少し距離はあるが走れば何とかなる距離。村の方を見てみると、この時間には珍しく誰もいない。

「いつもならもう少し賑やかなのに。ほ、本当に鬼が。。」私は1つ息を呑んだ。

「よ、よし。いくぞ。」震える身体に喝を入れるために頬をバシッと叩き、私は家まで走った。とにかく走った。周りには鬼に襲われた後の家、倒れている人が何名もいた。涙もぐっと堪えてとにかく走った。私の家の前に着くとそこには血だらけで倒れている人がいた。よく見るとお母さんだった。

「お、、おかぁ、さん。」力ががっと抜けて、私は膝から地面に倒れ込むように四つん這いになった。

「あっ、、ひっ、、お母さん。、おかあさーーーん!!!!」血だらけで倒れているお母さんを前に私は泣いた。お母さんの頬に触れるとまだあったかかった。でも血が大量に出てる。私でもわかる。お母さんはもう死ぬだろう。その時だ、

「ドン!!ガン!」と家の方から音がした。もしかしてまだあきにーにーが鬼と戦っているかもしれない。私はお母さんに軽くウートートー(手を合わせてお祈りすること)をし、家の中に入る覚悟をした。近くにあったクワを持って、大きく深呼吸した。壊された玄関の方からゆっくり入っていくと台所の方に男の人が立っていた。それは私が見た事あるような面影のある人。

「あ、あきにーにー?ねぇ、あきにーにーだよね。」

しかし、返事がない。身体が血だらけで手を見ると爪が異様に長い。着物のせいか肌はよく見えないが血管が浮き出ているようにも見える。

「ね、ねぇ、あきにーにー!!」すると

「く、くるな。逃げろ。じゃないと。お、俺は。。」その男は凄く辛そうな声で私にそう訴えてきた。でも、この人が兄なら助けないと。私は1歩前に歩いた。すると

「くるな。来るな来るな来るな来るなくるなーーーー!!!」と叫ぶようにその男は私の方を見た。それは私の知っている兄の顔をした「鬼」であった。

「い、いやゃーーーー!!」私は持っていたクワを投げ捨て走って逃げた。

「嘘だ。あきにーにーが鬼に。。」

玄関の前に着いた時後ろから思いっきり蹴られるように投げ飛ばされた。蹴り飛ばされた私はお母さんの前に転がり、意識がもうろうとした。そんな中、片目を開けると玄関にあの鬼が立っていた。ゆっくり私に近づいてくる。あぁ、私も死ぬんだ。そう思って目を閉じた時不思議な声が聞こえた。

「俺をいつか、殺しに来てくれ。春。愛してる。」


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