9.ニコの説明
王都から出てくるとき、ちょうど最後の夕焼けが西の空に消えていた頃だった。
これからの空は明るさをすべて失い、世は暗闇のゆりかごに入る。
イシェルだらだらと長い街通りに沿って歩く。灯火が両側にある建物から照らしてきて、一軒一軒に続き、遠くから見れば光の川のように繋がっているのだろう。王都の街が夜になっても静かではない。行商人たちが自分の屋台や露店に客を招く声、油で食べ物を揚げる声、子供が紙風車を持ってはしゃぐ声などあちこちから伝わってくる。
平和っていいな。
イシェルは止むを得ずに思った。
冥王の府に対する恐怖はやっと民衆の心から去っていく。かつて人が脅えていた力は枕の元に囁く伝説や物語になり、人は夜の安らかさを楽しむことが出来た。
姫と軍務大臣の闘争もまだ激化してない、この国はまだいい未来と望まれるかも。
記憶の中に、イシェルは怠い平和主義者ので、谷崎とよく似ってる。しかし、いまはあまりのんびりしていけない。
「そろそろ事情を説明してくれないか?」イシェルが人跡少ない場所に移り、ニコを呼ぶ。
「うわ、怖い目だ。」ニコが肩をすくめる:「一応、元のイシェルのスキルと記憶もあるし、そんな場面を対応するのは余裕だろう?」
「誰もそんなことを聞いてない。」イシェルがニコを見上げる:「君はいったい誰?ここはどこ?なぜ俺を選ぶ?そして任務は何?」
「質問多いね。」ニコが嗤う:「ちゃんと親切なお姉さんを感謝しろ。」
「見た通り、あたしは悪魔だ。」ニコは自分の漆黒の尻尾を振り回す:「とある秘術で君を元の世界から連れてきた。理由はあとで教える。今の君は、あたしが君の願いを叶えると知ってるって充分。その嬢ちゃんの頸椎だけじゃない、時間を戻るも可能だよ。君はもう体験しただろう?」
イシェルは眉を顰める。確かに見た。あの瞬間、時間が止まり、天地逆転のような記憶はまだ彼の中に鮮明である。
「等価交換だ。君はあたしの任務を完成し、あたしは君の願いを叶い。悪くない話だろう?他のことなんで、君にとってそんなに大事でもないじゃない?」
イシェルはじっとニコを見る:「分からない。時間さえ操られる君は、なぜこの無力な俺を頼む?」
ニコが白眼で見返す:「だから時が来たら教えるだろう?あらゆる存在も万能じゃない。それなり制限がある。あたしに相応しくないことにもある。故に他の人を頼って、それはごく普通のことじゃない?」
「つまり、その時間を操る能力も、制限ある。そうだろう?」イシェルが追い詰める。
「お前ってやつはさ……」ニコが目を顰めて、イシェルの背筋が寒くなる:「口が嫌いだ。」
「ああ、気分が壊れちゃった。」ニコは手を広げる:「最後の質問だ。あとは任務発表。」
「……」イシェルは口の回りが面倒をもたらすと思わなかった。真面目に考えざるを得ない:「どうしてここは、『FateBreaker』の世界とほどんど同じのか?」
「やぱこの質問。」ニコが笑う:「ここをあのゲームと似た異世界と思っていい。規則とスキルもあまり変わってない。」
「時間切りだ。任務発表。」ニコが適時的に話題を変える:「最初の任務を完成すれば、あの嬢ちゃんの頸椎を治す。二言はない。」
「分かった。」イシェルが歯を噛み:「言ってみよう。」
「悪くない。分かり速い奴が好きだ。聡明は大体いいことね。」ニコが艶かしく笑い:「実は簡単だ――この内乱に勝利する。」
話が終わったばかり、ニコが消えた。此奴は相変わらず怪しい。運が悪いなら、任務完成までは会えないかも。
イシェルは記憶の道を辿りながら情報を整理する。一つ大切なことは、今の時間点。
「Fate Breaker」はMMORPGであり、ゲームの歴史は現実の時間とともに流れる。ベテランプレイヤーとして、ゲーム大体歴史は覚えてる。この王都は、昔彼のチームが活躍の舞台だ。ここの地理構造、気候条件、肝心な政治家までゲームと同じだ。だがネットカフェのバイトのため、イシェルは他の国でアカウントを登録し、内乱の事件と擦れ違った。
「ちょっと不運な。あいにくこの時間なんで。」イシェルが呟く。もちろん、例えほかの国で居ても、吟遊詩人や商人みたいな存在から情報をもらうも可能だけど、今のイシェルはあまり思い出せない。
「一旦家に戻ろう。内乱までは時間がある。ゆっくり考えるときっと思い出せる。」思い出せると、勝利する方と手を組めば任務を完成できる。これは難しくない。しかもこの身体は剣の腕の凄い副団長。
「ただいま~って人居ないか?」
自宅外の門を開いたとき、家中はまだ真っ黒のまま。
「レイタスのやつ、又どっかへ行ったのか?」
イシェルがちょっと悩んで頭を掻いた。レイタスのやったことを思い出して、何か手掛かりないかを探ろうとする。
「モグラを学んで庭に穴を掘って疲れて中に熟睡したことがある。リスを追っかけて木に登ってから降りれないことがある。綺麗な『幻光蝶』に惑わせて森に道迷ったことがある。……考えても無駄ってことかよ!」
イシェルの頭が痛くなった。
「イーシェールー!!」
頭上から聞き慣れの呼び声が伝わってきた。
イシェルがふっと頭を揚げて、問題児さんが大きな風船に長いロープで空に吊られている。長い金髪とドレスの裾が風の中にひらひらする。幸いニッカーボッカーも穿いているので、見られてはいけないところはないんだ。
「何をやっている!早く降りろ!」
イシェルの怒鳴りに、レイタス唯のん気で答えた:
「ええ?でも降りる方法知らないよ~」
イシェルの顔が黒くなり:「ロープを外して降りてこい!俺が受け取ってやる!」
「ああ~はい~」
レスタが言うとおりにし、50メートル近くの空から落ちてくる。
一般人ならどうしようもないだろうが、イシェルが一般人では追いつけない速さで壁に沿って屋上まで上がってから、高く跳んでレイタスをキャッチして平穏に着地した。
「又魔法でふざけた?」
レイタスは身が縮んで答えた:
「ム…風船がね、面白いからね、魔法でちょっと大きくしちゃったんだ…….」
「俺がちょうど戻っていなかったらどうする!?このままユリウスから飛び出す気か!?」
レイタスがすぐに言った:
「大丈夫!イシェルは何時もレイタスを助けに来るから!」
「はいはい。」
イシェルがため息をついて、レイタスを抱いて屋上から降りた。
「でねでね、イシェル聞いて~今日は火球の魔法できちゃったよ!もっとすごい魔法教えて~」
レイタスを下ろしたら、彼女はすぐに元気よくぴょンぴょンと自慢話を始める。
イシェルもびっくりした。「成功したのか?」そしてすぐに眉を顰めて、「いや、一時の運だけだろう?それに魔法を学ぶなんざ、時間を費やすだけさ。」
「でも私はイシェルを守りたい!」レイタスがちょっと拗ねて答えた。
「冥王の府はもう消えた。お前が戦う必要はない。今は平和の時代だ。」
「ふん!けっち!」レイタスがイシェルを睨んでから、屋敷に入った。
「は~やれやれだぜ。どうすれゃ諦めてくれるかな。」
イシェルがもう一回ため息をついて、屋敷に入ろうとしたら、庭の正門にある騎士が立っていることを気付いた。その鎧の肩に新月の印がある。
「リシアか?」
ルイス直配下の新月軍の副団長リシア、まさに軍務卿が右腕として頼りにしている人物だ。
「イシェル様。」彼女はイシェルに一礼して、「ルイス様が明日のご予定に何か変更ございますでしょうかと。」
明日は土曜、何時もならイシェルがルイスの家に剣術の実戦訓練をしてあげる。後者にとっては練磨だが、イシェルにとっては唯退屈凌ぎだ。
しかし今日のことで、この行為は他人に別の意味で捉われそう。
「通常通りだよ。訓練以外のことは興味ないだがね。」