表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

6.転生した後

「又この夢。」谷崎が目覚めたら、窓の外は見慣れた高層ビルではなく、代わりに一片の中世の建物が並んでいるのだ。よく聞けば馬車の通りかかる声も聞こえる。


 谷崎が頭を振った:「いや、夢ではない。」


 あの時、あの戦いで、彼は確かに負けた。何もかも終わったと思っていたが、ニコという名の少女が不思議に現れて、時間を凍結した。


 ――君はずっと不遇に遭っていたと分かる。昔も、今もね。

 欠片になった記憶が浮かぶ、彼はあの時のことを思い出そうとして、事件の全貌を把握してほしい。

 ――いったでしょ。あたしに協力して、そうすれば君は運命の権柄けんぺいを掴んで、目の前の全てを変えるチャンスが手に入れる。

 少女の言葉が耳に響き、その声に何か伝えきれない魔力が潜んでいて、彼の心の深いところまで届く。

 ――ただし、それなりのリスクもある。この任務に、君は全身全霊を持って全てを掛けなければ生き残れない。もし死んだら二度と戻れないのだ。


 谷崎がぼうっと座って、あまりにも非現実的な言葉が少女の唇から出てくる。荒誕だが目の前に発生している奇妙な光景に、彼は少女の言葉を信じた。

 脳が燃えるように、真っ白になった。少女は確かに彼の願望を実現できる力があるようだ。恋ちゃんの病気を治し、電子競技の戦場に帰らせ、過去に戻るさえもできそうだ。全てが、命を掛けてから手に入る。

 しかし彼にとってこれは大したことはない。

 この戦いに負けて、彼はもう居場所がない、恋ちゃんの手術代も儲からない。待つのは恐らく奴隷のような未来。

 それはごめんだ!


 そうなるより、全てを掛けて抗ったほうがましだ。この世に神が居て、運命もあれば、彼はその神のところに這い上がって、ポケットから彼の運命のカードを見つけ出して、粉々にしてやる。

 ――命賭けの博打か。

 谷崎の喉が動いて、熱意が体の中から湧いてくる。

 ――ちょうどだ。

 緋色の少女が彼を見下ろして、満足に笑う。

 ――いい勢いだね。その目付きが気に入った。

 彼女がいきなり詠唱を唱えて、虚ろから光る点が現れた。

 ――準備はいいかい?始まるよ~。

 呪文が響く瞬間から、彼の記憶は途絶えた。

 谷崎が額を押して、自分が後悔したかどうかは知らない。


 人はみんな遺憾と後悔がある。過去に戻りたい時もある。ミスを犯すし、全ての物事に対して完全な自分で居られない。救いを求めてくる手も掴めない無力の自分は、ただ体半分が泥沼に陥るまま、ぼうっと何もなかったところを見つめる。自分のためではなくても、恋ちゃんのために頑張りたい。あの緋色の少女が本当にそんな能力があるなら。


「あれから9ヶ月。ニコは未だ姿が表していない。」


 谷崎が冷静して、ニコからの任務を考えるつもりだが。今でも任務の内容がわからないのが問題だ。

 ――まずは生き残ってね、そして時期が来たら任務を教えるから。

 ニコが残った言葉はそれだけ。そして9ヶ月の間は全然出たことはない。もちろん、谷崎がニコの言うことをすぐに理解した――この体は死亡寸前だった。谷崎の魂が移入してからようやなんとか凌いでだんだん回復していく。


 谷崎が鏡の中の自分を見て、現実の自分と同じぐらいの怠さだ。髪が黒くて、常に曇っている浅い墨色の瞳に、柔らかくて威厳がない面。強いて言えば顔はそこそこ悪くないが、むしろ眉目秀麗といってもいい。しかし雰囲気は現実の自分と同じ、友人からの評価では「顔が悪くなくても、いつも元気がないとモテないぞ」って。


「プロローグにしては、些か長すぎるぞ。」突然中世に近いところに放置されて、完全に違う身分で暮らすのは大変だが、慣れるために用意した時間にしては長すぎる。


「あたしの親切な配慮に感謝すべきだ。」緋色の少女が空中に浮かんで、不満そうに谷崎を見下ろす。

 谷崎がびっくりしてから、文句を言った。「人を放置するだけに何か親切だ。せめて任務を教えてからじゃねーかよ。」

「君がこの世界を慣れるにための時間だよ。」少女が笑った。「それに任務は今向かってくるから、あせるなって。」

 ドアを叩く声が伝えてくる。


「男爵閣下!姫様から王宮の後庭で演武観賞のお誘いに参りました!」銀色の鎧を着ている兵士が礼儀正しく彼に一礼した。鎧の胸に長くて繊細な羽根の紋様があるので、彼が王家直属の精鋭部隊、鉄騎隊(てっきたい)の一員ということだ。


「分かった、少々待ってくれ。」谷崎が自分の正装を着て、佩剣を腰に着けて、出発の準備を整った。


 イシェル男爵、これが今の彼の身分、あるいはこの体の元の主だった。新月軍の元副団長、なんかだるそうな人だ。


「つまりこれが任務の始め、ってことか。」イシェルが頭を揚げて、少女に聞く。


 ニコがニヤニヤして言った:「そう、君の任務が、すぐ始めるわよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ