表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

4.決別の谷

「よし!やっば爽快(そうかい)な人だな。」久峰が大笑いする。用心棒が黒い箱を開いて、中には万円札の現金が詰まっている。「君が勝ったらこの箱を持っていけ。」


 谷崎が箱を一瞥(いちべつ)して、ゆっくりと隣の席に腰を掛けた。神田もすぐに彼の向こうの席に座った。慣れたゲームをログインして、二人は同時に剣極者のキャラを選んだ。

 何年も『Fate Breaker』をやってきて、谷崎があらゆる職業(しょくぎょう)熟知しているし、全部うまく使える。そのためいろんなアカウントを持っている。しかし神田を相手にするなら、一流レベルだけでは足りない。なんのことでもいいが、少しでも優勢を占めたい。


 競技(きょうぎ)決闘(けっとう)のシステムが試合の地図を抽選し始めた。画面に色んな地図がランダムに出し続けて、何秒後にそこに留まったやつがあたりになるっていう演出効果になっているが、実際はボタンを押した瞬間にシステムの計算によってランダム抽選の結果が既に出ている。


 それを知っていてもプレイヤー達がいつもこの演出効果によって緊張する。谷崎も思わずに唾液を飲んだ。


「『決別の谷』、今日出たばかりの伝説地図(でんせつちず)だ。」イヤホンから神田の声が伝わってくる。「ちょうど俺らに似合っているかもな。」


『Fate Breaker』の決闘地図はプレイーヤー達から選ぶのもいいが、伝説地図はランダムにするしか出ない。伝説地図は普通の地図と違って、普通の地図はただゲーム内の元有る地図の一部を取り出しただけだが、伝説地図はゲーム内の伝説や神話等の物語を背景にするので、ゲーム内に実在の地図の一部ではない。現実に例えるなら、普通のボクシングは普通のどこかの試合場でやるが、伝説になると伝説の古代ローマの闘技場(とうぎじょう)とか、神話のユグドラシルの虹橋の上にとかにボクシングをやることになる。


 抽選に出る確率もかなり低いので、多くのプレイーヤーが一度も出会ったことはない。ゲームの運営側の話によると、伝説地図はどれも特別な仕組みがある。この地図は今日出たばかりなので、神田も初めてのはずだ。


決別(けつべつ)の谷」。


 聞き覚えがある。『Fate Breaker』の伝説に、神族の国アルラントと魔族の国カラトルが接するところ。神族のある偉大なる戦士がここで親友と別れて、魔族の国に向けたという話から由来した名前のようだ。現実世界と同じ、伝説は常に現実を参照して作ったもの。この地図の今のゲーム内の対応する場所は恐らく「(やみ)(はら)の川谷」という場所で、流れが激しい川――(せん)神川(しんがわ)が通っている。


 まもなく二人のキャラがある暗くて深い谷上方の大橋の両端に転送された。


「3」画面の真ん中にカウントダウンが始まる。


 谷崎が目を細めて、地図の全貌をできるだけ観察する。どうやら「(やみ)(はら)川谷(かわたに)」とは確かに相違うところがある。まずは谷自体から言えば、「暗原の川谷」の方が深くて長い。そしてあの流れの激しい川――戦神川もない。


「2」谷崎の手が握り、頭の中に無数のやり合いのパタンーがきらめいている。


「1」。


「0」!


 二人が同時に突進した。(ほこさき)と鋒が試合が開始してからすぐにぶつかりあって、花火を散らした。「圓月(えんげつ)昇竜斬(しょうりゅうざん)」に「圓月昇竜斬」は相殺するだけだ。


 二人が反作用でお互い弾けたら、谷崎が着地してからすぐに橋の鉄索(てっさく)の方へ跳んだが、神田の剣先は彼の肩を掠った。


 神田の戦い振りは相変わらず蛮勇(ばんゆう)だ。昔チームを組んでいた時も、神田はよく自分へのダメージを無視してあえて相手を先に倒す真似をしていた。こういう恐れずにやり合う気概は彼をチームの主な戦力にして、谷崎も彼との戦いを悩んでいた。


 谷崎が鉄索の上に遊撃戦(ゆうげきせん)を始めた。正面から神田とぶつかるのは避けるべきだ。あれは神田がより得意の分野で、勝てる気はない。神田はかつて、接近戦でキャラの速度が自分を上回る刺客のプロプレイヤーをあえて討ち取った。無限に連打することが看板の刺客を正面から、操作で控えて勝つ。勝った時は既にHPもMPも殆ど無くなった。


 神田も谷崎のやり方をよく知っていて、余計の動きをしない。ただそのまま守勢をとって、谷崎からの攻撃を凌ぐ。


 戦闘はすぐに詰まっている。二人がお互いを知りすぎたから、破局の策は中々出ない。


「フン。」神田が剣を収めて、居合(いあい)の構えを取った。

「ちぇ。」谷崎もすぐ反応して、力を少し蓄えてから半月型の剣気を放った。


風漩斬(ふうせんざん)」!

流風斬(りゅうふうざん)」!


 神田の剣気が旋風のように巻いてから拡散するが、やはり谷崎の剣気に引き裂いて突破した。神田が隣に跳んでよける。

 谷崎は追撃して、まだ数回剣気を放ったが、すぐに異様を感じた。

 そう、先まで神田は橋の構造を壊し続けて、そして橋は今ようやく崩して、二人が落ちていく。


 神田は薄い傷を負う代償を払って、谷崎に近づいた。


「本当に賢いやつだ。」こんあ環境になったら、谷崎も逃げ回る空間がなくなり、神田と接近戦をするしかない。そうなると勝てるはずがないと、谷崎はよく分かる。


 二人の手が剣を握り、繊細な操作を続けたいる。


 残月龍吟(ざんげつりゅうぎん)断空(だんくう)

 二人の剣が極限まで動いて、相手の弱点へ刺していく。


 操作の可能性をアピールする『Fate Breaker』では実際、全てのスキルの動きがプレイヤーに調整する余地を残されている。だから本当のプロが戦うと、二人が同時に同じスキルを使っても、相手の次の一撃はどこからかかってくるのは覚えるではなく、その場で観察し判断するのだ。そして最後は本当に相手の動きを見破るほうが勝つ。


 実際にこういう操作はとても難しくて、ちょっとした不注意でスキルを中断させたら、罰としての「硬直(こうちょく)」が発生し動けなくなる。そして今この二人が使っているスキルは、ほぼ設計者でも予想していなかった動きでやり合っている。


 二人とも相手の動きを予測して、その勝策となる一手を打とうとする。


 しかしそうなると、二人が同時に相手が今自分の動き予測したら、どんな対策を取るのかもわかる。それを元にしてもう一歩先の手を打つべきだと思い込んで、きりがなくなる。


 谷崎がだんだん劣勢になった。軽い傷が負われ続けて、HPが少しずつ削られる。原因は他ではなく、神田のほうが反応がもっと早いのだ。二人ども天賦があるが、あえて言えば神田のほうが生まれから「神域」に達するものに近い。彼は反射的に一番正しい動きを取ることができる。何も考えなく、思考も経験も要らない、ただ反応だけで戦いの勝利を手に入れる。彼にとっての戦いは、(こう)(とり)にとっての気流のようだ。


 この時、谷崎が口元をあげた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ