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25.君の因果を斬るために

「そうだな。こんなことに最初からかかわりたくないが、結局巻き込まれた。」

 イシェルの目には戦意が高ぶっているが、心は湖のように平然としている。冥王の府の戦いに戻れたようだ。


 あの時が仲間だった人が、今は剣を持って対峙している。


「バレーリアの月だ。湖の妖精さんからもらった因果の剣だな。」

「あの時は、お前の身に纏う因果を切り分かつためにこの剣を手に入れたが、結局できなかった。」イシェルが嘆いた。

「じゃあせめて最後まで戦いに付き合ってくれ。死亡も一種の因果切断としたら。」


 イシェルが剣を少し後ろへ引き、攻撃の姿勢を取った。


 周囲の新月軍がルイスの後ろに集結してくるが、ルイスが手を振って言う:

「お前らがここにいても無駄だ。これは万軍の戦が、参加者は俺ら二人だけだ。」

 ルイスが剣を握って、普段と違って、天道鏡心流正統の構えをとった。黒い凶気の嵐が二人の体から放たれる。


「さあ、イシェル。俺がお前にの借り、お前が俺からの借り、とっくに数えきれない。だが今は君の選んだ以上、すべてをここでーー

 終わらせよう!」


 その瞬間、二人の姿が消えた。

 イシェルが閃電のようにまっ正面からルイスに向かって剣を刺していく。

 しかしルイスの周りの凶気が命を持っているように、イシェルへ絡んでいく。

 少しても触られたら、大変なことになる。


 天道鏡心流・風乱れ!


 凛とした剣風が寄せてくる黒い闘気を吹き払って、イシェルが無事に突破したが、ルイスの姿を見失った。

 イシェルが突然横へ飛び出して、ルイスの空からの一撃を避けた。御影石板の床が持ち堪えなくて砕かれた。

 イシェルがすぐに反撃して、猛獣のようにルイスへ襲う。

 ルイスが避けるのに間に合わないから、いっそう剣をぶつかり合うことにした。二人が何回もやり合って、衝撃波が津波のように周囲へ拡散する。


「これって、人間の戦いなの……」ペトラが防御の姿勢にして、必死にこの嵐の中にバランスを維持する。


「ある意味では、違うのだとも。」リシアも感心した。そして部下に指示を出して、守りの陣形をした。


「フン!」

「っち!」


 二人がお互いを弾けて、距離を取ってから又ぶつかり合う。

 天道鏡心流は東方においても歴史がある古剣術で、修行者の心境を鏡のように磨き上げて、相手の攻撃読み切って、後の先を取るのだ。

 ルイスもイシェルも、天道鏡心流の皆伝免許を取って、一代の剣聖に恥じない。

 バレーリアの月とインフェルドこの二本の魔剣の力を加えて、二人の戦場はまさに危機をはらむ修羅場となった。

 二人とも相手の動きを予測して、その勝策となる一手を打とうとする。

 しかしそうなると、二人が同時に相手が今自分の動き予測したら、どんな対策を取るのかもわかる。それを元にしてもう一歩先の手を打つべきだと思い込んで、きりがなくなる。


「くっそ、時間かかりすぎ。」


 イシェルが不満そうに舌打ちして、また距離を取って、目を細めた。

 ルイスが本能的に警戒して、守勢を取ったが、

 それても、遅い。

 次の瞬間に、イシェルがルイスのすぐ前に近づいて、剣を刺してくる。

「!」ルイスがぎりぎりに反応して一撃を躱した。ただ髪の毛の数本が切られただけ。

 滑歩!

 ルイスがこれがあの日、イシェルが緋に使った技だと理解したが、実際に体験したら創造以上恐ろしいと思った。

 

それが幕開きだけだ。

 剣を引きかえって仕切りなおすより、イシェルが左足で地面を蹴って、ルイスの剣を避けて、肩でぶち込んでいく。

 鉄山の当たり!

 これが八極拳だと気づいても、避ける余地がなく、左手で受け止めるつもりだった。

「ポン」という音が出して、ルイスが強い衝撃に飛ばされた。

 イシェルがとどめを刺すつもりで、ルイスのほうへ剣を振って剣風を放った。


「ルイス様!」


 遠くに見ているリシアが心配そうに叫んだ――攻撃を受けたルイスが即時反応しなければ、この剣風に切られてしまう。

 リシアの呼び声に答えるように、ルイスが間一髪に体勢を調整して剣風を避けた。そして近づいてくるイシェルに剣風を放って時間を稼ぐ。

 イシェルがまっすぐにルイスに向かって突き進んだが、やむを得ず剣風を避けてから切りかかっていく。ルイスがまだしっかりと体のバランスを取っていないが、あえて剣で受け止めようとした。

 二人の間に又凄まじい衝撃波が爆発して、ルイスがその反作用力を利用して距離を取った。


「さすがにイシェル。久々に生と死の境目を実感した。」


 体勢を調整して仕切り直したルイスが感慨する。

 イシェルが回りの状況を確認し、鉄騎隊の増援がやってきているが、新月軍の増援のほうが早めに到着しそうだ。

「このままではやばいな。」主にペトラのことが心配する。彼女が今リシアに足止められて、早めに鉄騎隊と合流しないと身の安全は保障されない。

 ルイスを勝った後に、逃げ切る自信がない。

 それどころか、はっきりに言ってイシェルは自分が勝てる気はしない。

 何せ、剣の修行を始めてからルイスに勝ったことはない。

 ルイスは何でもうまくできていた。

 それに比べて、彼は剣を一筋に研鑽してもルイスを追い越さない。

「だがしかし、勝てないことは戦わないことに意味しない。」

 人には生と死よりも大事なものがなければ、生きる意味がない。

 それがイシェルがここに立つ理由だ。

 やってみよう。


 イシェルがルイスを見つめて、彼に目に世界の様子が段々変わった。

 淡い緑色の糸が物事を繋がっている。

 それが因と果の絆、それで織り出す網が一番賢いひとでもその全貌をはっきりに見えない。

 恐らくこれこそが――


 運命ってやつだ。


 バレーリアの月が横に切って、剣の嵐が戦場に渡る。

 二人が同時に相手に向かって激突し、刃物みたいに鋭くなる気流をほぼ無視した。

 剣がぶつかったら、イシェルの方がすぐに撤回して後ろへ引いた。

 ルイスがまゆを顰めて、それでも追撃した。

 イシェルの口元を揚げて微笑んだ。


「!」


 隣の建物が崩して、ちょうど二人の間に転んだ。

 因果を導くこそが、バレーリアの月の本当の力だ。

 誰が繰り返して砂の山を積み上げたら、砂の山をある程度に積んだら最後はどの砂でも崩しを呼び起こす可能性がある。しかし一体だの砂なのかは予測できない。

 それは骰子の上の点数は何時かが絶対に六になると知っていても、実際にいつかはわからない。

 そしてバレーリアの月が欲しがる結果の発生率を100%に無限に近くすることができる。例えば次に出る骰子の点数を絶対6にするとか。

 元々不確定の事件の結果をある程度操ることができる。


「勝負だ!ルイス!」


 イシェルが稲妻のような動きで崩れた建物の廃墟から飛び出して、閃光のようにルイスに斬る。

 ルイスのほうが突然の崩れにびっくりさせて、反応が遅くなった――

 バレーリアの月が慌ててぶつかってくるインフェルドを払って彼の胸に刺さった!

 というように見えたが、イシェルがすぐにやばいと思って、身を転じて攻撃を受け止めようとした。

 ルイスがイシェルの後ろに現れて、襲ってきたのだ。

 そしてインフェルドは攻撃のルートを変えて、狡猾にイシェルの右腕に傷を残した。

「くそ!」


「凶気分身か……貪欲の霊の力が又強くなったな。」


 イシェルが傷を抑えて言う。

「俺の心には虚無と憎怨しか残っていないからな。」

 ルイスが他人ごとみたいに冷淡に言う。

 貪欲の霊ユエンは、ひとの心を食物とする。とっくにマイナスの感情が好きだ。

 虚無と憎怨を餌食にすればするほど、彼の成長が早くなる。

「止めだ、イシェルよ。」

 ルイスが剣を鞘に収めて、左手が鞘を固定し、右手が柄を握る。

 あれはイシェルが最も見慣れた技の構えだ。

 天道鏡心流・居合・淵龍。

 止められぬ剣。

「そうだな。もうおしまいだ。」

 イシェルが無理矢理にルイスと同じ構えを取った。しかし今の彼は腕が負傷して、勝負は剣が出す前についている。


「イシェル!」ぺトラが必死に彼のところに向かおうとするが、リシアに止められた。


 刹那の間に、何もかも遠く離れていくようだ。

 ルイス、ぺトラ、新月軍、鉄騎隊、ストライア王家、永生の魔女……時間が尽きたように、全部曖昧になっている。

 そうだな、全てが……

「天道鏡心流・居合――」

 終わる。

「『淵龍!』」


 二体の黒龍が飛んでいて、暗闇の戦場を引き裂く。

 全ての余韻が終わると、イシェルが倒れいる。胸から血が出ている。

「しぶといな、イシェル。」

 ルイスが振り返って、死人を見ているように、剣を引きずってイシェルに向かう。腕から流している血が、それに沿って地面に赤い線を引いた。

「さらばだ、わが友よ。」

 剣を振って――


「ダメ!!」


 絶望に叫んだ声が戦場を渡って、彼の耳に届く。

 それとともに、ルイスが凄まじい衝撃を受けて飛ばされた。

 そこにある少女が立っている。

 彼女の体から、魔王と思われる魔力が溢れている。

「イシェルっはっ……私がっ守る……」

 少女の低い声と逆に、彼女から溢れ出す魔力が津波のように怒涛を挟んでルイスへ襲いかかる!

 立ち直ったルイスが慌てて身の前に凶気で盾を作った。悪霊から生み出した凶気が盾の形に実体化したら、盾の表に悪魔が絵が現れた。

 この盾は城の壁を壊すハーマーを相手にしても動かぬはずだが、少女の蒼い魔力の波の中には激しく揺られて、肉眼で罅が生えてるところが増えてるのが分かる。


「く……こんなに厄介とは……」ルイスの口元から黒い血が出て、剣を握る手のひらから痛みを感じる。


 黒い盾が見る見るうちに持たなくなる。

 やがて、彼を守る盾が砕けれた。

「フン!」飛ばされた彼が悶え声を出した。

「閣下!」今度はリシアが新月軍を引いてルイスを守ろうとするが、

 少女は手を一振りして、魔力の壁を作って彼らを払った。


「何も学んだことないのに……ここまでやれるとは……やはりとんでもない化物だ……」

 ルイスが傷を耐えて又立直る:「やはり君も活かせるには行けない。」


 黒い凶気がインフェルドから蔓延して、ルイスの全身を纏った。

 元々白人としての白い肌は夜色のような黒色に染まり、今の彼は夜に潜む魔物にそっくりだ。

 そして彼は予兆もなく、ひとが追いかけない速度でレイタスへ襲っていく。

「死ね!」少女が又魔力の衝撃波を作って、鬼神のような力で彼をぶっ飛ばした。

「しねしねしねしねしねしね、イシェルを傷ついたものは全部死ね!!!」

 恐ろしい力を放て続けて、ルイスを容赦なく叩く。

 大地が砕かれ、建物が解体され、辺は大型の戦争に蹂躙されたようだ。

「しね……」レイタスが虚ろに言葉と破壊を繰り返して、完全に狂っている。

「ダメだ……レイタス……」

 後ろからイシェルが彼女の肩を無力に掴んで、彼女の動きを止めた。

「お前が……悪魔になるのは見たくない。」

 少女が涙を溢れ出して、振り返って彼を抱きしめた。

 イシェルが彼女を抱えているまま気を失った。


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