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21.思い人

 でもレイタスは一瞬に先の不満を忘れたようにわいわいと言った。


「イシェル早く来て、あたし、これ、これとこれが欲しい。」

 イシェルがついてきた時、レイタスはすでに口に魚のつくねをして、手に豆腐の串を取って、目が隣の屋台の仮面を見てキラキラしている。


「あのさ、食べものや遊びだけに興味を持っていいのか。」

 イシェルはレイタスの頭を撫でながら彼女の将来に心配している。

 とはいえ、イシェルは素直に仮面、魚のつくねと豆腐を買った。正確に言えば後者は返済なのだ。


「この仮面なんか結構モテるじゃない。」

 来る途中もたくさん見た。


「それは当然だ。嬢ちゃんもなかなか目が高いね。これは当時エミリー王妃とレックト王が出会う時にかぶっている仮面だね。」

 背が高くて痩せた女店主が貧弱な胸を張って言った。


 そういえば、レックトとエミリーが初対面の場所は秘密の仮面舞会だった。当時のエミリーはまた評判のいい「商品」だった。

 今この典故は若者たちが仮面をかぶって踊る事由になった。

 五月祭の時、若者たちは仮面をかぶって町を回しって、気に入る人にあったら、自分の仮面を外す。

 もし二人が同時に仮面を外すなら、お互いに恋人になれるとの話だ。


「あ、リアンナじゃない。いつの間にもうリリアの店についたのか。」

 イシェルは目の前の少女の仮面を外して、中身の清純の顔をあらわせた。


「イシェルのバカもの。本当に乙女心がわからないのよね。好きな人を待っているのに。」

 ぺったんこのリアンナが不満そうに言った。


「はい、はい、はい、乙女心が分からないのだ。どうせ食べられないし。」

 イシェルは平然と言った。


「だからずっと彼女ができないのだ。」

 リアンナはすぐに言葉で攻撃する。


「よ、イシェルのところのお姫さんじゃない。」

 やっと来たルイスはイシェルを修羅場から助けた。


「あぁ、ルイス兄さんだ。それにリシアお姉ちゃん。」

 レイタスはとても嬉しそうに二人に挨拶をした。


「あぁ、こんな優しい声を聞こえることがなかったなぁ。なにこれ、この差別待遇が。」

 イシェルは頭を抱えて泣きたい気持ちになった。


「はは。『面倒くさっ』などの口癖をやめれば、君だってもてるぞ。」


「ふん、余計な心配だ。」

 イシェルは不満に突っ込んで、二人のことをじろじろ見ている。


「今日はどうしたのだ、お二人とも。」

 ルイスは浅い色のチェックシャツと灰色のズボンを着ていて、カジュアルな格好をしている。リシアは珍しくレース付きのスカートと黒いニーソックスを着ていて、腿の長さはちょうどいいところに見える。

 どう見てもカップルそっくりだ。


「まぁ、ただの散策で、シリアとはたまたま出会っただけだ。」


「五月祭に遊びに来て何が悪い!」

 リシアの顔は赤くなった。


「はいはい、それではどうぞご自由に。俺たちはこれで失礼するよ。」


「うん、俺たちは五月広場に行くのだ、逆方向みたいね。」


「それじゃあね。」

 ルイスは手を振ってリシアと一緒に去った。


「ルイスの奴もこんなことをするなんて、彼らしくないな。感情に怪しい程鈍いのに。」


「お前が言う資格はあるの?」

 レイタスはあかんべえにしながら言った。


「ちぃ、うるさい。」

 イシェルが回すと、一枚の花びらを発見した。


千日葵(せんにちあおい)のか。ルイスが残ったのか。」

 千日葵は長命な花で、花期も長いので、「永遠」という花言葉を得たのだ。

 花のことに何も知らないイシェルはこんなことを知ったのは、ルイスとペトラと一緒に授業をさぼるときに行った秘密基地に沢山の浅紫色の千日葵が咲いているのだから。ペトラはわざわざ百科事典を調べ、千日葵の花言葉を二人に教えたのだ。


「どんなことがあっても、私はここにいるよ。」

 千日葵の言葉はこう理解してもよいのが、ルイスは明らかにこんな意思ではない。


「永遠」というのは「変わらない」のことだ。イシェルが今の立場を保って欲しいのだろう。


「つまり、俺がペトラの仲間になったら、容赦なく殺すか。こいつも余計な真似をしたな。」

 たぶん最近ペトラとの付き合いが気づかれたのだ。

 だがこんなことを言えなくても、三人ともはわかるはずだ。


 ルイスはイシェルという友達を失いたくないのだろう。この友情は戦場でルイスを止められないのに。

 ルイスにとっては、友情は大切なものかもしれないが、今では一番重要なのは自分の野心だ。

 そのため、ルイスはすべてを捨てられる。


「リシアも大変だね。」

 彼が頭を揚げて、心からニコの名前を呼んだが、特に反応がない。

 ニコがその気になればどんな場合でも、時間を凍結して現れる。しかし今は彼の召喚に答えてくれない。


「今になっても彼女の反応からヒントを求めたいって、俺も随分となさけないな。」イシェルが悩んでいる自分を嗤った。

 決断は今となっても付けない。

 ニコからの任務はこの内戦に勝利を取るだけで、特に制限もない。しかし彼の推測によると、ニコの本当の要求は多分歴史を違う方向へ導くのだ。


 しかしそうなると、何故最初から彼にペトラを助けて彼女に勝利をと直接命じないのか?もしルイスの方へ加勢して勝利を取ればそれも任務達成に認定されるのか?イシェルが迷っている。

 もう一方では、彼は未だに迷ってる。ペトラの方を選ぶのが正解っていいのか?自分は何かを迷っている、何かを怯えているようだ。


 ペトラへの信頼や現実的に勝利の可能性、などが足りないのか?守るべきものを守れない恐れなのか?のんびりしすぎて、自分のことをちゃんと見る勇気がなくなったのか?

 イシェルが分からない。

 頭がぼんやりしていて、彼がまるでネットカフェでバイトしていた日々に戻った気分だ。前のチームが買収されて、彼もワールドカップで表現がよくなかったので冷遇された。それが耐えられないので違約金を払ってチームから出るつもりだが、手に持つお金が足りないので、一年間公式戦に出ないことを条件として実質追い出された。


 それから一年間は何もやっていない。毎日ゲームを遊んで、稼いだお金を博打にして、ネットカフェに出勤して。こう言う生活をコピーアンドペーストする毎日を繰り返す。

 しかし、本当は、ほかにも選択肢があった。

 ほかにやれることも一杯あった。「戦場」に戻れるために。彼があえてなにもしなかった。自己嫌悪に陥るほど、一歩も進めなかった。緋色の少女ニコが黒闇を引き裂いて、彼をここまで連れてこなかったら、そのまま暮らしていくのだろう。


 今はもう一度彼に試練が与えられたのだ。今は自分以外誰も頼れる人がないんだ。

 イシェルは瞼を閉じて独り言を言った。


「イシェル。」

 レイタスの呼び声に、彼は現実に戻った。


「イシェルはなんでペトラと付き合わないの?あの時一緒に剣術を学ぶ三人は結局どうなったの?」


「そう聞いてくれると思ったよ。」

 イシェルはため息をついた。


「ある事件のため、俺は天極剣道場に行かなくなった。俺たちは一緒に剣術を学ぶこともそれからなくなった。その後、レイタスも知ったとおりに、俺は新月軍団の副将に、ルイスは将軍になって、魔物討伐のために冥王の府に行った。なんでペトラと付き合わないといえば、それはたぶん――


 彼女はルイスのことが好きだから。」


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