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12.過去の誓い

 又自宅に戻ったら、レイタスが起きていた。

 部屋の明かりをつけて、黄色の灯火の下に足をふらふらしながらイシェルを待っている。

 レイタスが普段と違って、今はとても安静で、まるで別人のようだ。


「レイタス。」イシェルが軽く呼んだ。


「あ!イシェル!お帰り~」レイタスが階段から一気に飛び降りて、イシェルの懐に突きこんだ。


「ええ、ただいま。待ってたんた。」イシェルが彼女の頭を撫でながら、少し笑った。


「お姫様のことで?」レイタスがちょっと不安に聞いた。


「どこで聞いた?」


「ううん、当ててみた。ルイス兄さんとお姫様の争いがもっと激しくなって、お姫様がイシェルの協力ほしいでしょう?」

 ばっちりだ。多分今日ルイスの屋敷に行ったとき、使い人や警備に聞いた話だろう。


 イシェルが眉を顰めて言う:「大したことじゃないから、心配要らない。」


「ほんとう?」レイタスが疑う目でイシェルを見つめた。


「もちろん。このイシェルがいる限り、レイタスを傷つけるものはいないよ。」


「なら魔法を教えて、レイタスが魔法を勉強してイシェルを守るの。」レイタスが小さな拳を握って、やる気満々だ。


「それは諦めよう、火球もうまく使えないくせに。戦いは俺に任せろ。」


「レイタスを舐めないで、学んだらきっとすっごくなるわよ!」レイタスが口を「へ」字にして、不満そうにイシェルを見てる。


「はいはい。後は魔女の身分を人にばらさないこと、ユリウスの人が魔女のことすきじゃないからな。」レイタスはその言葉に返事しないまま、イシェルの手を引いて部屋に入った。


「イシェルとお姫様はずっと昔から知り合った、でしょ?」レイタスがベッドに転んで、布団に潜る。


 イシェルがベッドの隣の椅子に座って、子供をあやすように話を続ける:

「それはルイスから聞いたかい?」


 レイタスが頷いた。

 イシェルがちょっと嘆いて言う:「まあね。剣も握れない年で知り合った。」


「へえ~それはとても小さいときからじゃない?」


「そうさ。青臭いガキともで、毎日どうやって授業をサボるのかを考えてた。そしてサボったらよくコリン大教会にいく。オパキンス大司教がジジを騙してくれるから。そして教会に鬼ごっことかを遊ぶよ。

 そういえば、ペトラが陵園の方に隠れて、夜になるまで見つからなかったことがあったな。夜になってあいつが怯えて泣き出したから見つけた。」


「お姫様が何に嚇かされたの?あそこにおばけさんがいるの?」レイタスが慌てて布団で顔を半分かくして、不安そうに聞いた。


「それも違う。墓には執念深い人があったのだ。死後も魂が地に縛られて、ペトラをびっくりさせた。」


「執念深いって?」


「何かにあるいは誰かに未練が多いことだ。」

 レイタスが分かったような分かっていないような顔をして:「じゃあ、昔からお姫様とイシェルは仲がよかったの?」


「それは仲がいいのかな、よく喧嘩もしてた……まあ、あいつが誰かにいじめたら許さないほど怒るだな。」


「それ!仲いいでしょう……」レイタスがイシェルを見つめて、又不満そうになった。


「そうか?あいつもそう思ってくれるならな。」


「じゃあ~イシェルがお姫様のこと、すき?」

 急の恋話にイシェルがちょっと乱した:「ええ?……それは面倒だな、でも嫌いじゃないかな。」


「フン!」レイタスの口が又「へ」になって、背中を見せてあげた。


「……怒ってる?なんで?」


「ほっといて!」

「ハ……まあ、いいっか。早く眠れよ。」イシェルが無力に立ちあがって、部屋から出ようとした。


「……イシェル。」部屋から出る寸前、レイタスの声が後ろから伝えてきた。

 イシェルが足を止めて、お休みの挨拶だろうかと思って:「ん?」


「あんなに仲がよかったなら、何でイシェルが今お姫様を助けてあげないの?」

 まるで凄まじいショックを受けたように、イシェルがぼうっと振りかえった。返す言葉がなくて、ただ窓外の月を見ていた。

 月明かりはコリン大教会から帰るあの日と変わらないくらい綺麗だった。

 ――泣かないで、おばけなんかたいしたことないぜ。悪魔が来ても切り伏せてやるよ。

 イシェルの剣術はとっくにばけものや悪魔などを恐れる必要はないのに、今はペトラの傍に居てあげない。


 窓の外に道が暗闇まで続く、まるで時間を遡る道に見えた。あの暗闇を乗り越えば、あの夜に泣いている少女とかっこつけようとする少年がいるようだ。

 あれもイシェルの二度と戻れない過去の一つ。

 そう、何故今はペトラの傍に居てあげないのだろう?

 彼女の相手がルイスだから?彼女が間もなく来る内戦に勝つ可能性が低いから?それとも唯、今はもうコリン大教会から帰るあの夜ではなくなったから?


 だから本気だった言葉を、誰も覚えていなくなった?

 このままルイスが反旗を揚げて、勝利をとったら、自分は後悔するのか?

 そうなったら、ペトラはどうなる?処刑されるのだろう。

 それがルイスだから。

 そして、イシェルが思い出した。


「歴史上」、この内戦を勝ったのはーー

 ルイスだった。


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