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このあとめちゃくちゃ

「……ねぇ? 私達はいつ結婚する?」


「あ? 母体から出直してこい」


『我、こんなキレのある振り方初めて見た』


 魔王(inテディベア)が「そこまで言う?」みたいな目で俺のことを見てるけど突っ込むべきはそこじゃない。


「つーか、なんで当たり前のようにいるんだよ」


「来ちゃった☆」


「帰れ。ロリになって出直してこい」


『意味が分からん』


 意味が分からんのは俺じゃなくてこのストーカーの方なんだよなぁ。

 なんで当たり前みたいに魔王城にいるのか。


「また門番殺したりしてないだろうな?」


「大丈夫。今日は【煉獄】にしておいたから」


「……」


 さらりと告げられた衝撃の事実。

 何が大丈夫なのか全然分かんないし俺の目の届かないところで軽く魔王軍の幹部を殺すのはやめろ。


「蘇生っと」


「グァアアアッッ!?!? やめろッッ!! 水風船だけは!!! 水風船だけはッッ!!!!!」


「……なぁ、もしかしてだけどこいつ六魔将で最弱なんじゃねーの?」


『いや……攻撃力はあるんだけど……』


 ご丁寧に死因を説明しながら復活する【煉獄】。

 消火器に殺されるのも大概だけど今回はさすがにひどい。

 水風船て。そこらのガキでもこいつのこと殺せるんじゃねーの?


「はっっっ!!! 魔王様ッッ!! これは情けないところをお見せしてしまったぁあああ!!」


「もういいよ。お前の情けないところ見慣れてきたからもういいよ」


 うるさい。暑い。

 いるだけで周囲に害を与えるうえにすぐ死ぬとかもう魔王軍の幹部以前に生物としてダメだろこれ。


「んで、一応聞くけどなんで殺されたんだ?」


「いえっ!! それが! 俺にもよく分からないのですっっ!!! 魔導師が門を潜ろうとしていたので道を譲ったらどこからともなく大量の水風船が現れて生き埋めにされましたッッ!!!」


「なんで侵入者通そうとしてんだ。追い返せよ」


 職務果たす気すらねえのか。

 あまりにも真っ直ぐな職務怠慢に呆れていると俺の膝の上でテディが顎に手をあて首を傾げる。


『ふむ? しかし、そうなるとなぜ魔導師はわざわざ【煉獄】を殺したんだ?』


 言われてみればそれもそう。

 魔王城への侵入を遮られたのならともかく道を譲られたなら別に殺す理由はないはずだ。


「なんか近く通られたら暑かったから」


『……』


「……」


 忘れてた。

 こいつイカれサイコだったわ。


『……人間って情操教育とかしないのか?』


「安心しろ。そいつが特別イカれてるだけで普通の人間は暑いってだけで殺しはやらん」


 テディが「え? 人間マジやばくね?」みたいな目で見ているが、少なくとも元魔王に心配されなくちゃならんほど人間は理性を捨ててない。

 一部は知らんけど。


「……で? なんで来たんだ?」


「聞きたい?」


「聞きたくないけどあとから厄介事に巻き込まれるのも嫌だからな。ほんと聞きたくないけど」


「じゃあ教えない」


「おっけー。ぶっ殺してやる」


『煽り耐性低すぎんか?』


 んなことない。

 俺はいつだって冷静沈着だ。

 冷静に腹立つ奴は殺すことに決めてる。


「あはは。相変わらずだな親友」


『……ほぉ。勇者じゃないか。我を殺した時より腕を上げたな?』


「なんで来てんだよ……」


 魔導師の来た理由は大体分かった。

 勇者の付き添いといったところだろう。

 ただ、勇者がここに来た理由はよく分からない。立場的に魔導師よりも来づらいはずなんだけど。


「久しぶりに会ったのに酷い言い草だな。もうちょっと歓迎してくれても良いのに」


「勇者の来訪を歓迎する魔王とか訳分かんねぇだろ。……何しに来たんだ?」


 にへら、とバカっぽい笑みを浮かべる勇者。

 ほんとバカだ。

 自分の立場分かってんのか。


「親友の顔が久しぶりに見たくなってさ」


「……っ。……んなことでいちいち来んな。誰かに見られたらどうするつもりだよ」


「そこら辺は大丈夫。名目的には魔王の討伐のために来てるからさ。適当に幹部の首を二、三個持って帰ればきっと歓迎してもらえるよ」


「ナチュラルにうちの連中の首持って帰ろうとすんのやめろ。まぁ蘇生できるから良いっちゃ良いけど」


『良くないわ! お主には人の心がないのか!』


 まさかテディに人の心について説かれる日が来るとは。


「ま、本題は別にあってね。俺が結婚するのはもう知ってるよな?」


「ん? あぁ、知ってる。それがどうかしたか?」


「いや、あのカードに勇者パーティの皆だけで祝いたいって書いたと思うんだけどさ」


「うん」


「あれ、魔王城(ここ)を会場にできないかな?」


「…………あ?」


 詳しく話を聞くこと数分。

 ざっくり纏めると勇者が手配できるような場所だと誰かに覗かれないことが完全には保証できないのだとか。

 万が一にでも魔王である俺が勇者の結婚を祝っているところを誰かに見られるなんてことはあってはいけない。

 だから魔王城(ここ)でやりたいと。


 それなら別に俺は参加しなくて良い。

 そう思い意思を告げてみれば魔導師が勇者達がパーティ開いてるところに三発で世界が滅ぶ魔法ぶちこんでやるとかぬかしたので参加せざるを得なくなった。

 魔王の討伐という都合の良い名目で勇者パーティが城のなかに入ってしまえばあとはよほどの命知らずでもない限りは城に入ってくることはない。


 たしかに誰にも見られないように集まるってことなら魔王城はおあつらえ向きの場所かもしれない。

 だからといってオススメはしないけど。


『ふむ。それなら我も参加できるな!』


「なんで参加する気満々なんだよ」


『殺し殺された仲じゃないか。野暮なことは言うな』


「よく自分を殺した勇者の結婚パーティーに参加しようと思えるな……」


『我は殺しておいていきなりテディベアのなかに魂を蘇生されたり杖で撲殺されても怒らないくらいには寛大じゃからな』


「マジか。今度やってみよ」


『ぶっ殺すぞ』


「めちゃくちゃキレてんじゃん」


 まぁ、テディの姿でいくらドスを利かせた声で威嚇されても全く怖くはないのだけど。


「……そうだ。その時に私達の結婚式も纏めてやっちゃおっか?」


「ひぇっ……っ」


 ぬるり、とまるで蛇が獲物を絞め殺すように背後からメンヘラサイコが抱きつきそんなことを耳元で囁く。

 一見するとただ背後から抱きついただけに見えないでもないがどういうわけかピクリとも動かない体に思わず意図しない悲鳴が喉から漏れた。


『それはいいな。我は賛成だ』


「悪かった。俺が悪かったから助けてくれ」


『何を謝っているんだ? 我は何も怒ってなどいないぞ?』


「いや、ほんと俺が悪かったから……ひぃっ!? 体を擦るんじゃねぇっ!!」


「相変わらず良い体してるね♪」


「舌舐りすんなぁああ!!」


「ははっ。二人は本当に仲がいいね!」


 絶叫する俺を見てにこやかに笑みを浮かべるバカ勇者。

 てめえの目は節穴か!


「ん、たまには勇者も良いこと言う」


「……え? ちょっ、そこはマジでシャレにならん……!」


「大丈夫。怖いのは最初だけだよ」


「ひぃぃっ!? ……へ、へへっ、テディ? 俺たち友達だよな?」


『我は知らん』


「……」

あと数日は毎日投稿できるように頑張ります。


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