自室
ある晩のことです。
私はいつものように家族との夕食を済ませ
自室に戻る。
ドアを開ける。ふと誰かがいるような気配がした。
でも誰かがいるはずがない。
なぜなら私はいつも一番に食べ終えて、
真っ先に自室に戻るから。
そんなことを考えながら自室に入る。
何か嫌な感じがした。
ベッドの上にあるぬいぐるみが不愉快そうに
私を見ている。
すると、何かが私の目の前を通る感じがした。
これ自室だよね。なぜかその時は違う感じがした。
いつも過ごしている場の雰囲気が明らかに違うのだ。なんかこう例えると、高校に入って中学のときに
遊んでいた仲良しグループと久しぶりに会った感じ。
お互い雰囲気が変わって。前には気にも止めなかった
相手のちょっとした仕草や表情をよく見るようになる。それと似たような感覚だ。
自室にある全てのものが気になって仕方がない。
しかし、こんなことをしている場合じゃない。
もう、時刻は着々と進んでいた。
一向に私はドアの前でつたっていて、
あらゆる思考回路を巡らせていた。
が、一旦それをやめて明日の用意をする。
明日からまた部活が再開する。
今日は早めに寝ようと思いベッドに寝転がる。
相変わらず、私のぬいぐるみ達はみな不愉快そうに
只々おとなしく並んでいる。
電気を消し完全に真っ暗闇に包まれる。
最初のうちは周りは何も見えない。
でも、だんだんと目が暗闇に慣れていく。
とそのとき、ドアの方に違和感を覚えた。
誰かがいるような気配。
しかし、当たり前だが誰もいない。
もう、そろそろ寝ないと起きられないと思い
少し勇気がいったが目を瞑る。. . .
ねぇねぇあなたのお名前は?誰かに話しかけられる。
×××だけど。私が答える。
×××ちゃん?僕の名前はペン太。ごめんだけど
少し僕のお手伝いしてくれない?
ペン太くん?そこには私のぬいぐるみの一つ
ペンギンのペン太くんが話していた。
いいよ。お手伝いって何?
. . .。
ねぇ聞いてる?
. . .。. . .。
「お前の頭が欲しい!!!」「殺してやる!!!」。
はっ。目が覚める。
横にあるぬいぐるみ達を見回す。
あれペン太くんは?どこ?. . .。
と思ったその刹那。
ベッドの下から微かに、消え入りそうな声が
聞こえてきた。
「頭が. . .」「頭がほsii. . .」。
はぁ。はぁ。はぁ。恐怖で少し息切れをし、
動悸がおさまらない。
晩夏の候。カエルの合唱も聞こえない。
静寂の中、私の息遣いが荒々しくなる。
でも、その声は次第に小さくなり
終いには聞こえなくなった。
私の幻聴かな。と思って息を整え、もう一度
眠りにつこうとする。
が、ペン太くんがいないことを忘れていた。
このままでは気になって眠れない。
どうしようかと思ったが、私はその時なぜか
どうしてもベッドの下が気になった。
そこにペン太くんがいると思ったからだ。
私が寝ている間に落ちてしまったに違いない。
そう思ったのです. . .。
恐る恐る。下を覗く。
はっ。いた。でも、横に倒れているペン太くんは
やはり不愉快そうに私を見つめる。
私は息を呑み。ペン太くんに手を伸ばした. . .。
そーっと。そーっと。ペン太くんの体を掴んで
引き戻そうと思ったその刹那. . .。
「お前の頭が欲しい!!!」
キャーーーっ。
チュン、チュン、パタパター。
朝、目が覚めると私はベッドの上で寝ていた。
ふっと、横を見るとペン太くんが寝転がっている。
昨日のことはなんだったんだろう。と思ったが。
気にせず。学校のカバンを持って下に降りる準備を
する。
ドアを開ける直前。少し嫌な気配を感じた。
振り返ってみると。
ぬいぐるみ達がいつものように私を不愉快そうに
見つめているのでした。