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エッセイという名の文章(なろう関連、映画関連、その他)

物語が納得できない読者側の原因

作者: 檸檬 絵郎


 物語の展開に納得できない、読むのやーめたっ。……ってこと、あります? あるいは、読み終えてから、結末が気に食わない納得できないーううう、ってこと。

 その理由っていろいろあると思うのですけど、例を挙げると、登場人物の心理や目的と言動との整合性・物語世界の整合性・人物や物語世界の魅力の欠如……、とまあ言った次第でございましょうか。あとは、小難しゅーて読めんわい! ってなとこだべ、早い話が。

 とまあ、明らかに作品の質、クオリティーの低さに原因があることも多いと思うのだけど……、ここで筆者が問題にしたいのは、作品のクオリティーとは別の原因でしてね。


 作品としては申し分なく、キャラクター造形から行動心理から物語世界の設定からきちーんとしていて、かつそれなりの魅力も有していながら、「納得できなーい」が勃発してしまうことがある……とすればそれは、まあ早い話が、読者側に原因があるんではないかってことになるわけで。



 おっと、ここまで説明していたら、仮想の読者Aが姿をあらわしたぞっ。しゅっしゅっ。


A「チガ、チガーッ!」

作家「あ? なにが違えんだよ?」

A「違っ、血がーっ!」


 ……まあ、そういうこともあるでしょう。残酷描写・性描写など、そういうのがダメだーって読者さんですね。差別用語などが多数出てくるのも、苦手なかたっていらっしゃいますよね。生理的な嫌悪ってのは、まあ仕方ない。

 でも、こういうある種パターン化されたクレームに関しては、作家にはレイティング(年齢制限)や警告ワード(登録必須キーワードや、あらすじ欄・前書き欄などでのお断り)という強ーい味方がいるのです。


作家「ひっさーつっ、警告してますがなにかっ!」

読者A「ひえーっ、にげろー!」


 とまあ言った次第で、解決なんでございます。

 え、読者をワルモンにするなって? いえいえ、ワルモンではございません。「敵」でございます。これでもまだキツいというならば、「タイセンアイテ」とでももうしましょうか。

 作家ってのは、作品を通して読者と対話してるわけです。もちろん、かならずしもそれが創作の動機や第一義的な目的になるとはかぎらんのでしょうけど……、まあ結果的に、作家と読者ってのはそういうような関係になりますね。(あるいは、作品対読者……つまり、作家は完全に読者との対話をほっぽりだして、作品に委託してる……という見方もできるかもしれない。)

 そして、忘れちゃならんのが、レイティングってのはあくまでも読者のクレームから作家の表現の自由を守るための区分けだからね、早い話が。著作権なんかもそうで、目的としては文化の発展への寄与……とまあ言った次第で、創作者の味方なわけですわ。



 ちょいと脱線がすぎましたかね、それじゃもとに戻しましょ。がたんごとん。


 えっと、つまるところですね、警告ワードでなんとでもなるものってのは良いのですよ。

 でも、そうじゃないものもなかにはある……それはなにか、つまり、こういうの。


読者B「うわ、主人公かわいそ。ないわー」

作家「あ? なにがないって?」

読者B「この展開、ないわー」

作家「いや、あるんだよそれが……」


 ええ。人物のキャラクター的にも心理的にも、そして物語世界的にも整合性が取れていてリアリティーがあるってのに、ってやつですね。

 あと、こんなのもある。


読者C「この場面でこういうことしちゃうのは、クズだと思います」


 ……や、それ私に言われても……、書いたのは私だけど、私に言われても……ねえ……ってやつ。そもそも物語自体フィクションなのだから、倫理観とか求められても……とまあ言った次第でね。


 この、BさんCさんのタイプってのが、じつは今回語りたかったタイプでして……。


 このタイプの読者が納得がいかない原因ってどこにあるのかって考えたとき、まず、彼らがどういう立ち位置にいるかってのが重要で。で、彼らがどこにいるかっていうと、早い話が「物語の中」なんですね。感情移入ってのはひとつの楽しみでもあるし別にいいのだけど、あまりにも入り込みすぎてしまうと、登場人物と同じ立場でキャラクターを見、そして物語世界を見てしまう。だから、「こうじゃなきゃいかん」というのがね、出てきちゃうんじゃないかなあと。

 で、「登場人物ではないけれどその物語世界にいる人」って視点ならまだいいのだけど、そういうのの最上級として、「登場人物になりきって読んでしまう読者」がいるんじゃないかしら、と。


 これはもしかしたらゲームの影響とかあるんじゃないかとも思うのだけど……、ほら、ゲームの場合、プレイヤーがキャラクターを操ってシナリオを進めるでしょう。あくまでもシナリオに沿ってだから、細かいところの自由は利かないかもしれないけれど、でも何でもかんでも自由じゃないってのは現実世界だっておんなじことで。重要なのは、キャラクターを「操作できる」ってところなんじゃないかな、と思うのね。早い話が、体感型というか、なりきり型というか……、物語の世界に没入するには、自分が主人公になっちゃえ! って感じかしら。

 それと比較すると、読書って本来、映画やお芝居と近いところがあって、シートに座ってスクリーンや額縁(プロセニアム)の内側を眺めるって感覚だと思うの。映画やお芝居にも、役者が観客に話しかけてきたりっていう第四の壁を破る行為(メタフィクション)ってのもあるけれど、観客が登場人物になってその行動をコントロールしたりってのはまずできないはずなんですね。

 そこで、ゲーム感覚で読書をしている読者(つまり、さっき説明したなりきり型読者)からすると、「じれったい」って思いが出てくるんじゃないかなあ。「Aのボタンを押しているのに、キャラクターが『諾』と言ってくれない」っていう感じかしら。これはもう、「操作したい」っていう願望とかそんな次元の話じゃなくて、「あれ、俺の右手がいうことを利かない……!」っていう感覚なのだと思う。

 そして、思い通りに動かないだけならまだしも、自分自身だと思っていたキャラクターがどうやら自分自身と違う思考を持っているというところにその原因があるのだと気づいてしまうと、「いや、これは俺じゃない」となってなりきり魔法が解けて、読書の熱が一気に冷めてしまう……。



 作家としてこういう読者に言いたいのは、あなたがたは物語世界においてなんの使命も責任も負わなくていいのですよ、ということ。早い話が、「見てるだけ」でいいのよ、と。

 現実世界だと、たとえばいじめの現場に遭遇して、「かわいそう助けてやらなくちゃ」とか思ったり、あるいは同情して見ている自分が泣き出してしまったりってこともある。でも、物語世界の読者はそんなことをする必要はない。所詮は別世界です、気楽にいきましょうや。


 何度もいうけれど、感情移入ってのは楽しみのひとつではありますね。だから、しちゃダメってわけじゃないのだけど、なんでしょうね……、まあ早い話が、したいときだけでいいんですよってことかしらね。基本外から眺めていて、あるシーンでふと感情移入してしまう……あ、このキャラクターとシンクロした……世界をリアルに感じた……みたいな? 感情移入することによって物語が楽しめなくなるんなら、本末転倒だし。


 あえて名付けるなら、「共感」と「批判」を使い分けるといい、ということかな。批判っていうのは、作品への批判ではなく、物語世界を客観視するってこと。「この人物の言動は滑稽だ」とか、そういう姿勢ね。人物になりきってしまっていては、その人物を「滑稽だ」と評することなんてできない(滑稽な人物ってのはたいてい自分ではまともだと思っている……少なくとも、周りが思っている以上には)。ところが、ふとしたところでその人物と自分を重ね合わせて、涙する……。

 まあ、ひとつの方法論でございますね。


 とまあ言った次第でね、今回は終わりにしたいと思います。





(そういえば、お芝居をはじめて見た子供が現実と勘違いして、演じた俳優に抗議しに行くっていう笑い話……、あれはなんて童話だったかなあ……)

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― 新着の感想 ―
[一言] 〉「Aのボタンを押しているのに、キャラクターが『諾』と言ってくれない」っていう感じかしら これを見て、昔のRPGに聖剣伝説っていうのがあったのを思い出しましてね。 主人公にデフォルト…
[一言]  あまりにタイムリーにエッセイを見つけてしまって、興味深く読んでしまいました。  ついこの間、商業小説を読んでいて、「なんだよこの展開」とうなだれた読者です。  なろう発とかじゃなく、本当…
[気になる点] んーどうもこのエッセーにはが納得できない読者ですw まず特に"なろう"界隈においてはストレスフリーが大多数の読者側の第一にあるとしか思えない。ランキングだったり、作者さんの感想を読む限…
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