コルトパイソン
第3章☆コルトパイソン
「柄本直也ー!!!」
雑踏の中を歩いていたら、前方から若い男が、銃を構えて大声で叫んだ。
「なんで?今まで人がいない所でばかり狙われてたのにっ!」
直也は愕然として叫んだ。
辺りは騒然となって、人々がどっと駆け出した。
「うあ!あっつ!」
直也は巻き込まれてアスファルトの上に転がった。
結子は別の場所にいるし、あのルージュの女はアンドロイド専門の壊し屋だから、このパターンだと、絶体絶命だ。
ダン、ダ、ダーン!
複数回銃撃の音が響いた。
「知ってるかい?」
「?」
「コルトパイソンはコルト社が造った銃だけど、構造上の理由から、狙いが外れやすいんだ」
「あなた、何様ですか?」
直也は言ってしまってから後悔した。誰ですか?、で良かったのに墓穴掘っちゃった!
「言うなあ」
頭をガシガシかきながら、その男はけけけと笑った。
男の手にはワルサーP38が握られている。
向こうで、さっきの男が、ゴロゴロ転がりながら苦しんでいる。
「この時代の時間軸にいる人間に未来人が銃を持たせたらしい」
「冗談じゃない!」
だんだん追い詰められて来ている気がする。
「警察が来る前にずらかるぞ」
男が直也のすりむいた手のひらをつかんで引き上げ、立たせた。
「走れるか?」
「はい」
ズキズキする痛みで頭がはっきりしていた。
「あなたは誰ですか?」
「JJ」
「ジェイジェイ?」
「コードネームだよ」
はあはあ言いながら走る。
「うわあ」
直也は突然つんのめって立ち止まる。
アンドロイド!それも数十体いる!
「JJ!あなたまさか、僕を狙ってる方の人なんじゃ?」
「そう…なわけあるか!」
JJは直也を背後にかばったが、アンドロイド相手にワルサーくらいでは太刀打ちできないのは百も承知だった。
「梨華!どこにいる!?」
「ここよ」
ルージュの女が現れた。
直也は初めて名前を知った。
梨華はいつもの頭部をふっ飛ばす銃を使わずに、電子銃で電磁波込みの撹乱兵器を使った。
アンドロイドたちはあっけなく壊れた。
「知ってる?パイソンって、蛇のことよ」
毎度思うのだが、直也の会話を全部聞いているらしい。盗聴器かなにかだろうか?
「結子が別口で襲撃受けてるわ。あの娘、人間相手なら無敵だけど、アンドロイドには手が出ないから」
「どうする?」
JJと梨華は直也を見た。
「助けに行かなくちゃ!」
「そうだな。みんな一緒にいたほうが良さそうだし」
「そうね」
三人は全速力で駆け出した。