かわいい転入生
第1章☆かわいい転入生
柄本直也のクラスに転入生がやってきた。
色白で身体のどこをとっても愛らしく、華奢な人形のような風貌だった。ふわふわの髪を頭部の上辺で結んではいるが、肩まであるその髪は綿菓子を思わせる。
「小鳥遊結子です」
声までかわいい。
クラスの悪ガキが席を立って結子の周りを取り巻いた。
担任は知らん顔だ。
「おい、なんか、いい匂いしないか?」
「ホント。今日からよろしく子猫ちゃん」
口々に言っているが、結子は無視して席に…直也の真後ろに…座った。
……匂い?
直也は不思議そうにちらりと後ろを一瞥した。
結子に特に変わった様子はないのに、さっきまでわいわい騒いでいた悪ガキたちが、やけにおとなしくなった。
担任があからさまにホッとした様子で授業を始める。副担任がクラスの後ろを巡回する。
ちょいちょい。
人差し指で後ろから突かれる。
直也がはっとして振り向くと、いつの間にか授業が終わって休み時間だった。
「なに?」
「お姉様から伝言よ。一応遠巻きに援護しているけれど、とりこぼしが来たらそちらで対応してって」
「どういう意味?」
「こういう…意味!」
ブワッ。
香水に似た香りが充満した。
クラス中に蔓延して、生徒たちが次々昏倒する。
なんだこれ!?
びっくりしている直也と、結子だけが意識を保っていた。
「一応、凶器持ってるやつから解除しとかなきゃ」
そう言って結子は行動に移す。直也は自分が思ってもみなかった普通の生徒のポケットや学ランの裏側からジャックナイフやらなにやらかにやら結子が没収するのを目を丸くして見ていた。
結子は取り上げた凶器類をゴミ箱に捨てると、席に戻って、深呼吸した。
「ううーんん。あれ?」
周囲で皆が一斉に動き出す。
「小鳥遊さん、君、何者?」
「未来から来たシークレットサービス」
「本当に?」
結子はくすっと笑った。