表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王No.0 アンノウン  作者: おとエセ
序章
8/23

A-8

 おとエセです。


 お手柔らかに、宜しくお願いします。


 5/27 差し述べるを差し伸べるに修正しました。


 

「見えた……」


 メイプルが目蓋を閉じた瞬間、必死に溢れ堪えていた涙が、太い筋を作って流れ落ちた。

 アモウが地に膝を着く今の今まで、メイプルは二人の闘いの一つ一つを、くまなく()ていたのだった。


「ぎぎぎっ!!」


 メイプルの左側から聞こえる、激しい歯ぎしりの声。


 アモウが傷つき、ボロボロになっていく姿に、心を痛めていたのは、決してメイプルだけではない。


 悲しむメイプルとは違い、激しい怒りに駆られた心情。

 アトラスもまた、直ぐにでも飛び出したい心境を、何度も何度も必死に押え込んでいた。


 アモウの技は範囲が広いうえに、威力も大きい。

 速さでも群を抜いてる為、アモウとの連携は難しく、無理に行おうとすれば、味方に被害が被る可能性が出てくる。


 『アモウが全力で翔る時は邪魔をしない』


 これは、昔、メンバー内で決めたこと。


 このルールと、二度もアモウに静止させられたことから、皆で補うと謳いながらも、アトラスは動けずにいたのだ。


「……ルー? アト、見た?」

「…………」

「ああ、奴の口と繋がってんだろ!? あの黒泡は一体なんだ!?」

「……たぶん──」

「なっ!! 不味い!! ルー!!」


 動かなくなったアモウに、魔人が旋回を始める。


「フルブースト」


 メイプルが即座に、ルーネリアとアトラスに術を施した。


「うおおおお!!」


 雄叫びをあげることで自身を鼓舞し、アモウを守るべく、技を放とうとする魔人に向かってトラスは駆け出した。


「っ!?」


 駆けるアトラスの正面から、蹴り飛ばされたアモウが、勢いよく真横を通りすぎる。


 だがアトラスは、振り返ることなく魔人に向かった。

 アトラスは、自分の役割を瞬時に判断し、ルーネリアも行ったように、時を稼ぐことに決めたのだ。

 アモウの治癒は、ルーネリアに任せれば問題ない。


 アトラスは、背負っていた盾を左手に配置し、それを行使しながら前へと駆ける。


「……ほう!?」

「触れなければ問題ない、そうだろ? 次は俺が相手だ!! 魔人!!」

「お主、名は?」

「俺は剣士アトラス・テイナー!!

 流派はガーマイン!!

 アモウが拳聖を名乗るなら、俺は剣聖でも名乗ろうか!!」

「ふっ、来るがいい!!」

「馬鹿にしたな……後悔するなよ!!」


 アトラスは更に勢いを増して、魔人に向かっていった。


◆◇◆


 失速したアモウは幸い、メイプルの直ぐ側まで転がって来ていた。

 アモウは仰向けになり、ぴくりとも動かない。


 最終的にはルーネリアに任せるとして、先ず自分は、アモウの生死の確認。

 もし、息があるのなら応急処置をと、 メイプルは一連の流れを頭の中で組み立てながら、


「フルブースト」


 自分自身にも術をかけ、急いでアモウの側まで駆け寄ると、耳を胸にあて鼓動の確認をする。


「……よかった」


 気を失ってはいるものの、胸は上下し、微弱ながらアモウに息があることに、メイプルは安堵した。


 だが、ここまでボロボロになったアモウを診るのは、メイプルにとっても始めての事。


「無理しすぎ……」


 メイプルは、また涙が溢れ出て来るのを必死に堪えながら、欠損箇所の止血を施していった。



「メイ……プル? ぶふっ!」

「まだ終わってない!! 喋らないで!!」


 暫くして、意識を取り戻し、咳き込み吐血するアモウを制し、メイプルは急ぎ治療を続ける。


「……な、なんとも情けない!! 我の大事な武器を食われようとは……」

「だから!! ……」


 手を失った両腕を宙に突き上げ、涙を流すアモウに、メイプルは言葉を失ってしまった。


「……大丈夫。ルーがいる」

「メイプル……」


 メイプルの必死に堪えていた涙が、また、太い筋を作り溢れ出す。


「だから」


 メイプルは、前方に目を向ける。


「……え!? ルー!?」

「どうした!?」


 メイプルの目には、魔人とアトラスの姿しか映らず、アトラスと共闘しているはずのルーネリアの姿が、どこにも見当たらない。


「まさか……」


 不安がよぎり、メイプルが後方に目をやると、


「嘘!? ……ルー!? ルー!!」


 アトラスの補佐や術の行使など、共闘どころか、ルーネリアは先ほどいた場所から一歩も動いてない。


「メイプル!? ルーネリアがどうかしたのか!?」

「反応がない!! 固まってる!!」

「なっ!? やはりか……」

「そんな!?」


 ここまで影響が生じるとは、メイプルにとって予想外であった。


「ぐあっ!!」

「「!?」」


 叫び声に反応し、メイプルの顔が反射的に、前方の魔人とアトラスへ向く。

 声からして、何かあったのはアトラスの方。


「メイプル!! ルーネリアを起こせい!!」

「……でも!?」

「我は十分よ!! このままではアトラスが危うくなろうぞ!? 早う!! 叩いてでも起こさぬか!! ぶふっ!」

「……分かった!!」


 アモウに急かされ、メイプルはルーネリアの前まで急いだ。


「ルー!? ルー!? ねえ、ルー!? ルーネリア!!」


 だが、いくら体を揺すっても、ルーネリアはメイプルに反応せず、虚ろな目が魔人の動きを追っているだけ。

 まさか、このような状況に陥っていようとは、ルーネリアの『カチン』の発言が、アトラスとメイプルの判断を誤らせた。


「ルー!? ごめん!!」


 意を決して、メイプルはルーネリアの頬を叩く。


 メイプルの平手打ちは、術で能力が上昇しており、同じ術の下にあったルーネリアでも、意識を取り戻すには過剰すぎるの威力であった。

 叩かれたルーネリアは、後方によろけ、尻を地面に打ちつけた。


「……え!?」


 頬を押え、見上げるルーネリアに、メイプルが手を差し伸べる。


「……メイプル!?」

「しっかりして!! ルーは勇者でしょ!?」


 メイプルの手を取り、引き起こされたルーネリアは、自身の招いた光景に絶句するのであった。

 誤字・脱字が御座いましたら、指摘のほど宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ