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魔王No.0 アンノウン  作者: おとエセ
序章
5/23

A-5

 おとエセです。


 お手柔らかに、宜しくお願いします。


 5/16 名を語るを名を知るに修正しました。

「メイプル!!」


 起き始めた魔人に向かって、アモウは駆ける。


「フルブースト」


 術士の主な役割は補助にある。

 メイプルが術士として、賢者と名高い理由の一つ。

 それは、推測から判断、そして実行に移すまでに所要する時間の短さにあった。


「ぬっ!?」


 と、声をあげたのは魔人ではない。アモウだ。

 体を起こしながら、アモウの姿を捉えていた魔人は、自身の体内に魔力を巡らせ始めた。

 これは、自己修復の促進と、能力が上昇したアモウ対策として、自身の能力増幅を行ったもの。

 意図も簡単に、回復と補助を同時に行う魔人に、アモウは驚きの声を上げるが、


「問題ない!!」


 迷わず駆けた。


 術による、能力増幅の値は五分五分。

 そう踏んでいた魔人だったが、予想を大きく裏切り、アモウの姿を完全に見失うことになる。

 やがて、


「ぐはっ!?」


 鳩尾に激痛が走り、魔人の体が『く』の字に曲がる。


突頂肘(とっちょうちゅう)!!」


 右肘を曲げ、胸の前で構える。

 右手は拳を作り、左手はそれを掌で添えて押し出す。

 能力上昇によりスピードが乗ったアモウの肘打ちは、一撃必殺とも呼べる大技であった。

 更に、


浮雲(うきぐも)!!」


 アモウはその場で後転を開始。

 そして大地を背に、両足がくの字に曲がった魔人の胸部に差し掛かった時、弾き飛ばすように両足で強く蹴り上げ、魔人を宙に浮かせる蹴り技へと繋げた。

 

 魔人の体が宙を浮き、大地と平行の形を作る。

 これぞ正に、空に浮ぶ雲の如し。


 後転しきったアモウは立ち上がると、大地を見下ろす形で宙を漂う魔人に、更なる追い撃ちを掛けるべく跳び上がった。

 近づいてくるアモウに、腕を伸ばし捕らえようと魔人は抵抗を見せるも、蓄積されたダメージの影響で、体を思うように動かせないでいる。


噛挟牙(げっきょうが)!!」


 歯を食い縛る形を連想させることから名付けられ、膝蹴りと肘打ちで頭を挟む破壊技。


「ぶふ!?」


 魔人の顔にアモウの右膝がめり込み、同時にアモウの右肘が魔人の後頭部を破壊する。

 そして、アモウは膝と肘を離した後、魔人の髪と肩を掴むと体をひっくり返し向きを変えた。

 やがて、魔人はピクリとは動くものの、アモウになされるがままに落下が始まったのである。



 魔人が大地と平行で落ちるなか、アモウは魔人を足場に軽く跳ぶと両膝を抱え、宙で前回りを始める。

 やがて回転は勢いを増し、落下が魔人に追いつくと、アモウはその勢いのまま、魔人の腹にかかとを打ち下ろした。


旋風踵落(せんぷうしょうらく)!!」


 技を食らった魔人は呻き声さえ上げる暇もなく、体をくの字にしながら、一瞬にして大地に叩きつけられた。

 先ほど陥没した大地は、魔人の落下の衝撃で更に陥没が進むことになる。


 砂塵が舞う最中、連撃を終えたアモウが遅れて大地に降り立つ。

 肩で息をしながら、魔人が落下した場所から距離を空け、周囲に気を配り始めた。


「……はあ、はあ、悪く思うな、魔人。コーネリア殿の名を知る貴様は、恐らく我ら人種にとって大いに脅威な存在となりうる」


 魔人からの返答はないものの、アモウは一つ気掛かりなことがあった。

 周囲の様子は未だ砂塵で分からないが、魔人との戦闘において自身の体の所々に謎の黒い泡が付着し、それが消えていないこと。


「……まさか」

「最悪」

「メイプル!?」

「生きてる」

「…………」


 アモウから『承知』の言葉が消えた。

 代わりに出てきたのは『絶句』の二文字。

 急に震えだした自身の手を見て、今まで体験したことのない感覚が、アモウを一気に襲う。


「怯え!? まさか我が……このアモウが恐れているとでもいうのか!?」


 先ほどの連撃には手応えがあった。

 何せ、メイプルの補助があっての連撃である。

 倒せないのもおかしいが、倒れない方がもっと異常なのだ。


 何故なら、術士メイプルが賢者と名高い理由のもう一つ。

 それは──


「な……七種……み……三重……とは」

「くっ!?」


 一般のブーストの効果が、基礎能力を二倍に増幅させるのに対し、メイプルのブーストは基礎能力を三倍に上昇させる。


 だが、メイプルの凄さはそれだけでは終わらない。


 『フルブースト』は、発案者であるメイプルにしか未だ使えない程の高難度な術である。

 『フル』とは、言葉通り『全て』を意味する。

 よって、体力と魔力の二つ。

 攻撃力と防御力と、更に魔法攻撃力と魔法防御力を合わせて四つ。

 最後に、素早さの一つを合わせての全七種。

 メイプルは、この七種類のブーストを一つの術として発動させていたのだ。

 アモウに、重ねに重ねて。


 そんな過剰とも取れる援護を受け、何度も立ち上がり倒せずにいる魔人に、アモウから完全に焦りの色が見えて取れた。


「な、ならば!!」


 アモウが、両方の掌を力強く合わせる。


「裏に入るまで!! 変裏(へんり)!!」


 そして、合わせた掌をゆっくりと剥がすと同時に、掌と掌の間から青い炎生まれた。

 やがてその炎は、掌を剥がすにつれ次第に大きくなり、剥がし終わった時には、すでにアモウの両手を青く包んでいた。


 正拳を象徴する拳骨が表なら、裏は邪拳を象徴した貫手。

 拳の形を例えるなら『表をグー、裏はパー』。

 邪と名が付く通り、これからアモウが繰り出そうとする技の一つ一つは殺人技である。


「アモウ!?」

「アトラス、待たれよ!! これで全てを終わらす!!」


 アモウは、青く包まれた両手を前に突き出すと、上下へと少し広げる。

 そして、両方の人差し指と中指だけを残し、後は全ての指を曲げ型を完成させた。

 青い炎が大きく揺れ、アモウの手の周りで形を造り出す。


「我が最大の技を食らうがいい!! ムムタイ流裏奥義!! 青龍砲牙(せいりゅうほうが)!!」


 龍を宿し青き炎の牙が、魔人を滅さんと、今まさに放たれようとしていた。

 誤字・脱字が御座いましたら、指摘のほど宜しくお願い致します。

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