表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

父の心、子知らず 2

パパンのお話は続きます。予想外に長くなりそうです。

妻が死んでから娘は何かを忘れるように勉学に励んだ。寝食を削り文字通り机にかじりつき、時には倒れても書物を離さなかった。

それはかつて家族に顧みられない妻が、心を埋めるように学問に傾倒していたあの頃を思い出させた。

娘が部屋に引きこもると、喪も明けない内から縁談が国内の貴族から殺到した。

特にしつこかったのは妻の実家とその父の実家であった。

余りのしつこさに一層の事家ごと血祭りにあげようかと思いつめたところ、娘が城に押しかけた令嬢達に無理矢理引きずり出された茶会でやらかした。彼女達は招かざる客であった。


同じ見合い目的でも分別のある者は絵姿と釣書だけ送り届け、喪が明けるまで返事を待っていた。

ところが彼女達はあと一年で喪が明けるのを待たずに城に押しかけ、姫が料理を終え私達に振る舞おうと移動しているところを捕まえて茶会に加えたのだ。

いきなりキラキラが現れて目潰しにあって反応できなかった。誘拐と気づいて顔を上げたらお化け!と思って怖くて動けなかった、とは後の娘の談である。

因みに護衛騎士達は味見を頼まれた後厨房の者と余ったパンをかけてジャンケン大会を繰り広げ、不在であった。後にそれを知った騎士団長に殴られた。なぜパンを守らなかった、と。

速攻で大臣と弟とで騎士団長をボコッた。

姫に付き添って居た王妃の乳母やと侍女は横からいきなり現れたキンキラキンのケバケバリンの淑女の大群が「お借りしますわぁぁぁぁぁーーーー!」などと言って走り去っていくのを見て唖然としていたらしい。

喪中の王城で出会った常識はずれの大群に思考停止してしまい小さな姫がいないのに気づくのに遅れ、周囲を探しまくってからあの非常識の集団に借りられたと理解し、合流した騎士達と後を追いかけた。

草は複数つけていたので姫の安全は確保していたが、騎士達はこの後自ら役目を返上し再教育を受け、配置換えになった。侍女と王妃の乳母やは故郷に帰り、姫の作った料理を広めるべく料理屋を始めた。



「あなたのお家はキャゼルヌなのですね。30年ほどまえ洪水で大変な被害を被ったと聞きましたが、その後どんなに対策を立てられたのでしょうか?その際、どんなに救助活動をしてどのようにして復興を遂げたのですか?」

「まあ、あなたはあの有名なカンド鉱山を所有しておられるお家なのですね?

鉱山といえば気になるのは鉱毒の被害や労働者の安全対策や健康管理ですが、普段はどのような対策を?

随分長いこと開かれたお山ですけど、ここ10年の年間支出量はどう変化しておられますか?」

「あら、あなたは国内最大の貿易港を持つ領地の方ですのね?海路の安全はどのように保たれておりますの?

最近の物価価格の変動で何か気になることはございませんか?最近はどのようなスパイスや食材が持ち込まれていますの?こういった食材をさがしていますが、心当たりはないかしら?」


幼い姫を言葉巧みに籠絡し王妃の座に治ろうとする令嬢達は、政治とは距離を置き着飾ることで自らを磨く事しか知らぬ者達であった。誰一人として10歳以上年下の姫の質問に答えられる者はいなかった。

戸惑いながらも令嬢達は無知な子供を嘲笑うかのように姫に口々に言い募った。


「なぜ女性には必要のない学問をなさるのですか?それは男の仕事でございましょう?」

「女は子を産み、育てるのが仕事でございます。学問など無用です」

「姫様はまだお小さいですからご存知ないと思いますが、我ら施政者は衣装や食事で己の権勢を示すのです。ドレスやアクセサリーに興味をお持ちになられては?」


姫は答えた。確かに子供の出産は女性の命をかける大仕事だ。しかし子供の教育は夫婦の仕事だし、夫が戦などで不在の場合家を守るのは妻の仕事だ。計算もできないと、家の家計は守れない。文字も読めず法律も知らなければ詐欺のカモにされる。出産における女性の死亡率はまだまだ高いし、食料自給率はこの国はかなり低い。医療技術と食料生産の向上は国の命題だ。女性を理由に知らぬ存ぜぬではこれからは過ごせない、と。


更に姫は追い討ちをかけた。

気分転換で作った試作品のパンと焼き菓子を令嬢達に振る舞ったのだ。

それまでのパンは黒くてカチコチに固く、お年寄りや子供はスープに浸して食べるしかなかった。

だが姫のパンは白くて柔らかいがコシがあり香りも高くほのかに甘かった。

更にそのパン生地にくず肉と炒めたクズ野菜とチーズを丸めて入れて焼いた『カルツォーネ』。

サクサクのどんぐりクッキーとフワフワの『マドレーヌ』とパンより柔らかく木の実や干し葡萄を使った『パウンドケーキ』、つるんっとぷるんっとしか表現できない『プリン』。

最後の仕上げに食後のほろ苦くて甘い『タンポポコーヒー』なる飲み物を勧めた。


菓子の全てにふんだんに蜂蜜と砂糖が使われており、これらは全て未知の料理であった。

王妃が亡き後塞ぎ込む父を見かねて、ブランシュ=ネージュが前世の料理を作って父に振る舞いました。

ちょうどこの時お昼だったので父の友である騎士団長や大臣、王弟にも一緒に振る舞ったところが、全員の胃袋をガッツリ掴みました。

因みにハーブはこの時まで薬草としか見られてませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ