父の心、子知らず
噂のパパンです。シリアスです。
何やら遠くで雄叫びがしたような気がして国王オーギュストは報告者から目を上げた。
今日は久しぶりに娘が帰る日であった。
亡き妻に似て利発な娘である………多少変わりすぎてるところはあるが。
緩やかな黒の巻き毛。生命力に溢れ、黒曜石のような輝く瞳。薔薇色の頬。旅に耐えられるよう体を鍛えてる為、頬はどちらかといえばふっくらしているが、全体的には痩せ型で許容範囲である。ーーー文句なしの美少女である。
笑顔で振り向いて走って来られると、周りに花びらが舞って背中に羽が生えていないのが不思議に思うくらいである………そう口にすると弟と友の大臣と将軍に笑われるか呆れられる。
自分は二男であり、どちらかといえば内政よりも剣を持ち軍を動かす方が得意であった。大国が次々と小国を吸収しつつあった当時、この特技は大層役に立つに違いない。しかし内政が安定しない限り、戦もできない。
早々に自分の能力に見切りをつけ、将軍となるべく臣下に下ろうとした。
だが上の兄が死に自分にお鉢が回ってきた為、国一の才女と名高い幼馴染の伯爵家の娘を娶った。
当時女性に継承権はなく政治に口を出すのはタブーであったが、妻の昔からの努力とそれに培われた実力を知っていたので手伝いを頼み、そのうち内政の半分を王妃に任せるようになった。それを擁護する為自分は愚かを装い、裏で諜報を受け持つようにした。
実際敵は国内に多かった。才能ある女性であった為、妻は古い風習を重んずる家臣達と折が悪かった。
妻の実家では実母は他界しており、政略結婚である事を根に持った父親は正妻の子であった妻に辛く当たり、妾の子を可愛がった。結婚後は衣食住をマトモに提供したことすらないのに、なぜか王妃に便宜ばかり求めた。
真っ当な常識を持つ妻はその要求を悉く跳ね除けたが、それらは却って彼らを煽り結束させることになり、ある日妻は娘の前で毒殺された。
死因は毒りんご。
食事は妻が手ずから作っていたが、脅迫された乳母が食材にコッソリ紛れこませたのだ。遅効性の毒だった為、りんごを切り分けて味見をした上で娘と食そうと持っていった途中で倒れた。
娘は後に『心肺蘇生法』と説明した術で母を助けようとしたが、妻は帰らぬ人となった。
乳母は全てを話し、毒を飲んで自殺した。
……自分が甘かったのだ。後一歩のところで肝心の情報を生かせず、結局大事な人を3人も無くした。
妻と乳母と乳兄弟ーー今でも時々夢を見る。
パパンはママンとブランシュ=ネージュが大好きです。
因みに浮気相手と思われてる女性達は雇ってるスパイさんでした。




