お前だけが大事
恋愛小説が好きだ。
特に、他人なんか興味はない、お前だけが大事なんだ、などと言う話は大好物です。はい。
しかし、それをリアルでやられたらどうなるか。今回はそういう体験です。
あるお休みの日、私はツレといっしょに電車で出かけ、イベント会場で受け付けに並んだ。すぐ受け付けてもらい、もらった案内を見ていると、後からどん、と突き飛ばされた。え、誰か当たった?振り返ると、そこには中年の男性がいて、明らかに肩で私を突き飛ばした姿だった。何で突き飛ばす?疑問符が飛びまくった。その男性はサッと振り向くと、奥様らしき人の肩を抱いて、受け付けをすませ、さっさと会場に去っていった。
「今私、突き飛ばされたよね」
「わざとだったな」
「何で?」
「お前が邪魔で奥さんが受け付けできなかったからだろ」
「すみません、よけてくれませんかって普通言わない?」
「言うな」
「だって」
「奥さんだけが大事なんだろ」
私はそんな理由で大人の男の人に突き飛ばされたのか……
その帰り、少し込んだ電車でつり革につかまっていると、隣の中年のおじさんが肘でグイグイ押してきた。何で、スペース十分にあるでしょうが!隣を見ると、なんということでしょう。私を肘打ちして作った広い空間に、奥様をゆったりと囲っていらっしゃる。みんながせませまと乗っている電車内で、奥様にだけゆったりした空気が流れていた。
わあ、愛されるって幸せだね(はあと)なんて思うか!
私だったら、自分のために女の人を突き飛ばすような旦那なんか願い下げだ。女性に肘打ちして君の場所を作ってあげたよ、なんて言われたら確実に引く。ていうかさ、愛されてるあなた、旦那が何やってるか気付こうよ!あなたが広々してても、他の人は狭いんだよ!
恋人や奥さんだけでなく、いろんな人を思いやれる、そんな人が結局、幸せを運んで来てくれるんじゃないのかな。